デンエンサンポ 〜女装子とおじさんの小冒険〜

錯乱テリア

文字の大きさ
12 / 16

バレた!?

しおりを挟む
「そういやお前、こないだの金曜の夜、駅で見かけたぞ」
 休憩時間、自販機の前で同僚のムラカミにそう言われてドキッとした瞬間、手元が揺れて淹れたて熱々のコーヒーが紙コップから飛び出して僕とムラカミの間に落ちて床で飛び散った。
「あっつ!」
「おいおい、何動揺してんだよ。仲良さそうに女の子と話してたろ」
「ごめん、ごめん」
 と言いながらコーヒーで汚れた床をティッシュで拭う。幸いムラカミにはかからなかったが、僕の足首には飛沫が飛んできた。

「あの後どうしたんだよ」
 そっちか。こいつ、どこからどこまで見ていたんだ。一生に一度あるかないかのチャンスを逃した僕の情けない姿を見たのか、みていないのか、どっちなんだい。

「新幹線の中で意気投合して、その後飲みに行ったんだよ」
「へーそうなんだ。そんな事あんだな」
「あれはラッキーだったなー」
「って嘘つけ。北口改札出たら、別方向に歩いて行ってたの見てたし」
「なんだ、そこまで見られていたのか。そういうお前はその時間にどこ行ってたんだよ」
 見られたのはコシミチさんと一緒にいるところではないな。極力冷静を装っておこう。

「俺?俺のことはいいんだよ」
「どうせパチンコか風俗だろ。南口の方に何件かあるもんな」
「そうだわ。風俗行った帰りに北口のラーメン屋に行こうと駅内を縦断していたところで、お前らと出くわしたんだよ」

 じゃあまず安心だな。コシミチさんと一緒のところは見られていない。
「千載一遇のチャンスを逃した俺を慰めてくれ」
コシミチさんとの逢引きを見られるという最大の危機は乗り越えたな。さて、そろそろ仕事に戻ろうか。

「そういえば、、、」
「え?」
 まだ続きがあるのか?あのOLとは駅でお別れしてそれっきりよ。それは本当だもん。

「俺が風俗行く前からずっと南口側のターミナルに白い古いセダンが止まっていて、1時間後に戻ってきてもまだあったから、何してんだコイツって思って運転席をチラッと見たら、ほら、名前分かんねぇけどうちの会社の資材部に仕事出来なさそうなおっさんいるじゃん。五十絡みの白髪の背の高いおっさん」
コシミチさんの事か。
「えっと、、、なんとなくいたような、名前は、、、」
コシミチさんだけど言葉に出すわけにいかない。
「名前はどうでもいいや」
「まあ、そうだな。それって何時くらいの話?」
「お前らを見たのが22時過ぎだから、遡って21時か20時半、それぐらいだろ。誰かを待ってたのかな。なんかバスやタクシーとかが邪魔そうにしていたから、変な所に車停めてんなと思って運転手を見たのよ」
「へぇそうなんだ」
 無関心を装うがどうしても平静でいられない。紙コップを持つ手の震え、なんとか止まってくれ。カップが熱いフリをして交互に持ち替えてみるが、全然震えは止まらなかった。

 コシミチさんは僕を拾うために、1時間から2時間前に駅前にスタンバイしていたというのか。
 背筋がゾッとした。やばい、またコーヒー溢しそう。

 新幹線に乗る前に一度メールが来ていた。
「仕事終わった?」
「はい、今から新幹線に乗るところです」
 とメールを打ちかけて、そういや車内で飲むビールを買うのを忘れていたと思い、売店に向かった。返事は後ですればいいやとケータイをジャケットのポケットにしまったまま、すっかり忘れていた。新幹線到着後にケータイの電池が無くなった事に気づいたが時すでに遅し。僕が帰ってくる時間は分からないから、偶然を装うために早めに近くまで来ていたということか。なんか怖くなってきた。

「さあ休憩は終わり」
さっさと仕事に戻ろう。やっぱりコシミチさんとは一度距離を取らないといけない時期かもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

処理中です...