魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

文字の大きさ
149 / 220

第121話 白昼の訪問者

しおりを挟む

 流れるように季節は過ぎ去っていった。窓から見える木々の葉は地面に落ち始めていて、数少ない葉っぱも北風に吹かれて頼りなげに揺れていた。

「あの葉っぱが全部落ちたら、俺は死ぬ……」

「何の冗談ですか?」

「ものの例えだよ。このままだと退屈で本当に死ぬ」

「冬はもよおし物も少なくてやることがありませんからな」

 サラダ村の冬は長い。地形の関係からか、雪が積もりやすく溶けにくい。毎朝のように雪かきをしなければ、屋根がつぶれてしまうような厳しい冬だ。

 そのため秋の祭りが終わると、カサマド町含めて、この辺りの住人は一気に冬支度へと走る。

「酒でも飲むか。まだワインセラーに去年の秋の残りがあっただろ」

「ありますけど、もう少し置いといた方が良いってこの前言ったばかりじゃねぇですか?」

「最悪、アルコール入りのぶどうジュースでも良いよ。ちょっと取ってくる」

「やれやれ。1本だけですよ」
 
 コートを着込んで、母屋おもやから少し離れた食料庫まで歩く。裏口からすぐの距離だったが、肌にしみるような秋風を浴びて、近づく冬を一層強く感じた。

 思えば、この数ヶ月、どこかぼんやりとした時間を過ごしていたような気がする。時折、幻聴げんちょうが聞こえたり、頭痛が襲ってくることもあったが、時が過ぎ去るごとに薄れていき、そのうちすっかり治っていた。

「たちの悪い風邪だったか……」

 治ったら治ったで寂しくなるのはどうしてだろうか。
 
「お、こんなところに」

 ワインセラーをあさっていると、一昨年の秋に作ったワインがまだ残っていた。もうほとんど飲み干してしまったかと思っていたが、棚のすみに隠れていたようだった。

 フタを開けてみると、発酵したブドウの良い香りがした。

「おう、よしよし。大事に飲んでやるからな」

 ビンの表面を撫でながら、歩いて勝手口まで戻る。ニックに2年前のワインが残っていたことを報告しようと、意気揚々と扉を開けたがそこには誰もいなかった。

「ニック……?」

 ついさっきまでキッチンで料理を作っていたはずなのに、影も形もない。コトコト煮立っていた鍋の火も消されている。

 きょろきょろと家の中を見回していると、突然背後から口を塞がれた。

「もごもごもご……!」

「旦那さま、黙っていてくだせぇ! 侵入者です!」

 いつの間にかニックが俺の背後に回っていた。透明化の魔法を解いたニックは、俺をテーブルの隅まで連れて行った。
 
 ニックの表情は緊迫した様子で、額に青すじが見えていた。

「し、侵入者……?」

「そうです! 玄関の周りでうろついている男が3人。どいつもこいつもカタギじゃなさそうです。旦那さま、調べてもらってもよろしいですか」

「……わ、わかった、ちょっと待て。索敵サーチ

 魔法を使って周囲を調べると、ニックの言う通り、3人分の魔力を感じた。足音を殺して歩いているようだが、漂う魔力からは緊張感が見られる。

「うん、カタギじゃなさそうだな。図体もでかい」

「どうしますか……? あっしの透明化で様子を見てきましょうか?」

「いや、待て。相手が動いた」

 慎重に辺りを伺いながら、歩いていた男たちは動きを早めて散らばり始めた。1人は正面入り口の方、あとの2人は俺がさっき入った裏口へと回り込んだ。

「囲まれた。完全にやる気だな」

「どうしましょう? なにか心当たりは?」

「ない」

「大英雄ですからな。何かと|湧いてくるやからは多いでしょう」

「どちらにせよ……仕留めるか。正面入り口に回ってくれ。俺は裏口のやつをやる」

 黙って頷いたニックに、「くれぐれも殺さないように」と忠告を送って裏口の近くに構える。
 間もなくして、乱暴にノックをするごんごんという激しい音が鳴った。

「アンクさーん、いますかー!? いるんでしょー!!?」

 扉の向こうの男は、ドスの効いた声で俺の名前を読んだ。威圧感を感じる声だ。何も言わずにしていると、ガチャガチャと無理やりドアを開けようとし始めた。

「やるか」

「やりましょう」

 ニックが俺に合図を送って、ドアの鍵を開ける。
 声の主は真っ黒な服を着た図体の良い男たちだった。強面の顔は部屋の中を見渡すと、誰もいないことに不審そうな顔をした。

 その隙を狙って、ニックが男の後頭部にフライパンで渾身こんしんの一撃をくらわせる。

「ぐがっ……!」

 叫び声をあげた男は、昏倒して床に突っ伏した。叩きつけたフライパンから、ごおおんと鐘が鳴るような音が響く。

「何だ……!?」

 異変を察知したのか、裏口に控えていた男たちがドアノブを破壊して飛び込んできた。

「おい! 何をやっている!?」

固定フィックス

 中に入ってきた瞬間、固定魔法で動きを止める。どちらもポケットにナイフを仕込んでいて、穏やかなセールスではないことは確かだった。首に電気杖《スタンガン》を喰らわせて、叫ぶ暇なく倒す。

「いっちょあがり」

 倒した3人の男たちはロープで縛って、床に転がしておくことにした。

「やれやれ、一体なんなんだ」

「ヤバい連中だったことは確かなようですね」

「そうだな…………おっ、何かあるぞ」

 男たちのポケットをまさぐっていると、何か紙のようなものを発見した。見てみると、名前と所属が書かれている小さな名刺だった。

「なになに、シャラディ商会……?」

「げ!? このあたりの大地主じゃねぇですか? アンクさま、本当に何やらかしたんですか? やばいことに手を出してるんじゃないでしょうね!?」

「いや、そんな覚えはないが、どっかで会った覚えが……」

「はー、どこで知り合ったんですか?」

「あれは……なんだったけな。シャラディ……シャラディ……病院……あ、思い出した。ピンク髮」

 シュワラ・シャラディだ。
 高飛車を具現化させたような金持ちのご令嬢。彼女になら会ったことがある。

「シャラディ家のご令嬢とお知り合いなんですか?」

「そこの病院でお世話になったことがある」

「何か怪我をされたんですか」

「いや、貧血か何かだったかな……」

 どこかで転んで、頭を打ったのかもしれない。

「まぁどっちでも良いか」

「しかし、シャラディ家の使用人とあっちゃあ、自治軍に引き渡す訳にもいかなねぇですね。下手したらあっしたちが犯罪者だ。どうしますか、素知らぬ振りして埋めちゃいますか?」

「物騒なこと言うな。いいよ、俺が直接行っていく」

「本陣突撃ですな。良いですぜ、私もお供しましょう」

「喧嘩をしに行く訳じゃないんだ。下手な波風は立てたくない。俺1人で行く」

 残念そうな顔をするニックの肩を叩いて、納屋からリヤカーを出してもらう。シャラディ家の屋敷は、カルカットの近くにあるからダッシュで行けば半日あればたどり着ける。

「じゃあ、行ってくる」

「どうかお気をつけて。危なくなったら逃げてきてくださいね」

 ニックに送り出されて、シャラディ家までリヤカーを引っ張っていく。
 気絶した3人を振り落とさないように、俺は国道に沿ってまっすぐ走って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。 なお、シリーズ第二作目が、現在なろう様、カクヨム様で連載しています。 2月13日完結予定。 その後、アルファポリス様にも投稿する予定でいます。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

処理中です...