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その後の話
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コシミチさんと無事にお別れした週末は久しぶりにゆっくりできたのも束の間、
翌週会社に出勤するととんでもない事件が起きていた。
社内メールに怪文書が撒かれていた。
件名は「気持ち悪い変態女装社員がいます」
メール本文には「社内に変態がいまーす。みんな見てあげてくださいー」
目線こそ入っているが、僕が女装して縛られている痴態の上に「淫乱女装子」とか、「肉便器」とか「緊縛奴隷」とか文字列が挿入された画像が添付されていて大騒ぎになっていた。
誰がやったかは明らかだ。見損なった。
と思いつつ、思い出の写真の数々にしばし見入ったが、背後から女子社員の鋭く冷めた視線を感じてハッとしてノートPCを閉じた。
僕は午後に人事部に呼び出された。
小太りで頭が禿げ上がった人事部長と、
やり手のキャリアウーマン風の課長を前にして僕は縮み上がっていた。これはめちゃくちゃ怒られるやつだ。きっとそうに違いない。
「これは君かな?」
「まあ、多分そうです、はい」
「多分?」
「目も隠れていますし、画像も鮮明ではないのではっきりとは言えませんが、自身もたまにこんな事をしたりしていたので、心当たりはありますので、否定できない部分はあります」
はぁとため息をつく課長。
「まあ多様性の時代なんで、プライベートは人それぞれ。ただ、なんというか」
といって課長の方は、部長に後はお任せしますと言って立ち上がった。
「シライシくん、私に任されてもねぇ」
「14時から会議なので失礼します」
人事部長は人当たりの良さそうな顔をしていて、
「困ったなぁ」
なんて言っていたが、シライシ課長が出て行ったのを確認するとガラッと目つきが鋭くなった。いよいよ怒鳴られるやつか?
持っていた万年筆で机を数回コツコツ叩いた。
「ところで、君はこういった事が好きなの?」
「どういった事ですか?」
「つまりその、あれだよ。女装して縛られてSMっぽい事をする事」
「まあ、そうなりますね。写真の感じの通りだとそう受け取られても」
再度机をコツコツ。
「そうなんだね。実を言うと私もこういうのは嫌いじゃないんだよ。シライシ君の前では言えないから、ごめんね」
両手を擦り合わせてごめんポーズをする。
「いや、いや。やめてください」
「今回こんな画像を撒き散らしたという事は恋愛のもつれの上の怨恨みたいな感じかな?」
「おそらく、、、」
「これを送った犯人は勿論、誰だか分かっている。そして、この人物に於いては、、、」
「於いては?」
「解雇だ」
人事部長が真面目な顔で首を切るジャスチャーをした。
「ただ君に関しては、話を聞く限り被害者という側面の方が大きい。風評被害は気になるところではあるが、君が望むなら雇用は継続。勿論お咎めなし」
ほっとした一方で、これからも何食わぬ顔でやっていけるだろうかとも思った。
「ありがとうございます。これからの事は一度考えてからまた相談させてください」
「分かった」
「では失礼します」
立ち上がる。
「ゴホン」
「え?まだ何か?」
「ゴホン、えっと、これは業務上の話ではなく、私的な話なのだが、、、」
「はい?」
「今回お相手とはお別れしたっぽい感じなので、できれば、いや失恋の傷も癒えていないだろうから、すぐに答えは出さなくても良いのだけれども」
「何ですか?」
「私の愛人にならないか」
本人的には最高に男前な顔をしているつもりなのだろう。
どうしても男に、しかも結構なおじさんにモテてしまう自分を呪う。
「その件も考えてからの回答でも良いでしょうか?」
ワイシャツにネクタイ姿だが、少し品を作って流し目をすると人事部長が目を輝かせた。
「勿論、次回でいいよ。じゃあ今日のところは以上としよう」
すぐに僕のところに寄ってきて肩を抱いて出口へ誘う。顔が近い。鼻息が荒い。息が臭い。加齢臭が強い。鼻毛が出ている。耳毛が生えている。脇も足も臭そう。
