王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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38 庇護欲 ※

王はスピナに惹かれ、いつの間にか
スピナからも自分からも
声がもれるほどの深いキスをしていた……。

快楽に耐えきれなくなった王は、唇を離し
唐突にスピナに言った。

「……どちらにせよ、ルドンではなく私を選べ…スピナ…。」

すると、スピナの動きがピタリと止まった…。

「……ああ…しまったな。
夫の名に反応してしまったか。…スピナ……?」

何かを思い出そうとしていたスピナの瞳は
王の青い瞳を見た瞬間
再び快楽に引きずり込まれる。

思考を手放し、力を抜いて素直に体を
預け始めたスピナに、王はふっと笑った。

そして、スカートに忍び込ませていた手を
どんどんとスピナの秘所に向かって
這わせて行く…。

このままでは、人が来ても自分を止められない
…と気づいた王は、スピナに聞いた。

「──スピナ。
この牧場で働いている者は誰がいる?
ここに来るか?」

スピナは荒い息をしながら、王に答えた。

「……ヨハン…だけです。
ここ…には…誰も……来ない……。」

「…それは好都合。
では、このままここで……。」

王は自分のマントを脱ぐと、芝生の上に直接
横たわっていたスピナの背に
マントを滑り込ませる。

そして、優しくスピナのドレスを脱がせ始めた…。
…脱がせながら鮮やかなオレンジ色のドレスに
目をやる。

──この悪趣味なドレスも…自分の為に買ったのか…。

スピナに、憐憫にも似た愛しさが湧いた。
ルドンの言った事を信じ切っていたとは……。
何と愚かな女だ。

だが、愚かな女は好きだ。
庇護欲を…そそる……。


王は思った。

一回抱けば、その女の事を大体は理解できる。

一回で女を捨てたいと思った事はないが
女を知りたいという欲望は
ある程度満たされる。

一回だけ、スピナを抱いてしまおう…と……。

自分の魔力を以てすれば、ルドンに知られないように後処理をする事も、簡単だった。

スピナの記憶を消すのかは
その時の状況によって、判断をすればいい。

──いや、スピナの記憶は
すぐに消した方が、いいのかもしれない。

スピナは、頭があまり回る方ではないから
ルドンを裏切ったと知ったら
すぐに自分から、白状してしまうだろう…。


王は、ゆっくりと起き上がると
熱い吐息をもらしながら
スピナの太ももを、少し開かせる…。

そのまま太ももの内側に手を這わせ
熱く甘い蜜が溢れているであろう場所に
指を入れようとした。

そして指で確認した後には、
張りつめている自分のものも……。

けれど王は指を入れる直前になって、逡巡した。

──抱く事はできる。今、すぐに。

でも……と王は思った。

今後も、ルドンの顔をまっすぐに
見られるだろうか──。

スピナとキスをしているうちに
王には確信が生まれていた。
ルドンが、スピナを捨てる気など毛頭ない…
と思っていると。


初めて会った、13歳の頃から共にいた男である。
自分とはタイプは違ったが、馬は合った。

じぃ先生と呼ばれる、偉大な魔術の師に
教えを受ける事が出来たのは
同じ年頃の若者の中で、二人だけだった。

努力をしない王と、努力をするルドン。

じぃ先生は、二人を同じように可愛がってくれた。

一番、二人の魔力が伸びた時期だった…。
二人は、お互いを軽蔑しながら、尊敬もしていた。
その、自分への少しの尊敬をルドンから奪っていいのか……。

──いや、よくない。


「……スピナ。私が悪かった。
………目を覚ませ。」

王は唇を離すと、開いていたドレスの胸元を
簡単に戻した。

王はこれ以上、ルドンの大切なものを
壊す気にはなれなかった……。

スピナは魅力的だったが、ルドンは裏切れないと思った。

王に声をかけられても、スピナはなかなか目が覚めない。

スピナは、まだ王にキスしてほしくて
横になったまま、王の服を引っ張った。

王はため息をつくと、ひとまずスピナを
正気に戻そうと思った。

スピナに引っ張られるまま、
スピナに顔を近づけるとおでこにキスをした。

そして王は、そのまま覚醒の術をかける……。


──次の瞬間、ひやり……とした冷たい指の感触が
王の首筋にあった。

…いつも、この男の気配に気がつくのが
遅くなってしまう……。

王は苦々しく思った。


「──その女が、私の妻と知っての蛮行か?」

その声には、王を殺せそうなほどの怒りがあった。

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