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10.追憶‐sideアレクシス‐(3)
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それからも、父親からの監視という名の干渉は続いていて、いくら婚約者だからと言って、彼女に手紙を書いて送ることも、ましてや贈り物を送るなんて以ての外だった。
一切の気の緩みを許さない窮屈な環境には慣れていたけれど、アレクシスは彼女に向ける想いが募るばかりで、もどかしく思っていた。
唯一の二人きりで過ごせる定期的な交流が始まって、二回目の席でのことだった。
初日同様の形で座ったアレクシスは、この日も寡黙な男として存在していた。
前回、帰ってから書物を漁っていると見つけた恋愛小説に目を通してみたけれど、ヒロインの女性に厳しい言葉をかけるばかりの男と、やたらと甘い言葉をかける男しか登場しなくて、アレクシスの求めるものは見つからず、参考にもならなかった。
節度ある適切な距離感とは如何なるものであるのか、測ることが難しくて思い悩んでいる。
本当は、そんなもの気にしないで思うままに言葉を交わしたい。
けどそれも、彼女と婚姻するまでの我慢だと、無言の交流を続けていた。
そんなときに、静かな空気の中でスルスルと布を擦る音のようなものが聞こえてきたので、ミラの方に視線を向けると、なんと彼女は刺繍を始めていた。
「……」
アレクシスが呆気に取られて、つい、ミラをじっと見つめていることに彼女は気付かず手元に視線を落としていた。
この王命で決められた交流の席は一時間と定められているから、ただ無言のままでいるのもつまらないだろうし、やりたいことをして過ごしてもらっても一向に構わなかった。
だけどもう、我慢の限界だった。
自由奔放な彼女は、ここでも健在だった。
今までは遠くからその様子を眺めていたそれを、まさかこんな近くで見ることになるとは思ってもいなかった。
父親の監視もあるからと気を張っていたアレクシスの緊張の糸を簡単に切ってしまう、そんな彼女のせいで表情が緩んでしまう。
アレクシスは、口から笑いが零れそうになると口元を抑えて隠して、彼女から顔を背けて静かに笑みを浮かべた。
それからも、一方は寡黙で、一方は気ままに過ごす――そんな定期的な交流を重ねていると、ミラが薬学の本をよく読んでいることに気が付いた。
何やら熱心に本と睨み合いをしていると思ったら、勉学に勤しんでいる彼女を見て感心した。
(確か、父方の叔父が医者をやっているんだったな……)
その影響であるのだろうが、そこまで薬学に熱心な彼女の様子を横目に、アレクシスは考えた。
公爵夫人になると、不自由な生活を強いることになる。次期公爵の妻となるのだから、当たり前のことであろうが、アレクシスはミラに窮屈な思いをして欲しくなかった。
なるべく彼女の負担にならないように自分が頑張るつもりだけれど、全てから守れるわけでもない。
その代わりというわけではないけれど、彼女には今だけでも自由に過ごして欲しかった。
自由で、気ままで、無邪気な彼女のことが好きだから。遠くからでもいいから、そんな彼女を見ていたかった。
「アカデミー入学後は、学業に専念したいと思っているので、彼女との交流を停止させて欲しいのです」
アレクシスは、父親に頼んだ。婚約のことも大事だけれど、自分の将来のことでもあるし、家門を背負う身として婚姻前にしっかりと己の地盤を固めたいと意思を伝えると、父親は頷いて国王に掛け合ってくれた。
そして、それを認められると彼女との定期的な交流は無くなる運びとなった。
これで彼女は、好きなことに集中できるだろう。
婚約者にできることがこんなことしかなくて、アレクシスは申し訳ないと思いながらも、どうか彼女の笑みが絶えないように、穏やかに過ごして欲しいと願った。
最後の二人きりで過ごす日、相変わらず無言のままの時間だけが過ぎた。
その日も、ミラは読書に勤しんでいた。アレクシスは、そんな彼女を横目に胸ポケットから時計を取り出して時間を確認した。
婚約してから数年経っても、気の利いた言葉一つも掛けられずに、ただ黙って座っているだけだった。
それでも、気ままに過ごす彼女との時間はアレクシスにとって唯一、心が安らぐ貴重な時間だった。
