魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第79話 異端者たち

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 パトレシアは1枚の紙に五芒星ごぼうせいを描いてみせた。

「これ分かるよね」

「魔法の5大元素だろ。これがどうかしたのか?」

「まぁまぁ、そう焦らずに。おっしゃる通りに魔法には地、水、火、空、風の5大元素があるでしょ。そして、普通の人間はそのどれか1元素を内包ないほうして産まれてくる。それが常識だよね」

「うんうん」

 パトレシアが空。ナツが地。リタが風、みたいなことだ。パトレシアは五芒星のマークの外側を指差して言った。

「けれど、たまにこの5大元素の枠組みから外れた人間が現れる。例えばアンクみたいな『固定魔法』やレイナちゃんの『身体拡張』みたいな魔法ね。要はどの元素にも属さない魔法を持った人間」

 パトレシアは5芒星の外側に大きなバツを描いた。

「昔の人はこれを『異端者』って呼んでいたの」

「異端者……」

「不思議な共通点だよね。『異端の王』と『異端者』。言葉のニュアンスが似通っている。私の勝手な推測だけれど、ひょっとしたら『異端の王』っていうのはその『異端者』たちの首領リーダーのことを言っているんじゃないかな」

「だから、そんな名前をつけたのか。『魔王』でもなく、『異端の王』だと」

 そう考えると辻褄つじつまは合う。
 プルシャマナを管理しているサティなら、異端者に対する知識は当然あるはずだ。だからその出現を察知して名付けた。話の筋は通る。

「それで間違いなさそうだな」

「間違いない……だけどね」

 パトレシアは自分の書いた五芒星に視線を落とすと、沈んだ口調で言った。

「更に言えば、『異端者』っていう名前は差別の歴史の象徴でもあるの」

「差別? 『異端者』は厄介者だったのか?」

「うん、名前から分かる通り、外れたものだよ。『異端者』は普通じゃないってことなんだよ。その人間の性格に関わらず、生まれ持った魔法が5大元素にあてはまらないというだけで『異端』というだけで差別していた町もあったみたいなの」

「それはいつ頃の話なんだ」

「今でも続いているところはある。西の大陸なんかはそうらしい。この辺ではほんの50年くらい前が迫害のピークだった。骨も残らないように火あぶりにさせられるか、コミュニティを迫害されるか。それもかなりひどいものだったの」

「そんな話……初めて聞いた」

「当然よ。王立図書館にも残っていない抹消まっしょうされた歴史」

 パトレシアはため息をついて言った。

「この話も当時生きていた人からようやく聞けたものなの。ほとんどの人は言葉をにごすか、口も聞いてくれなかったから。『そんなものは無かった』と……みんな忘れようとしている。ようやく話すことが出来たのは、森の奥に住む迫害から逃れた年老いた『異端者』。彼は目の前で両親を焼かれて、そのことをいまだにうらんでいたわ」

「恨み、か。それは人間を憎む理由になるな」

「そう、もし『異端の王』に目的があったとしたら……」

「『異端者』たちが祭り上げる理由になる。『異端の王』は彼らの意思を継いだ彼らの生き残りってことになることか」

 パトレシアはコクリと頷いた。

「そのことを女神さまは知っていたんじゃないかな。私たちの世界を滅ぼそうとするものが何なのか、女神さまは知っていて『異端の王』という名付けたのよ」

 パトレシアはテーブルの上の紙をぐしゃりと握り潰すと、そのままくずかご入れに放り投げた。綺麗な放物線を描いた紙は、寸分違わずくずかご入れの中へと着地した。

「……っていうのが、私の推理。どうかな役に立った?」

「鋭い考察だと思う」

 俺が頷くと、パトレシアは微笑んで返した。

「役に立てて良かった。それじゃあ、私もういくね」

「こんな夜中に? 泊まって行けば良いのに。ベッドの1つくらい空いてるだろ」

「良いの良いの。朝になってシュワラと鉢合わせるのも気まずいし。どうせ『あなたには負けない』とか宣言してたでしょ」

「その通りだ、すごいな」

「分かるの。同類だから」

 肩をすくめてそう言ったパトレシアは、席を立ってひらひらと席を立った。

「また何か情報が分かったら教えるね。じゃ、またね」

 パタンと戸を閉める音がすると、せきを切ったようように眠気がやってきた。

 まどろみの中でパトレシアとの会話を思い出す。『異端者』と『異端の王』。仮にその2つが繋がっていたとして、レイナたちとどう関係があるのだろう。

「『身体拡張エキスパンション』か。あれもそういえば、異端魔法だったな。そうなると、レイナの弟も……?」

 さまざまな可能性を考察しながら、眠りは幕を降ろすようにやってきた。意識と無意識の間の中で、ふとレイナの姿が見えた気がした。
 
「だめだ、まだ魔力が……足りてないか」

 ……焦点の合わない思い出の中で、彼女は笑っているようにも泣いているようにも見えた。
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