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駅構内で散歩
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日帰り出張の帰り、時刻は22時を過ぎて新幹線が到着駅のホームに停車した。
「疲れた」
思わず声が出て、隣の席のOLさんが口に含んだ飲み物をブッと吹き出した。
「すみません、つい」
僕が頭を下げると、
「とんでもない。こちらこそ申し訳ございません」
ハンカチで口を拭いながら謝ってきた。
「えへへ」
「ふふふ」
一日頑張って働いてこの時間、車内でビールを引っ掛けている事もあってお互い変なテンションになっているようだ。降りる準備をするため、目の前の折り畳みテーブル上の飲み物などゴミを片付ける。荷物棚からビジネスバッグを下ろして、車内の通路を進み出口へ向かう。
「いけね」
ジャケットのポケットに入れていたケータイを取り出すと、電池が切れていることに気づいた。ビジネスバッグからモバイルバッテリーを取り出してケーブル接続する。
ブィーンとバイブレーションが震えて、起動した。
車内通路で目の前を歩く先程のOLさんは二十代後半ってところか。身長155cm前後、黒髪は一つに束ねて、グレーのパンツスーツにパープルのタートルニットを合わせたコーデ。肩から下げたビジネスバッグとお土産の紙袋を持って、黒のパンプスはヒール低めの機動力仕様。
新幹線のドアが開くと、一斉にビジネスマンがホームに放たれる。次の目的地は改札出口。皆んなそこへ足早に向かう中、目の前のOLさんの足並みはというとゆっくりで、相変わらず僕の斜め前を歩いている。
「急がないんですね」
と声を掛けると、
「後ろの人の声掛け待ちでした」
いまなんて言った?そんな返しあるの?
「終電間に合うなら、少し飲みに行きますか?」
僕は勇気を振り絞ってダメ元で言ってみると、
「一杯二杯くらいなら全然OK」
こんな良い日は二度と訪れないかもしれない。疲れが一気に吹き飛んだ。
「じゃあじゃあ、改札出てすぐの所に美味しい店あるんで」
2人で改札を出た時、僕のケータイがブルッた。
ケータイをチラッとみると、
「そろそろこっち戻ってきた?近くにいるから駅まで迎えに行こうか?」
コシミチさんが車で迎えにくるつもりらしい。
少し前を歩くOLさん。一日仕事を終え漂うなんとも言えない色気。うなじが汗で湿っているのが見えてドキドキする。これ、飲みの後ワンチャンあるでしょというシチュエーション。男ならこれ行っとかないと。うわー。どうしようー。ケータイが再度震える。
「ご飯食べた後、軽く縛ってもいい?」
コシミチさん、やめてー。今そういうのじゃないのよ。
「こっちでいいですか?」
飲み屋がある方を確認して振り返ったOLさん。
かわえぇ。キレイ。笑顔が素敵。
「そうそう。この先もう少し歩くと赤い提灯が見えてくる」
僕がこのチャンスを逃すわけがない。
ケータイが鳴った。コシミチさんからの着信。
しつこい。今日は無理だって言ってやる。
「ごめん、ちょっと会社から電話」
とOLさんに断ってから電話に出た。
「なんで返信しないんだよ」
いきなりのお怒りモード。出鼻を挫かれた。
「申し訳ございません。さっきまでケータイの充電が切れていて」
「まあいいや。もう南口に着いてるから、さっさと出てきなさい」
「えっと、いやぁ、なんというか」
「あ?早くして。こっちは待ってるんだよ」
(僕は今から初めましてのOLさんとお食事に行く予定があるんですが、、、)
とは言えず、
「承知しました。今すぐに向かいます」
と言って電話を切ると、なにかを悟ったOLさんが、「お仕事頑張ってください」
とガッツポーズしてくれて、こんな良い出会い二度とないぞと耳打ちするもう1人の自分が僕に言ってみたけど、もはや僕はわたしになりかけていて、コシミチさんの元へ向かっていった。せめて連絡先聞いておけば良かったと涙を拭う。
「お疲れ。時間も時間だしこのままホテル行く?」
腕時計をみると22時半だった。まだ大半のお店はやってる。わたしはお腹すいたけど、ご飯食べないのかな。
僕はわたしになっていて、コシミチさんに意見出来ずにいる。
「はい。ホテルに連れて行ってください」
なんて言っている。本当はお腹すいているのに。
コシミチさんが来なければ今頃OLさんと楽しくご飯食べていたはずなのに。
「たまたま用事があって近くにいたんだよ」
嘘つき。わたしがこの時間に帰ってくる事知った上で、待っていたんでしょうとは言えない。
「わざわざありがとうございます」
右手だけで運転しながら、コシミチさんの左手がわたしの太ももを弄ってくる。
やがて股間に手を伸ばしてくると、強めに握りだした。
「いや」
「あ?」
怒気を含んだ威圧に怯え、されるがままになった。なんか最近、2人の関係性がギクシャクしている気がする。
コシミチさんの思いが強くなり過ぎているのか、わたしの気持ちが離れてきているのか、そのどちらともなのか、良くない感じが続いている。
コシミチさんの横顔をみると、目が血走っていてすごく怖いと思った。
そろそろ潮時なのかもしれないとふと思った矢先、信号待ちで車が停車するやいなや、コシミチさんがキスをしてきた。先ほどのOLさんからは決して発しないおじさんの匂い、味。ふっとスイッチが入った。わたしも積極的にキスをする。