別れの時間が刻一刻と近づくと、名残惜しい気持ちが湧いて胸が切なくなる。この気持ちさえ彼女に伝えられない虚しさに、ため息が零れそうになると、時計の針が終わりの時間を告げた。
ミラに顔を向けると、彼女は読んでいた本を膝の上に置いて姿勢を正して、アレクシスがそちらを向くのを待っていたようだった。
目が合うと、ミラは静かに微笑んだ。
何回見ても慣れない彼女の笑みに、心を奪われる。気恥ずかしさを隠そうと時計を握った手に力を込めると、ミラの姿を目に焼き付けてからアレクシスは席を立った。
婚約者であるミラとは、外で自由に会うことはなかったけれど、国王の手前、建国祭や王室主催のパーティーには二人並んで出席した。
パートナーのエスコートのため、将来を約束された二人であるからと、当然のようにアレクシスは腕を差し出して、ミラはそこに手を添える。
二人きりのお茶の席とは違って、多くの人の目があるから隠れて表情を緩めることができない状況の中で、この彼女の手が触れる行為はアレクシスにとって最大の試練だった。
彼女の顔を直視することさえ困難だというのに、手を添える程近くにいるミラと、その彼女の小さい手がアレクシスの腕に触れると、頭の中は忙しいことになっていた。
アレクシスの手で握ったら壊れてしまいそうな華奢な手は、滑らかな肌で細くしなやかな指で、そこに在るだけでアレクシスを魅了した。
心臓が早鐘を打つ音が太鼓のように鳴り響いて、腹の底から沸き上がる熱が頭の上まで上がってくると思考が「可愛い」の連発を繰り出す。
それと、もっと強く掴んでくれてもいいのに、ミラは軽く触れる程度に手を添えるだけなので、くすぐったくもあった。
しかしそれも、小鳥のようで可愛い、と脳内で変換されるといよいよ我慢の限界が近かった。
アレクシスは、この過酷な試練を乗り切るために、眉間に力を入れることで耐えることを覚えた。
手に力を入れてしまうと、腕が震えて彼女にそれが伝わってしまうし、肩を強張らせれば緊張が周りの人にも伝わってしまう。
眉間の皺を寄せないように気を付けながら力を入れると、目を細める形になるけれど、元々笑顔を振り撒かないのでこの方法にした。
国王に挨拶を済ませるまでの間、耐えることに必死で、息もまともに出来ていなかった。
必要な場面だけ、婚約者の隣に立っていればいいと父親から言われていたので、アレクシスは必要以上に彼女に接しないように努めた。
挨拶を済ませて国王の視界から消えると、静かに彼女から離れる。
ミラも親から言われているのか、理解していると言うように、添えていた手を引っ込めるといつものように微笑んだ。
その姿がまた可愛いと思いながら、無言の別れをしてアレクシスは一人になれる場所まで逃げ込むように行って、大きくため息を吐いた。
ため息と共に、体中の緊張が解れてしゃがみ込んだ。
普段でもこれだけ大変な思いをしているというのに、あろうことかミラは、とんでもないドレスに身を包んで現れた。
アカデミー入学前に、王室主催のパーティーに出席したときのことだった。
会場の入り口でミラを待っていると、馬車から降りる紅茶色の髪の彼女の姿を見つけて、目を疑った。
黄色がメインのドレスに黒と金のラメ糸で刺繍されて、胸元にはワインレッドの花々が添えられている。ミラが近くまで来ると、イヤリングとネックレスはルビーであることも確認できた。
パートナーを思い出させる配色や飾りでドレスを仕立てて、それに身を包むことはよくあることだけれど、この二人の場合はそんなことは起こり得ないことだと思っていた。だから、想像もしていなかったし、今も夢でも見ているのではないかと疑った。
まさか、信じられないと呆然と近づいてくるミラに見惚れていると、アレクシスの姿を見つけた彼女が、微笑んだ。
抱き締めたかった。この喜びの気持ちを、全身でぶつけたかった。
そんな衝動と一緒に、一人だけそのように着飾ってずるいと思った。
どうせなら、二人一緒に互いの色で飾りたかった。
そんな妬みにも似た感情が湧いたからか、その日は最後までミラの隣にいることに耐えることが出来た。
今日は、元々そのつもりでいたのもあった。
アレクシスは、家業であるホテル事業を任されることに決まって、父親から学業も後継者教育もあるから多忙になると、今後はパーティーでも婚約者の相手をする必要はないと言われていた。
