魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第133話 炎の中で

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 飛んでくる火の槍を避けて、ユーニアの元へと走る。

固定フィックス!」

 ユーニア自体への魔法は弾かれるが、彼女が放った攻撃は止めることが出来る。かわしきれない攻撃は、固定しながら逃げ切る。

「もう少し……近くへ……!」 

 炎を操る魔法使いを相手取る場合、もっとも気にしなければいけないのは間合いだ。小レベルの魔法でもそこそこの効果を発揮する火の魔法は、上級の魔法使いにかかれば体内の水分すら蒸発させる最強の武器になる。

 距離を取ろうものなら、逃げ場を封じて焼かれる。
 だからこそ、距離を詰めて、相手が大規模な魔法を発動するのを防ぐ手が、彼女との修行自体からの定石だった。

「へぇ、さすがだ」

「昔のようにはいかないぜ。何回あんたにやられたと思っている」

 俺の言葉に、嬉しそうに笑ったユーニアはもう1つの火柱に手をかざして、魔法を唱えた。

「火の魔法、扇火帯胚ヴァラリア

固定フィックス!」

 火柱から魔法が発生した部分を固定する。ユーニアの動きに対して、彼女の魔力が高まった地点を狙い撃ちして、動きを止める。

「とった!」

 隙だらけで宙に浮かぶユーニアの首筋に電気杖スタンガンを向ける。最大出力に調整した雷撃魔法で、彼女の急所を狙う。

 しかし、彼女に触れられる間合いまで近づいた途端、俺の目前で火炎が爆散した。
 次から次へと、ユーニアの周りで炎が巻き起こり、視界が真っ赤に染まった。

「うぉおああぁっ!」

「あはは、ざんねーん、あらかじめトラップを仕掛けていたのでした。そんなに簡単に殺られるわけないでしょうが!」

 ボンボンボン! と炎が散る中で、ユーニアは嘲笑ちょうしょうしながら更に魔法を放った。

「甘い甘い! そんなんじゃ私を救えないよ!」
 
 ユーニアが指を鳴らすと、次々と何もないはずのところで炎が爆発していく。
 爆風で舞い上がった身体が、燃え盛る火柱に向かって飛ばされていく。計算づくの攻撃。手加減なしの本気だった。

「本当に殺す気か……!」

 固定魔法を使って、火柱の動きを止める。焼死だけは防がなければならない。火柱を固定して、炎から身を守る。

固定フィックス!」

 火柱の動きが止まる。
 燃焼を止めて、ギリギリのところで動きを止めて難を逃れる。

 しかし相手は膨大な魔量を持つユーニアが放った火柱だ。
 もって8秒か10秒。固定魔法が解けてしまえば、骨も残らない。

「風の魔法、景宵の飛ダイアヴァハ!」

 燃え盛る炎をかき消したのは、リタの風の魔法だった。凄まじい突風が地上から舞い上がり、辺りの炎を消火していく。

 地上を降り立つとリタは荒く息を吐いて、汗をぬぐった。

「助かった、リタ!」

「……だから無茶って言ったのに。あの人、本気だよ」

「どのみち、短期決戦に持ち込むしかないだろ。ユーニアの魔量、尋常じんじょうじゃない。スタミナ切れっていう線は無理だ」

「下手したら私たちが死ぬかもね」
 
「俺たちが死んだら死んだで、また生き返らせるって言ってたな。相変わらず発想がいかれている」

 俺たちを見下ろしながら、ユーニアはさらに魔力を蓄え始めていた。
 『死者の檻パーターラ』が崩れ始めているにも関わらず、彼女は旺盛おうせいな火力で俺たちに相対していた。

 彼女が魔導杖を俺の顔に向けて言った。

「覚悟しただけじゃ足りない。あんたは全部救うんだろ。やけっぱちじゃなくて、頭を使え。クールに情熱的に欲するものを為してごらんよ」

「……分かってるよ、そんなこと」

「良い顔だ」

 満足気に笑ったユーニアは杖を振って、火柱をさらに動かした。天へと向かって収縮するように炎が集まっていく。

「私にここで殺されるようなら、それまでってことだね」

「あ……」

 リタはユーニアの魔法を見て唖然とした顔になった。
 そこには小さな太陽とも思える燃え盛る球体が生成され始めていた。ジリジリと照り付ける熱波が、岩肌の上にわずかに生えていた雑草を枯らしていく。

「……あれはさすがに度が過ぎるな」

「言っておくけど、私の風の魔法じゃあれは止められないよ」

「そうだな。活路があるとしたら……」

 ユーニアを倒すための攻撃パターンを計算する。
 近距離まで近づけば、周囲に張り巡らされたトラップが発動して詰み。遠くからの攻撃を狙っても、炎に取り囲まれて詰み。チャンスを狙っても、時間切れで詰み。

 このままこの場所にいても、巨大な炎に焼かれて詰み。

「強行突破しかなさそうだな」

「私やりたくない」

「なんでも協力してくるんじゃなかったのか……」

「出来る範囲でね、あれは無理だよ」

 リタは絶望したようにぶんぶんと首を横に振った。

「良いさ。リタは俺を上空まで飛ばしてくれれば良い。あとは何とかする」

「それくらいなら出来る。どれくらいの速さが良い?」

「最速で45度の直線距離が良い」

 詳しい作戦を伝えている暇はない。
 巨大な火球を構えたユーニアは、今まさに放とうとしていた。

「覚悟はできたか、我が弟子たち。辞世じせの句くらい読ましてあげても良いけれど?」

「必要ない。ここで決着をつける」

「……やってみろ」

 嬉しそうに笑ったユーニアは、大きく息を吸い込むと手のひらに蓄えた魔力で、巨大な火球を押し出した。

「火の魔法、歓天喜火神陶耀アグニ・アグアイア

 放たれた熱波で石の地面が歪む。
 太陽が地上へと落ちてきたのかと錯覚するほど、強い光と熱量を纏って、巨大な火の玉は俺たちに向かって落下してきていた。
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