「続きはホテルでな」
信号が青に変わる頃にはわたしはすっかりメスの顔になっていて、再度股間を弄られても今度は拒否せず、もうOLさんの事は忘れかけていた。
「疲れた」
思わず声が出て、隣の席のOLさんが口に含んだ飲み物をブッと吹き出した。
「すみません、つい」
僕が頭を下げると、
「とんでもない。こちらこそ申し訳ございません」
ハンカチで口を拭いながら謝ってきた。
「えへへ」
「ふふふ」
一日頑張って働いてこの時間、車内でビールを引っ掛けている事もあってお互い変なテンションになっているようだ。降りる準備をするため、目の前の折り畳みテーブル上の飲み物などゴミを片付ける。荷物棚からビジネスバッグを下ろして、車内の通路を進み出口へ向かう。
「いけね」
ジャケットのポケットに入れていたケータイを取り出すと、電池が切れていることに気づいた。ビジネスバッグからモバイルバッテリーを取り出してケーブル接続する。
ブィーンとバイブレーションが震えて、起動した。
車内通路で目の前を歩く先程のOLさんは二十代後半ってところか。身長155cm前後、黒髪は一つに束ねて、グレーのパンツスーツにパープルのタートルニットを合わせたコーデ。肩から下げたビジネスバッグとお土産の紙袋を持って、黒のパンプスはヒール低めの機動力仕様。
新幹線のドアが開くと、一斉にビジネスマンがホームに放たれる。次の目的地は改札出口。皆んなそこへ足早に向かう中、目の前のOLさんの足並みはというとゆっくりで、相変わらず僕の斜め前を歩いている。
「急がないんですね」
と声を掛けると、
「後ろの人の声掛け待ちでした」
いまなんて言った?そんな返しあるの?
「終電間に合うなら、少し飲みに行きますか?」
僕は勇気を振り絞ってダメ元で言ってみると、
「一杯二杯くらいなら全然OK」
こんな良い日は二度と訪れないかもしれない。疲れが一気に吹き飛んだ。
「じゃあじゃあ、改札出てすぐの所に美味しい店あるんで」
2人で改札を出た時、僕のケータイがブルッた。
ケータイをチラッとみると、
「そろそろこっち戻ってきた?近くにいるから駅まで迎えに行こうか?」
コシミチさんが車で迎えにくるつもりらしい。
少し前を歩くOLさん。一日仕事を終え漂うなんとも言えない色気。うなじが汗で湿っているのが見えてドキドキする。これ、飲みの後ワンチャンあるでしょというシチュエーション。男ならこれ行っとかないと。うわー。どうしようー。ケータイが再度震える。
「ご飯食べた後、軽く縛ってもいい?」
コシミチさん、やめてー。今そういうのじゃないのよ。
「こっちでいいですか?」
飲み屋がある方を確認して振り返ったOLさん。
かわえぇ。キレイ。笑顔が素敵。
「そうそう。この先もう少し歩くと赤い提灯が見えてくる」
僕がこのチャンスを逃すわけがない。
ケータイが鳴った。コシミチさんからの着信。
しつこい。今日は無理だって言ってやる。
「ごめん、ちょっと会社から電話」
とOLさんに断ってから電話に出た。
「なんで返信しないんだよ」
いきなりのお怒りモード。出鼻を挫かれた。
「申し訳ございません。さっきまでケータイの充電が切れていて」
「まあいいや。もう南口に着いてるから、さっさと出てきなさい」
「えっと、いやぁ、なんというか」
「あ?早くして。こっちは待ってるんだよ」
(僕は今から初めましてのOLさんとお食事に行く予定があるんですが、、、)
とは言えず、
「承知しました。今すぐに向かいます」
と言って電話を切ると、なにかを悟ったOLさんが、「お仕事頑張ってください」
とガッツポーズしてくれて、こんな良い出会い二度とないぞと耳打ちするもう1人の自分が僕に言ってみたけど、もはや僕はわたしになりかけていて、コシミチさんの元へ向かっていった。せめて連絡先聞いておけば良かったと涙を拭う。
「お疲れ。時間も時間だしこのままホテル行く?」
腕時計をみると22時半だった。まだ大半のお店はやってる。わたしはお腹すいたけど、ご飯食べないのかな。
僕はわたしになっていて、コシミチさんに意見出来ずにいる。
「はい。ホテルに連れて行ってください」
なんて言っている。本当はお腹すいているのに。
コシミチさんが来なければ今頃OLさんと楽しくご飯食べていたはずなのに。
「たまたま用事があって近くにいたんだよ」
嘘つき。わたしがこの時間に帰ってくる事知った上で、待っていたんでしょうとは言えない。
「わざわざありがとうございます」
右手だけで運転しながら、コシミチさんの左手がわたしの太ももを弄ってくる。
やがて股間に手を伸ばしてくると、強めに握りだした。
「いや」
「あ?」
怒気を含んだ威圧に怯え、されるがままになった。なんか最近、2人の関係性がギクシャクしている気がする。
コシミチさんの思いが強くなり過ぎているのか、わたしの気持ちが離れてきているのか、そのどちらともなのか、良くない感じが続いている。
コシミチさんの横顔をみると、目が血走っていてすごく怖いと思った。
そろそろ潮時なのかもしれないとふと思った矢先、信号待ちで車が停車するやいなや、コシミチさんがキスをしてきた。先ほどのOLさんからは決して発しないおじさんの匂い、味。ふっとスイッチが入った。わたしも積極的にキスをする。
「続きはホテルでな」
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