魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

文字の大きさ
148 / 220

【共犯者たちのまどろみ(No.15.1)】

しおりを挟む
 
 ナツが私の服の下に手を入れて、耳元でささやいた。 

「どう? 気持ち良いでしょ?」

 それは久しぶりに感じる人間らしさだった。
 体温の熱さと高揚こうよう感。今までどれだけ自分の身体が冷え切っていたことに気がついた。

「あ……」

 快感というには容易たやすい。
 もっと奥深いところで、身体がむさぼられているようだった。後ろからパトレシアの手が伸びてくる。下腹部の方へと彼女は手を滑らせた。

「や、め……」

「やめないよ。ほら、魔力炉が傷んでいる。頭も痛くなるわけだよ」

「や……ん」

 パトレシアの手が優しく私をでた。
 穏やかな魔力が彼女の手のひらを通して、流れ込んでくる。暴力的な女神の魔力で悲鳴をあげていた私の身体が、フッと安心感を取り戻す。

 雲の上で揺らいでいるような安心感だった。
 このまま2人の愛撫あいぶに身を委ねてしまいたくなった。

「あ……」

 ピシリ、と再び頭上で音がする。魔力の揺らぎを次元が察知した。

「だ、め……」

「ん?」

「や、やめてくださいっ……!!」

 力の限り、2人を払いのける。身体の上に乗っかっていた2人は、勢いよく遠くの方へと吹き飛んで行った。

「いきなり何をするんですかっ!」

「何って……そりゃあねぇ」
 
「ねぇ」

 ナツとパトレシアはなんてことはないという風に、吹き飛ばされたところからピョンとジャンプしてに私のところに戻ってきた。

「い、いたずらするにも程があります!」

「でも、気持ちよかったでしょ?」

「う……」

「アンクに会えなくて寂しいよね。私たちだって寂しいもの」

 そう言われて、ドキリと心が揺らぐ。
 
 彼女たちは私たちの顔を覗き込んで言った。その顔は本当に心配しているようで、不安そうに瞳が静かに揺れていた。

「2人とも……」

 やり方は問題があったとしても、彼女たちは私を励ましてくれていた。

「何か別の方法はなかったのかな」

「……分かりません。確かなことは瞑世めいせの魔法を解けば、女神は覚醒して私たちを皆殺しにすることだけです。そうなれば、ナツさんもパトレシアさんもアンクさまも、殺されます」

「それはそれで困るんだよねー」

 ナツはイライラしたように頭を抱えて言った。

「新しい女神になれば、アンクを永遠に見守ることが出来る。そばにはいれないのが難点だけれど、私たちは『死者の檻パーターラ』で現れたから別だけれど……」

「私も同じ気持ちです」

 パトレシアは「レイナちゃんは少し違うと思う」と言って、私のことを見た。

「レイナちゃん。やっぱり後悔してない?」

「していません」

 きっぱりと返答する。
 再び私を挟むように座ったナツとパトレシアは「いやいや」と言って否定した。

「たぶん、まずレイナちゃんの気持ちを整理すべきなんだと思うよ。迷いなくこの選択肢を選んだのなら、髪留めがアンクのポケットにあるなんてことは無かったと思うし」

「わたしに未練があると……」

「ありあり、おおあり」

「本当はアンクに会いたいんでしょう?」

 そう言われて、パトレシアを見返すことが出来ない。
 
 ぐらりと世界が歪む。次元が形を崩して天蓋てんがいきしむような嫌な音がなる。地震のように不安定に揺れた地面を感じて、ナツとパトレシアが驚いたように上を見上げた。

「わっ」

「また、ちょっと危なかったね」

「…………ふぅ」

 本当に危なかった。
 気持ちの揺らぎが瞑世めいせの魔法に影響した。あやうく全部ダメにしてしまうところだった。

 魔力が再び落ち着き始めたところで、のんきに「こわかったねー」と言う2人に文句を言う。

「危うく魔法が崩れてしまうところでした。まったく……2人はどちらの味方なんですか?」

「え? レイナちゃんの味方だけれど」

「でしたら、私の心を揺さぶるようなことは止めてください」

「味方だからこそするんだよね、パトレシア」

「そうそう、そういうこと」

「どういうことですか……?」

 微笑んだ2人は私の身体に抱きついて、そのまま地面へと押し倒した。

「たまには毒を吐き出さなきゃねー」

「後で後悔するよりは、今悩んだ方が良いでしょう?」

 抱き枕にでも飛びつくみたいに、2人は私の身体を強く抱きしめた。よしよしと撫でながら、「魔法は精神の安定が大事だよ」と言った。

「イメージが崩れたら、本当に全部ダメになっちゃうからね」

「……もしかして、わたしかなり気を使わせていますか?」

「あ、いまさら気がついた?」

「レイナちゃんずっと浮かない顔してたからね。あんなミスするなんて、らしくないぞ」

 パトレシアがとがめるように言った。
 そうか……しっかりしていなかったのは私の方だった。それが魔法の発動にも影響していることも、見抜かれていたという訳だ。
 
「2人ともありがとうございます」

「良いってことよー」

「なんか眠くなってきちゃったなぁ」

 パトレシアが眠そうにあくびをする。私のお腹の上に手を置いたナツも、いつのまにか目を閉じていた。すやすやと寝息を立てる音も聞こえてくる。

 上を見ると崩壊した天井から、真っ白な空が見える。流れる雲もない時間が止まったような場所を見ていると、わたしにも強い眠気がやってきた。

 悪くない兆候だ。
 痛みなしに女神の魔力を取り込むことが出来ている。

「……おやすみなさい」

 空の上から『世界の目ビジョン』を使って、彼の姿を確認する。
 私たちは後戻り出来無い場所へと徐々に進んで行っている。それが正しいのかどうかは今の私には分からない。

 ……彼が平穏な生活を送っていることが、今の私にとって、何よりの救いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。 なお、シリーズ第二作目が、現在なろう様、カクヨム様で連載しています。 2月13日完結予定。 その後、アルファポリス様にも投稿する予定でいます。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

処理中です...