けど、こんなおじさんに責められると、頭真っ白になってアヘアヘなっちゃうわたしがいるんだよな。我ながらど変態。
翌週会社に出勤するととんでもない事件が起きていた。
社内メールに怪文書が撒かれていた。
件名は「気持ち悪い変態女装社員がいます」
メール本文には「社内に変態がいまーす。みんな見てあげてくださいー」
目線こそ入っているが、僕が女装して縛られている痴態の上に「淫乱女装子」とか、「肉便器」とか「緊縛奴隷」とか文字列が挿入された画像が添付されていて大騒ぎになっていた。
誰がやったかは明らかだ。見損なった。
と思いつつ、思い出の写真の数々にしばし見入ったが、背後から女子社員の鋭く冷めた視線を感じてハッとしてノートPCを閉じた。
僕は午後に人事部に呼び出された。
小太りで頭が禿げ上がった人事部長と、
やり手のキャリアウーマン風の課長を前にして僕は縮み上がっていた。これはめちゃくちゃ怒られるやつだ。きっとそうに違いない。
「これは君かな?」
「まあ、多分そうです、はい」
「多分?」
「目も隠れていますし、画像も鮮明ではないのではっきりとは言えませんが、自身もたまにこんな事をしたりしていたので、心当たりはありますので、否定できない部分はあります」
はぁとため息をつく課長。
「まあ多様性の時代なんで、プライベートは人それぞれ。ただ、なんというか」
といって課長の方は、部長に後はお任せしますと言って立ち上がった。
「シライシくん、私に任されてもねぇ」
「14時から会議なので失礼します」
人事部長は人当たりの良さそうな顔をしていて、
「困ったなぁ」
なんて言っていたが、シライシ課長が出て行ったのを確認するとガラッと目つきが鋭くなった。いよいよ怒鳴られるやつか?
持っていた万年筆で机を数回コツコツ叩いた。
「ところで、君はこういった事が好きなの?」
「どういった事ですか?」
「つまりその、あれだよ。女装して縛られてSMっぽい事をする事」
「まあ、そうなりますね。写真の感じの通りだとそう受け取られても」
再度机をコツコツ。
「そうなんだね。実を言うと私もこういうのは嫌いじゃないんだよ。シライシ君の前では言えないから、ごめんね」
両手を擦り合わせてごめんポーズをする。
「いや、いや。やめてください」
「今回こんな画像を撒き散らしたという事は恋愛のもつれの上の怨恨みたいな感じかな?」
「おそらく、、、」
「これを送った犯人は勿論、誰だか分かっている。そして、この人物に於いては、、、」
「於いては?」
「解雇だ」
人事部長が真面目な顔で首を切るジャスチャーをした。
「ただ君に関しては、話を聞く限り被害者という側面の方が大きい。風評被害は気になるところではあるが、君が望むなら雇用は継続。勿論お咎めなし」
ほっとした一方で、これからも何食わぬ顔でやっていけるだろうかとも思った。
「ありがとうございます。これからの事は一度考えてからまた相談させてください」
「分かった」
「では失礼します」
立ち上がる。
「ゴホン」
「え?まだ何か?」
「ゴホン、えっと、これは業務上の話ではなく、私的な話なのだが、、、」
「はい?」
「今回お相手とはお別れしたっぽい感じなので、できれば、いや失恋の傷も癒えていないだろうから、すぐに答えは出さなくても良いのだけれども」
「何ですか?」
「私の愛人にならないか」
本人的には最高に男前な顔をしているつもりなのだろう。
どうしても男に、しかも結構なおじさんにモテてしまう自分を呪う。
「その件も考えてからの回答でも良いでしょうか?」
ワイシャツにネクタイ姿だが、少し品を作って流し目をすると人事部長が目を輝かせた。
「勿論、次回でいいよ。じゃあ今日のところは以上としよう」
すぐに僕のところに寄ってきて肩を抱いて出口へ誘う。顔が近い。鼻息が荒い。息が臭い。加齢臭が強い。鼻毛が出ている。耳毛が生えている。脇も足も臭そう。
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