王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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46 10センチルール

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王とルドンは、王の寝室にいた。

レジーは、王のベッドに寝かせ
スピナは、長椅子に寝かせてある。

「ルドン…本当に、スピナを捨てるのか?」

そう言われて、ルドンの顔に悲愴感が浮かぶ。

「捨て……あなたに、お譲りするだけですよ…。」

「分かっているだろう?
スピナが自分から、私に行為を仕掛けたのでは
ない事ぐらい…。」

ルドンは小さく頷く。

「……分かっています。
私は忘れてはいない。いや、忘れられない…。
10センチルールを。」

さも嫌そうにルドンは話を続ける。

「登城を許されたばかりの頃、あなたから
重要な任務があると言われた。
検証とデーターを取る係に抜擢されたと聞き
どんな高尚な仕事をさせてもらえるのかと
期待一杯で、あなたについて行ったら……。」

 ルドンは、嫌なものを振り払うかのごとく
話を続けた。

「10人ぐらいの女性が並んで待っていて
あなたの瞳との距離が、どこまで近くなったら
あなたに迫って来るのかを調べる実験だった…。
長さを測るのと、女性を引きはがす事
あなたを守る事…。
今、考えてもゾッとするような仕事を
14歳の私はさせられた。
ちょっとした、トラウマですよ…。」

王はククッと笑った。

「あの頃、女といいムードになり
見つめ合っていると女が襲いかかって来るのが
嫌で仕方がなかったから、検証した。
王位継承権は、魔力の強さのみで決まるから
王族の男が、沢山子どもを作る為に
こういう能力を持っているのかもしれず…。

第三王子あたりに聞いてみたかったが
チャンスもなく。
普通にしてても女は寄って来るから
あの至近距離でのごたごたは、毎回疲れる…。
正直いらない能力だ。」

当時を思い出し、暗い顔で
うつむいているルドンに王は続けた。

「トラウマにさせたのなら、悪かった。
検証した結果、15センチでは半分が…
10センチになると全員が引き寄せられたから
10センチルールと名付けた…。
だから、そのせいでスピナもキスしただけの事。
離縁するほどでは…。」

ルドンは静かに言った。

「10センチ以内に近づいているのが問題だし
止められるはずのあなたが止めていないのも問題だ。
───問題しかない。」


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