魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第122話 シャラディ家へ

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「カルカットも久しぶりだな」

 国道まで出ると車輪の滑りも良く、難なく進むことが出来た。
 人で賑わう道で怪しまれないために、荷台にはカバーを付けておいた。襲撃してきた男たちがいつ目を覚ますか分からないので、急ぎ足でカルカットまで進んでいく。

「なんだか、気分が良いな」

 最近引きこもりがちで、身体がにぶっていたかもしれない。肌に触れる風邪が心地よい。

 数ヶ月前に来たばかりなのに、カルカットまでの道を歩いていくと感慨深い気持ちになった。ついこの間まで足繁く通っていたが、行かなくなってしまった。

 乾いた落ち葉を踏みしめながら歩いていく。色づいた葉を失った枯れ枝は、青い空に向かってまっすぐ伸びていった。

 1本だけピンと立つその姿はどこか寂しそうにも見えた。

「……この辺りかな」

 予定よりも早い時間、夕暮れ前にはシャラディ家にたどり着いた。
 私有地の前まで来てみたが、厳重に閉ざされた門からは庭と小さな警備小屋しか見えなかった。シュワラたちが住んでいる豪邸は、もっと先にあるのだろう。

「すいませーん、誰かいますかー?」

 大声で呼ぶと、警備小屋の中から、さっきの男たちに負けず劣らず人相の悪そうな男が現れた。顔に十文字の切り傷が入っていて、隆々りゅうりゅうと盛り上がった筋肉が見えた。

 男は俺の顔を見るなり、怪訝けげんそうな顔で眉をひそめた。

「どなたですかな? 本日は来客のご予定はなかったはずですが?」

「予定はない、急用で来たんだ。シュワラを呼んでくれ」

「お嬢様に……? 失礼ですが、なんのご用件で?」

 ますます不審そうに顔をくもらせた男は、値踏みするように俺の顔をジロジロと見た。

「急用の方はお通しできません。おかえりください」

 つっけんどんに言うと、男は背を向けて門の方へと歩き始めた。タバコに火をつけると煙をプカプカと揺らし始めた。

「おい待てよ」

 呼び止めてリヤカーに着いていたカバーを外してみせる。

「これだよ、これ」

「…………な!?」

 男は荷台に積まれていた男たちを見て、唖然あぜんとした顔になった。ぽろりと男の手からタバコが落ちる。

「お前、何者だ!?」

「やっぱりあんたらのところの奴らだな。今度家に上がりこんで来たらタダじゃおかない。あんたのところのお嬢様にもそう言っておけ」

 呆然とたたずむ男にそう言って帰ろうとすると、背後から慌てたような声が聞こえた。

「ま、待て! あんた名前は!?」

「アンクだ」

「……!? 出回ってる顔と全然違うじゃねぇか……!?」

「あー、討伐の時に出回った瓦版かわらばんか。俺も見たけど、あれ、全然似てないからな」

「……ちょ、ちょっと待っててください!」

 やけに丁寧な口調になった後で男は警備小屋に走っていた。
 話し声からして中で何かもめているようだったが、しばらくすると彼は戻ってきて、今度は打って変わって丁寧なお辞儀をした。

「アンクさま、先ほどは大変ご無礼をいたしました。中でシュワラお嬢様がお待ちです」

「お待ち……?」

「詳しい話は中で。別の執事がご案内いたしますので、どうかお進みください」

 様子がおかしい。
 まさか罠じゃないだろうなと思って、周囲を索敵《サーチ》で警戒してみたが動きがある様子もない。男の態度も嘘や冗談を言っているようには見えない。男は深々と、身じろぎもせず頭を下げている。

「……分かったよ。こっちも言いたいことがあったんだ」

 誘われるがままに、シャラディ家の敷地に足を踏み入れる。リヤカーを預けて俺が中に入っていくまで、門番の男は俺を見送っていた。

「なんか、急に態度が変わったな」

 アンクと名前を出したからだろうか。まるで待っていたかのような反応だった。
 
 念のため罠を警戒して、幅広い並木道を警戒しながら歩いていく。周囲に魔力反応は無し。不意打ちを仕掛けてこようと気はやはりなさそうだ。

 庭だけでも俺の家が10軒位建てられそうな道を歩いていく。植えられた木々は寸分違わず、同じ形に揃えられている。まるで一から作られたかのように、ピシリと整列していた。

「……お、なんだあれ」

 シャラディ家の屋敷は想像以上の大きさだった。
 端から端まで視界に収まりきらないほどの豪邸がそこにあった。

 並木道を抜けてまっすぐ進んでいこうとすると、花壇の前に正装をした老執事が背筋を伸ばして立っていた。さっきの男とは違う、精悍せいかんな姿だった。

 俺の姿を見とめると、彼はうやうやしくお辞儀をした。

「アンクさまですね。どうぞこちらへ。シュワラお嬢様がお待ちです」

「あっちの屋敷じゃないのか」

「招かれざる客を母屋に案内するわけにはいきません……とシュワラさまからの言伝ことづてがございます」

 老執事は道をれて、歩いてきたところから右の方向へと案内した。そこには豪邸とまではいかないが、黒い木材を使って建てられた家があった。

「使用人たちの小屋です。シュワラさまはあそこでお待ちになられています」

「俺の家よりも大分でかいな」

「母屋に仕えているだけでも、100人の使用人がおりますから」

「100……」

 そんなに人を雇って何をさせているのか。金持ちの考えることは良く分からない。
 
「お嬢様、失礼いたします」

 コンコンと老執事が扉をノックすると、中から「どうぞ」とんだ声が聞こえた。扉を開けると中はホテルのロビーのようになっていて、中央のソファには長いピンクの髪をおろしたシュワラがいた。

「久しぶりね、どうぞ座って」

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