魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第73話 女神来襲

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『さよなら。せめてあなたが幸福であることを祈ります』

 レイナは自ら去って行った。おそらくは『異端の王』となった自らの弟ともに、俺を気絶させて何処かに行ってしまった。

『暴かれた嘘は、次の嘘で塗り重ねければなりません。今度は、もっと、強く、固い意志で』

 この発言が意味するところは、おそらく記憶のピースのことを言っているだろう。俺の記憶喪失はピースを集めることで徐々に解呪かいじゅしてきている。

 それがレイナの意図するものではないことは間違いない。
 彼女は俺が記憶のピースを集めることを避けようとしていた。彼女がアームカバーをして俺の手に触れるのを嫌がっていたことから、分かる通りだ。

「……そうなると答えは1つだ」

 レイナが俺の記憶を改ざんした。
 サティが言った通りの推測で間違いない。あの女神が執拗しつようにレイナを尋問したがっていたのは、正しい判断だったと言って良いだろう。

 ならば、その動機は……。

『それで、お姉ちゃんに頼みがあるんだけど』
 
 1番引っかかったのはこのセリフだった。
 俺とレイナが北の果てにたどり着いた時のこと。あれが実際に交わされた会話ならば、彼女と弟との結託けったくはそこから始まっていたと考えられる。

「レイナがそのお願いを聞いたかどうか……か。『異端の王』と何か取引をしたということは、それが原因なのか……」

 いったいどんな頼みごとだったのだろうか。肝心な記憶のピースが取り出せていない
 推測でしかないが、おそらくレイナは彼の頼みごとに「イエス」と言った。

 それが問題の根源。
 世界全体の異変や、俺の記憶の改ざんを起こした動機である可能性が高い。彼女にとって何よりも大事であるがあったんだ。

「分かることとしたらそれくらいか。しかし……参ったな……」

 問題は全く手がかりが無いということ。
 レイナの行き先は分からないし、俺以外に世界の異変を感じ取っている人間はいない。
 
 窓から見える光景はいたって平和そのものだった。
 祭りから一夜あけて、カルカットの人々は片付けに追われていた。眠そうな顔で出店を片付けて、ゴミをほうきで掃いている。

 何か目に見える異変が起きているわけではない。
 何時もよりゆったりとした朝の時間が流れていた。世界は遅く起きた休日のように、緩慢かんまんな目覚めの中にあった。

「少し休むか」

 頭を使いすぎた。
 水を飲みたいと思ったが、周りには何もなかった。立ち上がろうとするが、身体が痛くて手を動かすのがやっとだった。

 どうにもならないので、シュワラに言われた通り、ベッドに備え付けられたボタンを押す。ビーと言うブザー音のあとで、ぱたぱたと廊下の方から誰かが駆けてきた。

「はーい、お呼びですかー」

 コンコンと軽くドアがノックされる。「どうぞ」と声をかけると白衣を着た女が入ってきた。

「……………は?」

 ナース服を来ているが、看護師じゃない。
 ボサボサの青い髪を肩まで伸ばしている女に、言葉も出ずに唖然あぜんとする。

「やあ元気だったかい?」

「サティ、なのか……?」

「そうだよ。ナース服を着たサティだよ」

 サティだった。
 ふふふと笑った彼女は、ベッドに腰掛けると、寝ている俺を見下ろした。

「イザーブに行ったんじゃなかったのか?」

「もう帰ってきたよ。収穫するものは出来た。もう十分だ」

「何か分かったか?」

「……それより、家のメイドに一本取られたんだったんだって? 困るなぁ、予想通りだったとはいえ、救世の英雄がこんなことでダウンしていんじゃダメだよ」

「予想通り……もしかして分かっていたのか」

「もちろん。あの娘が嘘をついていることくらい、見れば分かるじゃないか。言動も支離滅裂しりめつれつだし、筋が通っていない。彼女は最初から君に嘘をついていたんだ」

 やれやれと肩をすくめて、サティは言った。

「君が嘘に気がつくより、彼女が嘘がバレそうになっていることに気がつく方が早かった。だからレイナは逃げたんだ」

「それは『異端の王』のことか。そうだ。レイナがどこかにかくまっていて、俺の目の前に現れた。『異端の王』は生きていたんだ」

「『異端の王』が現れたのか?」

「しかも人間の時の姿で」

「……あー、そういうことか」

 最初は驚いたような顔をしていたサティだったが、それを聞くと納得したようにうなずいた。

「いや、君は『異端の王』を殺した。それは心配しなくて良い」

「殺した? じゃあ、あの時現れた『異端の王』は……?」

「たぶん、彼は君を殺さないと言ったんじゃないか」

「そうだが……」

「じゃあ問題ない。殺さないと言っているなら、もう彼のことは考えなくて良い」

「そうは言っても相手は『異端の王』だ……」

 何もしないという選択は理解できない。いったいサティは何を考えているのだろうか。

「今考えるべきは、君のメイドがどこに行ったかだろ」

「それは、そうだが……」
 
 考えようとすればするほど、頭がこんがらがる。出口の無い迷宮の壁に阻まれたように、答えが出てこない。

 必死に悩んでいると、俺の上に座ったサティがひたいをコツンと小突いてきた。

「ほら、あんまり脳を使うんじゃない。これから君は更なる記憶のピースを探しにいかなきゃいけない。そのためにはひとまずの休養が必要だ」

「そんなこと言ったって……、レイナが……」

「彼女なら大丈夫。むしろ今の君が行ったところで何も出来ない。そういうわけで、君をこのベッドに拘束しておくために看病三銃士を連れてきたよ」
 
「看病三銃士?」

 サティがパチンと合図をすると、ドアを開けてナース服を着たナツが入ってきた。
 
「ナツ……どうして……?」

「どうしてじゃないよー! アンクさんが倒れたって聞いて心配したんだよー! もう、無理しちゃダメだよー」

「そうか……心配かけたな」

「もー、本当に無事で良かったよ」

 純白のナース服はご丁寧に、膝上ひざうえくらいの丈で、すらりと伸びた脚が良く見える。

「いや……なんでナース服を来ているんだ?」

「サティちゃんに頼まれてね。看病してほしいって。『ナース服姿の女の子と看病ごっこをしながら密着していないと死んじゃう病気』だって聞いたから」

「は?」

「そういうこと」

 サティはすでに仕事を終えたという感じで、病室から出て行こうとした。

「ちょっと待てサティ。いったいこれはどういうことだ。何で1人だけ帰ろうとしているんだ。ていうか、いつのまに俺の腕をしばったんだ?」

「そういうプレイだよ」

「…………な!」

「ちなみに後、2人控えているから、全部終わったらくるから」
 
 ぴしゃんとドアを閉めて、サティは去って行った。

 言葉が出ない。
 シンと静まり返った病室では、ナツがもじもじと手元の聴診器をいじっていた。

「……じゃあ始めるね」

 恥ずかしそうに言ったナツは、ペタンと俺の身体の上にまたがった。
 

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