王都から追放されて、貴族学院の落ちこぼれ美少女たちを教育することになりました。

スタジオ.T

文字の大きさ
30 / 56

30時限目 敗戦

しおりを挟む

 対抗戦まで一週間を切っていた。そこで一定の成績を収めなければ退学は近い。後がない現実とは裏腹に、特訓の成果はかんばしくなかった。

「……全敗か」

 担当教諭と交渉して、ダンテは「ボーン」クラスとの合同練習を取り付けてもらった。できるだけ、本番に近い想定で戦闘を開始した。

 ルールは例年と変わらず全員が入り混じってのバトルロワイアル方式だ。校舎の裏に広がる巨大なスタジアムを使って行われる。

 頭の上にバルーンをつけて、それを割ったら一ポイント。割られてしまったら二ポイントマイナス。一分後にバルーンは自動的に復活して、再び戦闘に参加できる。二
十分の模擬戦闘の結果は散々だった。

 リリア・・・マイナス八ポイント。
 マキネス・・・マイナス三ポイント。
 ミミ・・・マイナス四ポイント。
 シオン・・・マイナス五ポイント。

 結果表を見ながら、ダンテは「うーん」と唸った。特訓の成果が出ていないわけではない。想定していたよりも、このバトルロワイアル方式が厄介やっかいの種となっていた。

 夕方まで数ラウンドかを重ねても、結果はそう変わらなかった。このままでは合格ラインのプラスポイントで終えるのはほぼ不可能だった。

 宿直室に帰って、ダンテは天井とにらめっこしていた。

「どうっすかなー……」

「スタート開始の合図と同時に集中攻撃ですか。これは今のあの子達に対処できるはずがないですね」

 フジバナも結果を聞いて眉間にしわを寄せた。

「確かにポイントを稼ぐ戦法としては定石じょうせきです。弱いものを集中的に狙う。同じ一ポイントなら、強い人間より弱い人間を攻撃したほうが、効率的に稼ぐことができます」

「まー……分かっていたことではあるんだよなー」

 まず開始直後、リリアが包囲されてバルーンを割られた。その時点でトラウマが再発し戦意喪失した彼女は、結局一ポイントも稼ぐことができなかった。続いて、マキネスが防御魔導を発生させようとして、触手とともに玉砕ぎょくさい。マイナスポイントで終わった。

 運動能力が人一倍あるミミは、かえって目立ってしまい動きを掴まれてしまったのが良くなかった。包囲されてバルーンを割られてしまい、結果はかんばしくなかった。

 本番はこれに「パラディン」「ルーク」の二クラスが追加される。
 さらに苛烈かれつな戦闘が予想される。彼女たちが「ナッツ」クラスである以上、集中的に狙われるのは間違いない。

「アイリッシュ卿に手を回してもらいましょうか。対抗戦の結果で退学というのはあまりに横暴すぎます。あるいは主任教師のエーリヒ殿などに交渉すれば、猶予ゆうよはあると思います」

「……いや、それじゃあダメだ」

 ダンテは首を横に振った。確かにアイリッシュ卿なら、校長に交渉して退学基準を変更することはできるかもしれない。バーンズ卿との対立覚悟で動くこともするだろう。

 しかしそれをやってしまったら、今までの授業の意味がなくなってしまう。必死に訓練に励んだ一週間が何の意味も持たなくなってしまう。

「ここは逃げる場所じゃない。俺も、あいつらも何も得られていない。まだ一週間あるんだ。どうにかしてみせる。傷跡を傷跡のままで終わらせる方が最悪だ。きちんと次につなげるのが先達せんだつとしての役目だ」

「袋叩きに合っても、勝てますか」

「やりようなら、幾らでもある」

 相手の戦法の想像が付いているなら、対策は立てられる。劣勢の状態でどう兵士たちを動かすか。作戦判断はトップであるダンテに委ねられている。

「戦場と変わらない。少数部隊を動かすのは得意だ。任せておけ」

「確かに……そうですね。隊長の作戦は完璧でしたから」

 部屋の隅に積まれた幾つもの戦術書を見て、フジバナは懐かしそうに微笑んだ。ダンテが持ち込んだそれらには、大量の書き込みとメモ用紙が挟んであった。いかなる劣勢であれ、ダンテの部隊は戦果を得て帰還した。

「……ですが、今回の場合は、動かす兵士は学生です。精神面での懸念があります。今日の結果で少なからず落ち込んでいますし、それ以前の問題もあります」

「分かってる。シオンだろ。さすがにあれは厳しいな」

 開始前からシオンはずっと上の空だった。本来であれば、このクラスの中で一番落ち着いていて、プラスポイントで終わらせる実力は持っているのだが、心が付いていっていない。

 その理由は考えなくても、想像がついた。

「授業の間もずっと、イムドレッドのことを心配しているようでした。退学届を受け取ったことは伝えたのですか」

「言ってないが……勘付いてはいるだろ」

 丸いテーブルの上にはイムドレッドから受け取った退学届があった。まだフジバナ以外の人間には見せておらず、当然学校側にも提出していない。

「隊長はどのようにお考えですか。本当にイムドレッド・ブラッドを連れ戻すおつもりですか」

「どうだかな。俺が次に動くときは、おそらくロス・エスコバルを相手取る時だ。リーダーのパブロフはずいぶんとブラッドの血にご執心しっしんのようだったからな。ある程度強引に行かないと、交渉は不可能だと思う」

「その時は、お手伝いいたします」

 フジバナは自分の胸に手を置き、「おとりくらいにはなりますので」と言った。ダンテは首を横に振って、苦笑した。

「やめとけやめとけ。イムドレッドは囚われのお姫様じゃないんだ。あいつは自分の選択で、エスコバルに入っている。無理やりさらってきたところで、どうにもならない」

「では、隊長は一体何をお考えなのですか」

 フジバナは興味深げに身を乗り出して、ダンテの言葉を待った。悩ましげにメモ帳を置いた後でダンテは言った。

「対価だ」

「対価?」

「あいつが言ったんだ。確かな対価があるから協力している。その対価を俺たちが代わりに提示できれば、納得するかもしれない」

「それは……いったいなんでしょうか。まさか麻薬……」

「ブラッドの血に麻薬が効果があるとは思えない。だから、もっと別のものだろうな。例えば、金とか」

「いえそれこそ、ブラッド家には潤沢じゅんたくな資金があると記憶しています。彼らの仕事は一級品です。その理由だとは思えないのですが」

「そうだな。ブラッド家には金はある」

 ダンテはあごに手を当てて、先日のイムドレッドとの会話を思い出していた。どうして彼がエスコバルに入ったのか。どうして彼がそもそもアカデミアに入学したのか。

『悪くはなかった。それなりに楽しかったよ』

 あの言葉は嘘じゃなかった。彼は彼なりにこの場所を好いていた。イムドレッドは望んでこの学園にいた。同年代の子どもと同じことを望んでいた。

 考えても分からない。ただ知っている奴は分かる。

「シオンのところに行ってみるか。あいつ自身のメンタル面も心配だ」

 ダンテとフジバナは宿直室を出て、シオンの部屋をノックした。しかし不審なことに全く物音がしない。ドアを開けてみると、部屋の中には誰もおらずストーブも消えていて、シンと静まり返っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...