魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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【共犯者たちの企み(No.16)】

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「おかえりなさい」

 神の座に立つ柱へと、彼女の魔力が入ってくる。
 熱く燃え上がる炎が瞑世めいせの魔法をさらに進行させていく。

 結局私には彼女をコントロール出来なかった。魔力だけはあげると言う約束だけは守ってくれたので、それだけでも僥倖ぎょうこうというべきなのだろう。

「どうしたの、何かあったみたいだけど」

 心配そうな顔をしたナツが現れる。
 異変を察知したのか、パトレシアがこっちに向かってきている様子も見えた。

火神アグニがやられました。世界から完全に去ったようです」

「やられたって……相手はアンク?」

「はい、アンクさまとリタさんも一緒です」

「そっか、ていうことはアンクは記憶を取り戻しつつあるんだね」

「はい、『死者の檻パーターラ』を看破する方法も見つけてしまいました。正直に言うと、大ピンチです」

 どれもこれもユーニアのせいであることは間違いない。
 ぴょんとひとっ飛びで私の隣に立ったパトレシアは、私を見下ろして言った。

「ユーニアならやりかねないね。あの人なら考えを変えて、アンクに味方することも余裕でする」

「パトレシア、アンクと同じ先生だったんだっけ」

「うん。本当に変な人だった。捉えどころがないっていうのは、あの人に使う言葉だね」

「そうですか、最初は私に協力してくれるとは言ってくれたんですが……」

 私の言葉にチッチッチと舌打ちして、パトレシアは言った。

「あまい、あまい。あの人の性格上、自分が面白いと思った方向に簡単に転がる。あの人をコントロールしようなんて、この世の誰にも無理だろね」

「面白い……とは、どういう意味でしょうか」

「自分が納得出来る方というか、情にほだされたというか……ともかく裏切ったという訳ではないと思うよ。ユーニアは嘘は付かないけれど、自分が決めたことに純粋だから」

「それは身勝手というのではないですか」

「まさしくそう」

 その言葉に思わず深いため息が出る。
 どっちに取っても最強の味方であり敵、という風に諦めるしかなさそうだ。

「すると……これからの対策を考えなければなりませんね」

 この状況になると、最悪ドミノ倒しのようにナツやパトレシアの『死者の檻』も崩されてしまう。

 女神の封印もどうなるか分からない。覚醒した女神サティが何をするか、考えるまでもない。

 嫌な想像に頭を巡らせていると、ナツが私の顔を覗き込みながら言った。

「ねぇ、どうして私たちを洗脳しようとか思わなかったの?」

「……洗脳?」

「うん、レイナちゃんほどの魔力があれば『催眠イプノーティス』の魔法を使って、私たちの思考を縛ることなんて出来ないことじゃなかったでしょ。そうすれば、ユーニアさんだって大人しくしていたんじゃないかな」

「ナツ、あんた顔に似合わず恐ろしいこと言うわね」

 パトレシアが顔を引きつらせて言った。

「え、パトレシアだって思ったでしょ。わざわざ裏切られるリスクを取ることもないじゃん」

「…………それは思ってみませんでした。断られたら1人でやろうと思っていましから」

「せっかく呼び出したのに?」

 ナツの言葉に頷く。
 彼女の言うことはもっともだったが、それは『死者の檻パーターラ』を使おうと思った時から、頭の中にはどうやって彼女たちを説得するかしかなかった。

「私は自分がやっていることを完全に正しいと思ってはいません。ベターな方法ではありますが、ベストな方法ではないことも知っています。わざわざ同意を取ったのは罪悪感なのかもしれません。死者を使った上、洗脳までして世界を乗っ取る……私には荷が重すぎる話です」

「あー、それはそうだね」

「はい。それから、私は別にユーニアさんに怒ってはいません。あなたたちを犠牲にしてまで、この計画に巻き込むのは正直、今でも後悔しています」

 『柱』として彼女たちを召喚したのは、必要に迫られたからだった。
 女神を取り込む際に必要とする魔力は膨大で、身体の負担に耐え切れる保証はなかった。そうなれば全てが台無しだ。

「サティの器は私とは比べ物にならないほど大きいのです」

 火、空、土、水、風、5大元素全ての膨大な魔力を女神は保有している。
 瞑世の魔法を使って新しい次元を作るには、その力が不可欠だった。力を取り込むための器として彼女たちの協力は必須だった。

 私1人だったら、この身体はすでに溢れ出る魔力を捉えきれずに崩壊していた。もちろん、彼女たちが協力してくれなければ、その道を選ぶ覚悟はあったが、それは本当に最後の手段だ。

「不本意ねぇ……」

 私の言葉を聞いたパトレシアは大きくため息をついた。

「それは私たちに逃げても良いって言ってるってこと?」

「はい、もちろんです。ですから、わたし1人でも……」

「バカ、レイナちゃん。バカねー」

 私の言葉を遮って、ナツが頬の方をぎゅーっと引っ張ってきた。私を見る彼女の表情は、かなり怒っていた。

「私たちがあなたの想いを知っていて見捨てて逃げると思っているの。そんなことする訳ないでしょ」

「ですが、このままですと間違いなくアンクさまと対立することになります。2人ともそれで良いのですか」

「良いって言っているじゃない。アンクだろうが、誰だろうが戦ってやるわよ」

 私の隣に腰掛けてパトレシアは言った。

「それにアンクを救いたいっていう気持ちは私たちも同じ。自分1人が何でもかんでも背負っていると思わないでね。そういうの身勝手って言うのよ」

「そうそう」

「ナツさん……パトレシアさん……」

 彼女たちは笑いながら、私のことを見た。ナツに引っ張られている頬がジンジンと痛かったが、心の奥もまた同時に温かくなっていた。

「2人ともありがとうございます。私のわがままに付き合ってもらって」

 彼女たちの言葉に、私は少しだけ自分が許されたような気さえした。例えそれが、一時の幻想に過ぎなくても。
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