魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

文字の大きさ
160 / 220

第132話 アグニア・ユーアイア

しおりを挟む
「目を覚ませ、アンク。まだ何も終わっちゃいない」 

 記憶から覚醒すると、天の岩壁の縁にユーニアが立っていた。

「私のことを思い出せたか?」

 彼女が立っている場所は、あの血だまりがあった場所だ。

「思い出深い場所とは良く言ったもんだな。そう、ここは私が死んだ場所だ。お前の中では行方不明ってことに書き換えられていたみたいだが、私は確かにあの時死んでいる」

「『死者の檻パーターラ』……」

「その通り、私は新しい女神によって蘇った」

 戦闘服に着替えた彼女は、赤々とした太陽に自分の手を向けながら言った。

「嘘をついて悪かったな。呼び出された柱3つじゃなくて4つだ」

「……その1つがユーニアか。じゃあ瞑世の魔法の……」

「共犯者でもある」

 気分が悪い。
 思い出したくもない記憶を見たせいだ。

 あぁ、リタが言った通り、本当に最悪だ。天秤にはこの人も乗っていただなんて。最低で最悪だ。

「どうして、俺に協力してくれたんだ。どうして、ここまで導いてくれたんだ」

「私はお前の味方だからな。お前がやりたい方に任せようって思ったんだ」

「ひどい……味方だ」

 身体を起こしユーニアと向き合う。
 赤い髪をなびかせるユーニアは以前と変わらない優しく笑っていた。

「自分が死ぬことを何も言わないだなんて。意地悪にもほどがある」

「その覚悟があるのかは言ったよ。お前はそれが誰だったとしても戦うと言った」

「……そうだな」

 気分は悪いが、身体は動く。
 ユーニアの身体が死者の檻パーターラを解除したことによって、崩れつつある。身体が維持出来なくなっているのが分かる。

 考えている暇はない。
 今度は俺がこの人を救う番だ。解法モークを使って、彼女の身体を固定する。

「ユーニア、じっとしていてくれ。今、助ける」

「いやだね」

「……は?」

 ユーニアは俺たちに敵対するように 自分の胸の間から小さな木の杖を取り出した。大魔法使いである彼女が最も得意とした武器、魔力の力を増大させる魔導杖を俺たちに向けて、高々と宣言した。

「ここからは本気であなたたちに敵対するわ。リタ、アンク」

「どうして……!?」

「決まってるじゃない」

 魔導杖を振って赤々と燃える火の玉を浮かび上がらせながら、彼女はゆっくりと俺たちに近づいてきた。

「仮にも私は人柱として呼び出されたからね。固定なんかされちゃったら、あの娘に魔力をあげられない」

 敵意をむき出しにしたユーニアは、俺を見てフッと笑った。

「それに、あんたなんかに私を救わせはしない」

 ユーニアが放つ魔力は俺が知っていた頃よりも、はるかに強くなっていた。
 女神の一角としての強さなのか、遠くに浮かぶ火の玉から焼き付けるような熱さを感じる。

 それを見て隣に立つリタも戦闘する準備を整えた。

「……アンク、やるんでしょ」
 
「仕方がないか」

「あなたたちと本気で戦えるなんて最高ね……!」

 俺たちの姿を見ながら、リタは楽しそうに笑っていた。全開の魔力を試すように揺らしながら、周囲から巨大な火柱を出現させた。

「…………っ!」

 圧倒的な熱量。彼女が出現させた火柱は、はるか高くまで立ち上った。近づいてくるだけで、やけどしそうなほどの火力を纏っている。
 
「殺す気か……!」

「命のやりとりをしているのよ、当然でしょ。大丈夫、身体を焼き尽くしても魂が残れば瞑世の魔法で生き返らせてあげる」

「冗談じゃない……!」

「冗談じゃない。本気よ」 

 ユーニアは真顔で言った。本気で俺たちの味方をしていて、今は本気で俺たちを殺そうとしている。

 ……そうだ、この人はそういうことが出来る人だった。
 自分が良いと思ったことを行い、それが矛盾していることを気にすることすらしない。

「いいぜ、やってやる……! 俺はもうあんたの世話にはならない!! 今度こそあんたを救ってやる!!!」

「おぅ、良いねぇ。それでこそ私の弟子だ!」

 周囲を真っ赤に照らす火柱の中で、ユーニアは宣言した。その瞳は俺が知っている彼女とは違う、どこまでも深く神々しさすら感じるものだった。

「今の私はアグニア・ユーアイア。新しい次元において炎を司る柱。この世で最も強力な原初の力、肉を焼き、大地を照らし、熱をもたらす火神の特権物。火神アグニの名のもとに、これより全てを無に還そう」

 ユーニアを取り囲む火柱が勢いを増す。足元の石すらも歪み始め、彼女が歩みを進めるごとに、近くの足場がガラガラと音を立てて崩れていく。
 
 火柱の1つに手をかざしたユーニアは、俺たちにむけて炎の槍を放った。

「火の魔法、拝炎阿遠ガリア

 火柱から放たれた槍は、空中で分裂して四方八方に飛び交った。先端が鋭く尖った槍が、俺たちの逃げ場を防ぐように広範囲に飛んでくる。

「風の魔法、広宵の陣ダイアヴァハ!」

 リタの左右から突風が舞い上がる。空気の流れが、炎の槍を阻害するように強い風を引き起こした。

「アンク、一旦逃げるよ!」

「いや、特攻する」

「ばか、あんた無茶でしょ!」

 飛んでくる火の槍を避けて進む。
 まっすぐに飛んでくるだけの弾道なら、比較的固定しやすい。近づくごとにジリジリと焼け付くような熱さは増してくるが、そうも言っていられない。

「ユーニアの身体は長くたない」

 『死者の檻パーターラ』を解除したことによって、ユーニアの身体は崩れかけている。早く固定しないと、手遅れになる。

 ……これはユーニアとの戦いじゃない。ユーニアを救うための時間との戦いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。 なお、シリーズ第二作目が、現在なろう様、カクヨム様で連載しています。 2月13日完結予定。 その後、アルファポリス様にも投稿する予定でいます。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

処理中です...