魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第75話 ナース服姿の女の子と看病ごっこをしながら密着していないと・・・

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 ことが済んだ後で、ようやく話せるほどに回復したナツは、俺の話を聞くと驚愕きょうがくの叫び声をあげた。

「嘘!? 嘘だったの!? その『ナース服姿の女の子と看病ごっこをしながら密着していないと死んじゃう病気』っていうのは!?」

「むしろ本気で信じていたのか!?」

「だってサティちゃんが言っていたんだよ。祭りの時にはしゃぎすぎて、ナースの女の子をナンパしようと思ったら断れたあげくに転んで、頭の打ち所が悪くて、看病されなきゃ禁断症状のすえに死んじゃう病気になったって」

「ねぇよ、そんなこと!」

「え? ナンパも嘘?」

「全部、嘘だ。それにどっちかって言うとメイド服の方が好きだ」

 キョトンとしたナツは「あー」口を開けて納得して、ぽんと手を打った。

「それもそうだね。よく考えたらおかしな話だ」

「おまえなぁ……ちょっとは人を疑うってことを覚えろよ。いつか高いツボとか売りつけられるぞ」

「高いツボ? 家にあるよ。行商人のおじさんにオススメされて、持っていると幸せになるんだって。3個セットでお得だったの。銀貨30枚だったよ」

「…………」

 もう手遅れだった。
 全くりずに「効果があったもん。最近、道端で銅貨を拾ったよ」と言ったナツは誇らしげな顔をした。

「あのなぁ、銅貨1枚拾ったところで、銀貨30枚集めるまでに何日かかるんだよ」

「えーと……銅貨100枚で銀貨1枚だから……」

 詐欺にひっかかったこと気がついたナツは絶望した表情になった。

だまされた……」

「頼むから、人を疑うってことを覚えろよ」

「そうだねぇ。ってことは死んじゃうっていうのは嘘かぁ……良かったぁ」

 ホッと安堵あんどのため息をついたナツは、すっと俺の近くに寄ってきた。
 ベッド上で隣合って座ったナツは、俺の身体をじろじろと見ると、不思議そうに首を傾げた。

「それで、どうしたの? こんな病院で寝込んで。魔物に襲われて、怪我をしているって訳ではなさそうだけど」

「あぁ……いろいろあって。実はレイナがいなくなったんだ」

「レイナちゃんが? なに、家出?」

「家出と言えば家出か。レイナは自ら出て行ったんだよ」

 ナツにカルカット祭で起きたことを話す。
 レイナが祭りの最中に自分の弟と一緒に去っていたことを話すと、ナツは悲しそうに目を伏せた。

「そっか、そんなことが……」

「この髪留めも置いていかれちゃってさ。どこに行ったか聞いていたりはしないか?」

「どこに行ったかは分からないけれど、レイナさん最近、何か悩んでいる風だったよ。挨拶してもぼーっとしていて、うわの空っていう感じだった」

「それって、いつからだ?」

「ここ1ヶ月くらいだと思うよ」

 レイナと俺がここに引っ越してきたのは約1年ほど前。
 それまでは普通に忙しく買い物したり、ナツとも良く話していたレイナだったが、ある時から何かを思いつめている様になったらしい。

「何かに悩んでいたみたい。何かっていうのは分からない、ごめん」

 ただ端から見ても分かるくらいレイナの様子はおかしかった。腕を覆うアームカバーをかけたり、俺にそっけない態度を取り始めたのもちょうど同時期くらいだ。

「様子がおかしかった……か」 

「……ねぇ、その記憶のピースのことを話してよ。アンクはどんな記憶を見たの?」

 ナツは興味ありと言った感じで、俺を見上げた。

「アンクが記憶喪失だったなんて信じられない。だって、いつもと変わらなかったもん。その記憶のピースには何があったの」

「いろいろあるんだ。『異端の王』への道中だったり、昔の話だったり……あとは、レイナの子どもの頃とかかな。新しい記憶に触れれば触れるたびに、明瞭に当時のことが思い出せるようになるんだ」

「じゃあ、アンクは今までのことを全部忘れていたの?」

「そういうことだ。もっとも忘れていたことを忘れていたから、何も気にすることは無かった。『異端の王』を倒したことだって、倒したという結果は覚えていても、その道中に関しては思い出そうとすらしていなかったんだ」

「つまり過程を忘れていた……ね。だから、あえて自分の記憶に疑いを持たなかったんだね。だって結果は覚えているんだから、事実自体は変わっていないんだ」

「そうなるな」

 ナツの言う通り、俺を襲った記憶喪失はかなり複雑にかけられている。事実をすっぱり忘れ去るのではなく、ある程度残している。まるで違和感を感じさせないように、何者かが意図していたみたいだ。

 そこにはきっと何かの意味があるはずだ。

「ナツはどう思う? レイナはどうして嘘をついていたのか」

「そうだね……」

 ナツは俺の質問に自分の髪をくるくるといじりながら、「うーん」と悩んだように天井に顔を向けた。何度か首をかしげたあと、ナツは口を開いた。
 
「……当たり前のことだけれど、思い出しちゃいけないことがあるから隠しているんだと思う。アンクが知ってはいけなかった昔の記憶があったんだよ」

「昔の記憶……」

「レイナちゃんの弟が『異端の王』だったってこととか、話してくれたイザーブの記憶。弟さんとの記憶を知られたくなくて、レイナちゃんは嘘をついたんだと私は思うよ」

「孤児として暮らしていた時の記憶か」

「うん、普通だったらあまり知られたくないのかな」

 レイナの少女時代は陰惨いんさんさに満ちていた。残飯をあさり、盗みをして暮らしてきた日々は誰にも知られたくないと考えるのは当然のことだ。

 さらに『異端の王』が自分の弟だと知られたくないと考えるのも当然だ。
 
「他の記憶もそうなのか……?」

 集めた記憶のピースを思い返してみる。全部が全部、そうであったかというとそうでもないように思える。あれには楽しかった頃の記憶も少なからず残っていた。

「ひょっとしたら、まだ足りないのか。記憶のピースはまだ存在していて、それも見なければ、何を知られたくなかったか、分からない……」

「じゃあ、記憶のピースがまだあるってこと?」

「そう思う」

 特に気になっていることがある。
 あの記憶は途中で終わってしまっていたが、レイナの孤児時代には、まだまだ謎があるように思えた。 

「『子どもさらい』……か」

 彼女たちをさらった影。
 あいつが何者なのかは分からないが、思い返すだけで寒気がするほど、不気味な雰囲気をまとっていた。
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