この先、婚姻の日まで彼女の隣に立つこともない。
近くに居られるのも、今日が最後だった。
一切の気の緩みを許さない窮屈な環境には慣れていたけれど、アレクシスは彼女に向ける想いが募るばかりで、もどかしく思っていた。
唯一の二人きりで過ごせる定期的な交流が始まって、二回目の席でのことだった。
初日同様の形で座ったアレクシスは、この日も寡黙な男として存在していた。
前回、帰ってから書物を漁っていると見つけた恋愛小説に目を通してみたけれど、ヒロインの女性に厳しい言葉をかけるばかりの男と、やたらと甘い言葉をかける男しか登場しなくて、アレクシスの求めるものは見つからず、参考にもならなかった。
節度ある適切な距離感とは如何なるものであるのか、測ることが難しくて思い悩んでいる。
本当は、そんなもの気にしないで思うままに言葉を交わしたい。
けどそれも、彼女と婚姻するまでの我慢だと、無言の交流を続けていた。
そんなときに、静かな空気の中でスルスルと布を擦る音のようなものが聞こえてきたので、ミラの方に視線を向けると、なんと彼女は刺繍を始めていた。
「……」
アレクシスが呆気に取られて、つい、ミラをじっと見つめていることに彼女は気付かず手元に視線を落としていた。
この王命で決められた交流の席は一時間と定められているから、ただ無言のままでいるのもつまらないだろうし、やりたいことをして過ごしてもらっても一向に構わなかった。
だけどもう、我慢の限界だった。
自由奔放な彼女は、ここでも健在だった。
今までは遠くからその様子を眺めていたそれを、まさかこんな近くで見ることになるとは思ってもいなかった。
父親の監視もあるからと気を張っていたアレクシスの緊張の糸を簡単に切ってしまう、そんな彼女のせいで表情が緩んでしまう。
アレクシスは、口から笑いが零れそうになると口元を抑えて隠して、彼女から顔を背けて静かに笑みを浮かべた。
それからも、一方は寡黙で、一方は気ままに過ごす――そんな定期的な交流を重ねていると、ミラが薬学の本をよく読んでいることに気が付いた。
何やら熱心に本と睨み合いをしていると思ったら、勉学に勤しんでいる彼女を見て感心した。
(確か、父方の叔父が医者をやっているんだったな……)
その影響であるのだろうが、そこまで薬学に熱心な彼女の様子を横目に、アレクシスは考えた。
公爵夫人になると、不自由な生活を強いることになる。次期公爵の妻となるのだから、当たり前のことであろうが、アレクシスはミラに窮屈な思いをして欲しくなかった。
なるべく彼女の負担にならないように自分が頑張るつもりだけれど、全てから守れるわけでもない。
その代わりというわけではないけれど、彼女には今だけでも自由に過ごして欲しかった。
自由で、気ままで、無邪気な彼女のことが好きだから。遠くからでもいいから、そんな彼女を見ていたかった。
「アカデミー入学後は、学業に専念したいと思っているので、彼女との交流を停止させて欲しいのです」
アレクシスは、父親に頼んだ。婚約のことも大事だけれど、自分の将来のことでもあるし、家門を背負う身として婚姻前にしっかりと己の地盤を固めたいと意思を伝えると、父親は頷いて国王に掛け合ってくれた。
そして、それを認められると彼女との定期的な交流は無くなる運びとなった。
これで彼女は、好きなことに集中できるだろう。
婚約者にできることがこんなことしかなくて、アレクシスは申し訳ないと思いながらも、どうか彼女の笑みが絶えないように、穏やかに過ごして欲しいと願った。
最後の二人きりで過ごす日、相変わらず無言のままの時間だけが過ぎた。
その日も、ミラは読書に勤しんでいた。アレクシスは、そんな彼女を横目に胸ポケットから時計を取り出して時間を確認した。
婚約してから数年経っても、気の利いた言葉一つも掛けられずに、ただ黙って座っているだけだった。
それでも、気ままに過ごす彼女との時間はアレクシスにとって唯一、心が安らぐ貴重な時間だった。
別れの時間が刻一刻と近づくと、名残惜しい気持ちが湧いて胸が切なくなる。この気持ちさえ彼女に伝えられない虚しさに、ため息が零れそうになると、時計の針が終わりの時間を告げた。
