王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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51 解けた魔術

スピナは走り出した。

男はまだ馬車に乗っていなかった。

「ルドン様…ルドン様…!私、思い出しました。
王と口づけして裏切ってしまってごめんなさい…!」

スピナは書物を抱きしめ、息を弾ませルドンに
走り寄る 。

「ああ…。」

男はそう言って、優しく笑った。

「解けてしまったか…。
強力にかけてあるはずだが…。
また術をかけてあげたいが、私は自分からは
できない……したくない。
ただ、あなたも辛いだろうから、好きでもない
男と過ごした悪夢のような記憶は
王にまた消してもらうといい……。」

男は悲しそうに言うと、ローブのフードを頭に
被って、馬車の扉を触らずに魔術で開ける。

「今日にでも王宮に行って王に頼め。
あの人は、女には優しいから、今度はもっと
強力なのを、すぐかけてくれる…。
では。」

そう言って、ルドンは馬車に乗り込んだ。

気がつくと、スピナも乗り込んでいた。

「───スピナ?」

「私も連れていってください。
裏切ってしまった私はお嫌でしょうけれど…。
妻でなくてもいいんです。
愛人か、友としてでも…。」

驚いてはいるようだが、顔色を変えずに冷静に
聞いているルドンの顔を見ていると
どんどんとスピナの自信がなくなっていった…。

「荷物持ちなどでもいいのですが……。」

スピナは美しい薄い水色の瞳に負けないように
自分を奮い立たせて、言葉を続ける。

「レジー様の時だって、私は結局出て行かなかった。
だから、あなたが誰と結婚しても、私はきっと
我慢できる…。」

スピナはそういうと、震える手でルドンの
ローブの裾を握りしめた。

「私にとって、あなたとの結婚生活は辛い事も
あったけれど、とても幸せだった…。
あなたの言葉を、ちゃんと本当の言葉だと
受け止めていればよかった。」

それを聞き、ルドンの瞳が驚いたように
一瞬見開く。
そして薄い水色の瞳が、透明度を増したかの
ように輝きを増す。

「公爵の地位を得たら、あなたは私を捨てると
思っていた…。
…だから言えなかった……。
それでも、言えばよかった…。」

スピナは一呼吸おいた。

ずっと怖くて言えなかった言葉。


「───愛しています。」

スピナは笑いながら、悲しそうに泣いた。


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