王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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45 シミュレーション

今朝までは、こんな形で別れ話を切り出される
とは思っていなかった。

スピナは悲しみで、ぐしゃぐしゃになって
しまった心を抱えながらも焦っていた。

何か考えて言わなければ、ルドンは去ってしまう。

スピナは思いついた事を、慌てて話し始めた。

「以前、王との会話を立ち聞きしてしまった事があって…。
その…私との夜の生活が、つまらないって
おっしゃっていた事があったでしょう?
その事も…もっと努力しますから…!
違う書物を他にも買ってきて…。
あっ、ルドン様に選んでいただいても…。」

ルドンはその言葉を聞き、珍しく当惑の表情を見せた。

そして、自分の首を掴みながら
きまり悪そうに話し始めた。

「ああ…聞かれていたのか…。
茶会の夜…あなたの機嫌が悪かった訳がやっと
分かった。
…スピナ、嫌な思いをさせてすまなかった…。
あれは本意ではない。
王の興味を引かない為に…。
ただ、それだけの事…。
私はあなたの事をつまらなく思った事など…ない…。
それに、書物など……。」

そう言ってルドンは、切なそうに笑った。
嬉しいはずなのにスピナには
その言葉をかみしめる余裕がなかった。

ルドンの心が遠くなっていくのを、肌で感じたからだ…。

「では…では…これからは王の瞳を至近距離で
見ないように、気をつければいいのでは?!
二度とこのような事が起きないように……。
王と会う時は目を閉じて…いえ、
ルドン様の信頼を取り戻すまでは目隠しをして
暮らせばよいのではないでしょうか?
そうすればきっと……。」


それを聞くと、ルドンはハハハッと明るく笑った。

「そんな不自由な生活をしてまで
私と一緒にいる必要はない…。スピナ…。」

やっといつも通りの優しい瞳になると、そっと
スピナの頬に触れた。

「──ご提案ありがとう。
やはり、あなたといると楽しい。」

「──では私と。」

スピナはルドンの瞳の中に、自分が入る余地が
あるかを懸命に探した…。
……しかし、心を決めたような瞳には
入る隙間すら残っていないように見えた。

スピナは、打ちひしがれて再び目を伏せ
うつむいた。

もしかして…とスピナは思った。

自分がシミュレーションしていたように
ルドンもこんな日が来ると
シミュレーションしていたのでは…と。

声もなく、手元の草を握りしめながら
涙を落として泣くスピナを、王は
見ていられなかった。

「お前が、人に言われて考えを変える事がないのは私が一番知っている。
スピナとは…別れる…という事だな……?
もう、決めたのならこれ以上苦しめなくていいだろう…。
もう、泣かすな。
───術を使うぞ?」

ルドンは一瞬何かを言いかけたが、止めて静かに言った。

「……御意のままに。」


その瞬間、スピナは意識と記憶を失った。


消えていく意識の中で、自分はルドンに
愛していると伝えた事が一度でもあったか?

今、言うべき言葉はそれだったのではないだろうかと

自分に問うていた……。


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