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39 刃
次の瞬間、王の首筋にあった冷たい指が熱くなる。
王は理解した。
男は本気だと。
王は、指から炎が上がる前に
ネールの木の下に瞬間移動する。
王がいた場所は青い炎がメラメラと上がり、そして煙と共に何もなかったかのように急に消える…。
「王に刃を向けるとは…。
死罪と知ってか?ルドン。」
王は、木の下で荒い呼吸を吐きながら言う。
「……知りませんね。
それに刃ではなくただの指です…王。」
ルドンは、王を見ることもなく
スピナから、目を離さずに言った。
「こんな明るい時間に、しかも外で…とは
王も公爵夫人も勇気がおありだ…。」
スピナは、ルドンの氷のような冷たい視線を
受けながら、ゆっくりと体を起こした。
「……あなたは自分のしている事が
分かっているのか?
私と結婚したのを、忘れたのか?」
怒りと悲しみが混ざった、切ない声でルドンは
スピナに言った。
すっかりと目が覚めたスピナは、青ざめて言葉を絞り出そうとする。
「あ…ルドン様……。私、あの、王に…
吸い寄せられ……自分でも、自分が……。」
ルドンは、イライラとその言葉を聞いていたが
耐えきれなくなったのか、形のいい額に
そっと手を当てながら、目を閉じた。
そして再び目を開けスピナをゆっくりと見た。
起きたスピナの胸元ははだけ、足元のドレスも
捲れ上がっていた。
下に敷かれているのは王のマント…。
申し開きできない状況が、そこに広がっていた。
ルドンの冷ややかな視線に気がつき
スピナは、あわてて胸の前のドレスを閉じた。
それを見て、ルドンは素早く自分のマントを外すと、スピナの頭の上に放り投げた。
スピナは、上からバサリッと降ってきた
ルドンのマントに包まれ、胸が苦しくなった。
ルドンのマントからは、毎晩抱かれた時に
嗅いでいた、ルドンの匂いがしたからだ。
少し緊張感のある、王の香の匂いとは違って
安心する、微かに香る爽やかな香り…。
──スピナの大好きな匂い。
スピナはマントから顔を出し、おずおずとルドンに言った。
「…ル…ルドン様……私……。」
「──言い訳は聞かない。嫌いだ。
それよりも、その恰好…早くなんとかしろ……。」
スピナは、ルドンのマントにくるまり、自分の
はだけた衣類を、泣きながら整えた。
そんなスピナに、追い討ちをかけるようにルドンは言った。
「あなたには心底がっかりした。
…あなたのような尻軽な女に…私は用はない。
あなたの事を、学生時代から……
ずっと守ってきた自分を、自分で殴りたい。
望むように離縁してやるから…学生時代からの
憧れの王に、側女にしてもらえ……。」
自分で言っていて辛くなってきたのか
ルドンの声は段々と、小さくなっていった。
王は理解した。
男は本気だと。
王は、指から炎が上がる前に
ネールの木の下に瞬間移動する。
王がいた場所は青い炎がメラメラと上がり、そして煙と共に何もなかったかのように急に消える…。
「王に刃を向けるとは…。
死罪と知ってか?ルドン。」
王は、木の下で荒い呼吸を吐きながら言う。
「……知りませんね。
それに刃ではなくただの指です…王。」
ルドンは、王を見ることもなく
スピナから、目を離さずに言った。
「こんな明るい時間に、しかも外で…とは
王も公爵夫人も勇気がおありだ…。」
スピナは、ルドンの氷のような冷たい視線を
受けながら、ゆっくりと体を起こした。
「……あなたは自分のしている事が
分かっているのか?
私と結婚したのを、忘れたのか?」
怒りと悲しみが混ざった、切ない声でルドンは
スピナに言った。
すっかりと目が覚めたスピナは、青ざめて言葉を絞り出そうとする。
「あ…ルドン様……。私、あの、王に…
吸い寄せられ……自分でも、自分が……。」
ルドンは、イライラとその言葉を聞いていたが
耐えきれなくなったのか、形のいい額に
そっと手を当てながら、目を閉じた。
そして再び目を開けスピナをゆっくりと見た。
起きたスピナの胸元ははだけ、足元のドレスも
捲れ上がっていた。
下に敷かれているのは王のマント…。
申し開きできない状況が、そこに広がっていた。
ルドンの冷ややかな視線に気がつき
スピナは、あわてて胸の前のドレスを閉じた。
それを見て、ルドンは素早く自分のマントを外すと、スピナの頭の上に放り投げた。
スピナは、上からバサリッと降ってきた
ルドンのマントに包まれ、胸が苦しくなった。
ルドンのマントからは、毎晩抱かれた時に
嗅いでいた、ルドンの匂いがしたからだ。
少し緊張感のある、王の香の匂いとは違って
安心する、微かに香る爽やかな香り…。
──スピナの大好きな匂い。
スピナはマントから顔を出し、おずおずとルドンに言った。
「…ル…ルドン様……私……。」
「──言い訳は聞かない。嫌いだ。
それよりも、その恰好…早くなんとかしろ……。」
スピナは、ルドンのマントにくるまり、自分の
はだけた衣類を、泣きながら整えた。
そんなスピナに、追い討ちをかけるようにルドンは言った。
「あなたには心底がっかりした。
…あなたのような尻軽な女に…私は用はない。
あなたの事を、学生時代から……
ずっと守ってきた自分を、自分で殴りたい。
望むように離縁してやるから…学生時代からの
憧れの王に、側女にしてもらえ……。」
自分で言っていて辛くなってきたのか
ルドンの声は段々と、小さくなっていった。
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