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バレた!?
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「そういやお前、こないだの金曜の夜、駅で見かけたぞ」
休憩時間、自販機の前で同僚のムラカミにそう言われてドキッとした瞬間、手元が揺れて淹れたて熱々のコーヒーが紙コップから飛び出して僕とムラカミの間に落ちて床で飛び散った。
「あっつ!」
「おいおい、何動揺してんだよ。仲良さそうに女の子と話してたろ」
「ごめん、ごめん」
と言いながらコーヒーで汚れた床をティッシュで拭う。幸いムラカミにはかからなかったが、僕の足首には飛沫が飛んできた。
「あの後どうしたんだよ」
そっちか。こいつ、どこからどこまで見ていたんだ。一生に一度あるかないかのチャンスを逃した僕の情けない姿を見たのか、みていないのか、どっちなんだい。
「新幹線の中で意気投合して、その後飲みに行ったんだよ」
「へーそうなんだ。そんな事あんだな」
「あれはラッキーだったなー」
「って嘘つけ。北口改札出たら、別方向に歩いて行ってたの見てたし」
「なんだ、そこまで見られていたのか。そういうお前はその時間にどこ行ってたんだよ」
見られたのはコシミチさんと一緒にいるところではないな。極力冷静を装っておこう。
「俺?俺のことはいいんだよ」
「どうせパチンコか風俗だろ。南口の方に何件かあるもんな」
「そうだわ。風俗行った帰りに北口のラーメン屋に行こうと駅内を縦断していたところで、お前らと出くわしたんだよ」
じゃあまず安心だな。コシミチさんと一緒のところは見られていない。
「千載一遇のチャンスを逃した俺を慰めてくれ」
コシミチさんとの逢引きを見られるという最大の危機は乗り越えたな。さて、そろそろ仕事に戻ろうか。
「そういえば、、、」
「え?」
まだ続きがあるのか?あのOLとは駅でお別れしてそれっきりよ。それは本当だもん。
「俺が風俗行く前からずっと南口側のターミナルに白い古いセダンが止まっていて、1時間後に戻ってきてもまだあったから、何してんだコイツって思って運転席をチラッと見たら、ほら、名前分かんねぇけどうちの会社の資材部に仕事出来なさそうなおっさんいるじゃん。五十絡みの白髪の背の高いおっさん」
コシミチさんの事か。
「えっと、、、なんとなくいたような、名前は、、、」
コシミチさんだけど言葉に出すわけにいかない。
「名前はどうでもいいや」
「まあ、そうだな。それって何時くらいの話?」
「お前らを見たのが22時過ぎだから、遡って21時か20時半、それぐらいだろ。誰かを待ってたのかな。なんかバスやタクシーとかが邪魔そうにしていたから、変な所に車停めてんなと思って運転手を見たのよ」
「へぇそうなんだ」
無関心を装うがどうしても平静でいられない。紙コップを持つ手の震え、なんとか止まってくれ。カップが熱いフリをして交互に持ち替えてみるが、全然震えは止まらなかった。
コシミチさんは僕を拾うために、1時間から2時間前に駅前にスタンバイしていたというのか。
背筋がゾッとした。やばい、またコーヒー溢しそう。
新幹線に乗る前に一度メールが来ていた。
「仕事終わった?」
「はい、今から新幹線に乗るところです」
とメールを打ちかけて、そういや車内で飲むビールを買うのを忘れていたと思い、売店に向かった。返事は後ですればいいやとケータイをジャケットのポケットにしまったまま、すっかり忘れていた。新幹線到着後にケータイの電池が無くなった事に気づいたが時すでに遅し。僕が帰ってくる時間は分からないから、偶然を装うために早めに近くまで来ていたということか。なんか怖くなってきた。
「さあ休憩は終わり」
さっさと仕事に戻ろう。やっぱりコシミチさんとは一度距離を取らないといけない時期かもしれない。
休憩時間、自販機の前で同僚のムラカミにそう言われてドキッとした瞬間、手元が揺れて淹れたて熱々のコーヒーが紙コップから飛び出して僕とムラカミの間に落ちて床で飛び散った。
「あっつ!」
「おいおい、何動揺してんだよ。仲良さそうに女の子と話してたろ」
「ごめん、ごめん」
と言いながらコーヒーで汚れた床をティッシュで拭う。幸いムラカミにはかからなかったが、僕の足首には飛沫が飛んできた。
「あの後どうしたんだよ」
そっちか。こいつ、どこからどこまで見ていたんだ。一生に一度あるかないかのチャンスを逃した僕の情けない姿を見たのか、みていないのか、どっちなんだい。
「新幹線の中で意気投合して、その後飲みに行ったんだよ」
「へーそうなんだ。そんな事あんだな」
「あれはラッキーだったなー」
「って嘘つけ。北口改札出たら、別方向に歩いて行ってたの見てたし」
「なんだ、そこまで見られていたのか。そういうお前はその時間にどこ行ってたんだよ」
見られたのはコシミチさんと一緒にいるところではないな。極力冷静を装っておこう。
「俺?俺のことはいいんだよ」
「どうせパチンコか風俗だろ。南口の方に何件かあるもんな」
「そうだわ。風俗行った帰りに北口のラーメン屋に行こうと駅内を縦断していたところで、お前らと出くわしたんだよ」
じゃあまず安心だな。コシミチさんと一緒のところは見られていない。
「千載一遇のチャンスを逃した俺を慰めてくれ」
コシミチさんとの逢引きを見られるという最大の危機は乗り越えたな。さて、そろそろ仕事に戻ろうか。
「そういえば、、、」
「え?」
まだ続きがあるのか?あのOLとは駅でお別れしてそれっきりよ。それは本当だもん。
「俺が風俗行く前からずっと南口側のターミナルに白い古いセダンが止まっていて、1時間後に戻ってきてもまだあったから、何してんだコイツって思って運転席をチラッと見たら、ほら、名前分かんねぇけどうちの会社の資材部に仕事出来なさそうなおっさんいるじゃん。五十絡みの白髪の背の高いおっさん」
コシミチさんの事か。
「えっと、、、なんとなくいたような、名前は、、、」
コシミチさんだけど言葉に出すわけにいかない。
「名前はどうでもいいや」
「まあ、そうだな。それって何時くらいの話?」
「お前らを見たのが22時過ぎだから、遡って21時か20時半、それぐらいだろ。誰かを待ってたのかな。なんかバスやタクシーとかが邪魔そうにしていたから、変な所に車停めてんなと思って運転手を見たのよ」
「へぇそうなんだ」
無関心を装うがどうしても平静でいられない。紙コップを持つ手の震え、なんとか止まってくれ。カップが熱いフリをして交互に持ち替えてみるが、全然震えは止まらなかった。
コシミチさんは僕を拾うために、1時間から2時間前に駅前にスタンバイしていたというのか。
背筋がゾッとした。やばい、またコーヒー溢しそう。
新幹線に乗る前に一度メールが来ていた。
「仕事終わった?」
「はい、今から新幹線に乗るところです」
とメールを打ちかけて、そういや車内で飲むビールを買うのを忘れていたと思い、売店に向かった。返事は後ですればいいやとケータイをジャケットのポケットにしまったまま、すっかり忘れていた。新幹線到着後にケータイの電池が無くなった事に気づいたが時すでに遅し。僕が帰ってくる時間は分からないから、偶然を装うために早めに近くまで来ていたということか。なんか怖くなってきた。
「さあ休憩は終わり」
さっさと仕事に戻ろう。やっぱりコシミチさんとは一度距離を取らないといけない時期かもしれない。
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