王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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24 甘言

その言葉を無視して、スピナはふとんを引っ張ると背を向けて横になった。

「……スピナ…思ったのだが……あなたは少し顔色が悪いな…。」

──夫が愛人を連れ帰った日に、血色のいい顔の妻がどこにいるというのだろう。

すると不意を突くように、ルドンが言った。

「……もしかして…とは思うが、あなたは妊娠しているのではないか…?」

そう言われ、スピナの胸は詰まった。
今月も、月のものが来ていたからだ。
毎月、月のものが来るたび微かな期待が散って虚しい思いをしていた。

「…いえ。子を授からず…申し訳ないです。
昨日まで月のもの…来ていましたので…それはない…です。」

それを聞くと、ルドンはスピナのふとんの上にそっと手を置いて言った。

「…ああ…そうか…。それは少し残念…だが……。」

ルドンはふとんに置いていた手を、スピナの頭に移動させ
黒茶色の髪を、優しく撫でる。

「アフェリエアにたった夜、様子がおかしかったあなたを…私は無理に
抱いてしまったから…。
妊娠していたのだとしたら…と少し焦った。
体に障ってしまったのかと…。」

──よく考えてみると、なぜ今までルドンは避妊魔法を施さなかったのだろう?

子どもができてしまったら、面倒くさい事になるのでは?

離婚の際、子どもがいた方が財産分与などでルドンに有利に働く…とか?
そんな事、あるのだろうか…?

……ああ…考えたところで法律の細かい裏技など、分からない。

暗い顔で横になったままのスピナに、ルドンは静かに言った。

「…スピナ…もしかしてあなたは…私との子どもを望んでは…いない…?」

スピナはその言葉を聞き、思わず起き上がってルドンに向き直った。

「そんな…まさか…!」

その顔を見て、ルドンはほっとしたように笑った。

「ああ…やっと目を合わせてくれた。
では…今晩、私があなたを抱くのに何も問題ないな?」

そう、熱っぽい瞳で見られスピナはすぐに目を伏せた。

「……レジー様を抱いて来たあなたとは寝たくない…。」

すると、ルドンはふっと笑いゆっくりとスピナに顔を近づける。
そして、スピナの耳元で呟く。

「レジーとは寝ていない…。
寝ていなければ、あなたを抱いてもいいのか?」

スピナは耳が、かっと熱くなるのを感じた。

この男は…。

王との会話、レジーとの逢瀬。

スピナがこの二回とも立ち聞きしたとは知らずに、簡単に寝所で嘘をつく。
そして甘言をささやく。

もう、爵位譲渡書があり、スピナに気を使わなくていいというのに。


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