ミラに顔を向けると、彼女は読んでいた本を膝の上に置いて姿勢を正して、アレクシスがそちらを向くのを待っていたようだった。
目が合うと、ミラは静かに微笑んだ。
何回見ても慣れない彼女の笑みに、心を奪われる。気恥ずかしさを隠そうと時計を握った手に力を込めると、ミラの姿を目に焼き付けてからアレクシスは席を立った。
婚約者であるミラとは、外で自由に会うことはなかったけれど、国王の手前、建国祭や王室主催のパーティーには二人並んで出席した。
パートナーのエスコートのため、将来を約束された二人であるからと、当然のようにアレクシスは腕を差し出して、ミラはそこに手を添える。
二人きりのお茶の席とは違って、多くの人の目があるから隠れて表情を緩めることができない状況の中で、この彼女の手が触れる行為はアレクシスにとって最大の試練だった。
彼女の顔を直視することさえ困難だというのに、手を添える程近くにいるミラと、その彼女の小さい手がアレクシスの腕に触れると、頭の中は忙しいことになっていた。
アレクシスの手で握ったら壊れてしまいそうな華奢な手は、滑らかな肌で細くしなやかな指で、そこに在るだけでアレクシスを魅了した。
心臓が早鐘を打つ音が太鼓のように鳴り響いて、腹の底から沸き上がる熱が頭の上まで上がってくると思考が「可愛い」の連発を繰り出す。
それと、もっと強く掴んでくれてもいいのに、ミラは軽く触れる程度に手を添えるだけなので、くすぐったくもあった。
しかしそれも、小鳥のようで可愛い、と脳内で変換されるといよいよ我慢の限界が近かった。
アレクシスは、この過酷な試練を乗り切るために、眉間に力を入れることで耐えることを覚えた。
手に力を入れてしまうと、腕が震えて彼女にそれが伝わってしまうし、肩を強張らせれば緊張が周りの人にも伝わってしまう。
眉間の皺を寄せないように気を付けながら力を入れると、目を細める形になるけれど、元々笑顔を振り撒かないのでこの方法にした。
国王に挨拶を済ませるまでの間、耐えることに必死で、息もまともに出来ていなかった。
必要な場面だけ、婚約者の隣に立っていればいいと父親から言われていたので、アレクシスは必要以上に彼女に接しないように努めた。
挨拶を済ませて国王の視界から消えると、静かに彼女から離れる。
ミラも親から言われているのか、理解していると言うように、添えていた手を引っ込めるといつものように微笑んだ。
その姿がまた可愛いと思いながら、無言の別れをしてアレクシスは一人になれる場所まで逃げ込むように行って、大きくため息を吐いた。
ため息と共に、体中の緊張が解れてしゃがみ込んだ。
普段でもこれだけ大変な思いをしているというのに、あろうことかミラは、とんでもないドレスに身を包んで現れた。
アカデミー入学前に、王室主催のパーティーに出席したときのことだった。
会場の入り口でミラを待っていると、馬車から降りる紅茶色の髪の彼女の姿を見つけて、目を疑った。
黄色がメインのドレスに黒と金のラメ糸で刺繍されて、胸元にはワインレッドの花々が添えられている。ミラが近くまで来ると、イヤリングとネックレスはルビーであることも確認できた。
パートナーを思い出させる配色や飾りでドレスを仕立てて、それに身を包むことはよくあることだけれど、この二人の場合はそんなことは起こり得ないことだと思っていた。だから、想像もしていなかったし、今も夢でも見ているのではないかと疑った。
まさか、信じられないと呆然と近づいてくるミラに見惚れていると、アレクシスの姿を見つけた彼女が、微笑んだ。
抱き締めたかった。この喜びの気持ちを、全身でぶつけたかった。
そんな衝動と一緒に、一人だけそのように着飾ってずるいと思った。
どうせなら、二人一緒に互いの色で飾りたかった。
そんな妬みにも似た感情が湧いたからか、その日は最後までミラの隣にいることに耐えることが出来た。
今日は、元々そのつもりでいたのもあった。
アレクシスは、家業であるホテル事業を任されることに決まって、父親から学業も後継者教育もあるから多忙になると、今後はパーティーでも婚約者の相手をする必要はないと言われていた。
この先、婚姻の日まで彼女の隣に立つこともない。
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