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奪われた王国
二十三話目 *前哨戦開始
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「王命?」
千歳は亜空魔のメッセージに記された謎のスキルを聞き返した。
【スキル『王命』は人種の王のみが所持するスキルです。
能力は国民に対して命令をした際に発動するスキルで、その命令を実行するための行動に能力向上等の付与がつきます。
また、侵略スキルに対し耐性があるため、王命発動により侵略領域で死んだ者の蘇生はこれからできなくなります】
「めちゃくちゃ良いスキルなのに。なんで最初から使わなかったんだろう」
敵の王は千歳がダンジョンマスターであることを知っているはずなのに、すぐさまダンジョンマスターに有効なスキルを使わなかったことを不思議に思った。
【自身のスキルの効果を知らなかったためと思われます】
「どういうこと?」
【この世界の住民は基本的に自身のスキルを見るためにはアーティファクトがなければ見ることができません】
「アーティファクト?」
【古代ダンジョンから見つかる。特殊な道具です】
「ふーん。...つまり王様はスキルを見るアーティファクトを持っていないのね」
【恐らく】
「そんな事は今はどうでもいいか。じゃあ、今から死んだら魂戻ってこないんだ」
【はい。ですが、現在はほぼ敵の掃討に成功しているのと、聖女と大神官の魔法の発動が間に合いましたので、即死以外は即時回復します】
「意外と早かったのね。大変みたいなこと言ってたのに。なら後は先輩達が王様を殺すのを待つだけか」
☆
敵の王がスキル『王命』を発動する少し前。千歳に迎え入れられた二人の先輩転移者は、王と王を守るようにして隊列を組むおよそ数千の軍隊を見据えていた。
「正直どこまで信用できると思った?」
「俺としてはあの帝国や、龍雅達と一緒にあれ以上いるよりは安全だと思う」
「どうして?」
「彼女たちはここに来たばかりの僕たちみたいな状況だ。いや、僕たちよりははるかに良い状況だけど。そして何より、強いリーダーとそれを支える大人達がいる」
「でもきっと帝国と戦争するよ。彼女たち」
「きっとな。だが、恵も見ただろ、あの人たちのチートっぷり。俺達が浮かれてたのが馬鹿らしいほどのチートだろ」
「たしかにそうね。でも正直どっちが勝つかわからないくらい帝国も今や強いわよ」
「たしかにそうだが、もう乗り掛かった舟だ。それにめちゃくちゃ旨いものが出てくる船だぜ。乗らないわけにはいかないだろう」
「それもそうね。甘いものなんて転移して最初の頃くらいしか食べた記憶にないし。もうあの頃の生活には戻りたくないしね」
天道真と天道恵は目の前の軍隊をただ見ながら会話していた。すると、後ろから話しかけられる。
「夫婦水入らずのところすまないが、準備ができたから始めろってさ」
「分かった。透。始めよう。そういえば、あの勇者くんはどうした?」
「さあな。透過の魔法をかけてやったら、どこかに行っちまった」
「そうか。あまり無茶をしないと良いが...。雹と愛も準備は出来てるのか?」
「ああ、出来てるよ」
「わかった。じゃあ、後でな恵」
「うん。王のところで合流ね」
そういうと、三人はバラバラの方向に移動し始めた。
☆
王と、水晶を見ている魔法使いがいた。
「現状はかなりの劣勢と見えます」
「生きている近衛は何人だ?」
「今感知できるのは、第一、第二、第三のみです」
「甘く見すぎたか?敵を」
「しかし、主力は国境に残して置かねばなりませんでしたし、まぁ、大丈夫でしょうオスカーがおりますから」
「あ奴さえいれば敵を殲滅してくれるか」
「ええ、できればもう一人『エレメント』のメンバーがいてほしかったですが」
「全く、女など産ませなければ良かった。このような事態を起こしよって」
「お気持ちお察しいたします。国王陛下」
そんな会話をしていると、魔法使いが驚いた様子を見せる。
「バカな!」
「どうした!?」
「陛下。第二が死にました」
「死んだだと!。あ奴は闇魔法の使い手、逃げはしても死にはしないだろう」
「ですが、確かに魔力が消えました」
「くそが!」
王が罵声を飛ばしたその時、王を守るようにして隊列を組んでいる軍隊の戦闘で巨大な音が響いた。
「奇襲だと!?。私の探知をどうやって!?」
「あなたが王様ですか?」
「ッ!?」
魔法使いが驚いたのも束の間今度はほんの数メートル手前に見たことのない少年が立っていた。
すぐさま魔法使いは王の前に出てその身を守ろうとする。
「何者だ?」
王が突如として現れた少年に語り掛ける。
「僕の名前は真道外行。この世界に呼ばれた勇者だよ」
「そうか、貴様が。どうだ...勇者というのなら王に使える気はないか?」
「僕は王でなく女神に仕えている」
「ダンジョンマスターのことか」
「ああ」
「仕方がない。ネルソンお前が相手をしてやれ」
「ご命令のままに」
国王近衛魔導士ネルソンと、もうひとりの勇者である真道外行との戦いが始まる。
千歳は亜空魔のメッセージに記された謎のスキルを聞き返した。
【スキル『王命』は人種の王のみが所持するスキルです。
能力は国民に対して命令をした際に発動するスキルで、その命令を実行するための行動に能力向上等の付与がつきます。
また、侵略スキルに対し耐性があるため、王命発動により侵略領域で死んだ者の蘇生はこれからできなくなります】
「めちゃくちゃ良いスキルなのに。なんで最初から使わなかったんだろう」
敵の王は千歳がダンジョンマスターであることを知っているはずなのに、すぐさまダンジョンマスターに有効なスキルを使わなかったことを不思議に思った。
【自身のスキルの効果を知らなかったためと思われます】
「どういうこと?」
【この世界の住民は基本的に自身のスキルを見るためにはアーティファクトがなければ見ることができません】
「アーティファクト?」
【古代ダンジョンから見つかる。特殊な道具です】
「ふーん。...つまり王様はスキルを見るアーティファクトを持っていないのね」
【恐らく】
「そんな事は今はどうでもいいか。じゃあ、今から死んだら魂戻ってこないんだ」
【はい。ですが、現在はほぼ敵の掃討に成功しているのと、聖女と大神官の魔法の発動が間に合いましたので、即死以外は即時回復します】
「意外と早かったのね。大変みたいなこと言ってたのに。なら後は先輩達が王様を殺すのを待つだけか」
☆
敵の王がスキル『王命』を発動する少し前。千歳に迎え入れられた二人の先輩転移者は、王と王を守るようにして隊列を組むおよそ数千の軍隊を見据えていた。
「正直どこまで信用できると思った?」
「俺としてはあの帝国や、龍雅達と一緒にあれ以上いるよりは安全だと思う」
「どうして?」
「彼女たちはここに来たばかりの僕たちみたいな状況だ。いや、僕たちよりははるかに良い状況だけど。そして何より、強いリーダーとそれを支える大人達がいる」
「でもきっと帝国と戦争するよ。彼女たち」
「きっとな。だが、恵も見ただろ、あの人たちのチートっぷり。俺達が浮かれてたのが馬鹿らしいほどのチートだろ」
「たしかにそうね。でも正直どっちが勝つかわからないくらい帝国も今や強いわよ」
「たしかにそうだが、もう乗り掛かった舟だ。それにめちゃくちゃ旨いものが出てくる船だぜ。乗らないわけにはいかないだろう」
「それもそうね。甘いものなんて転移して最初の頃くらいしか食べた記憶にないし。もうあの頃の生活には戻りたくないしね」
天道真と天道恵は目の前の軍隊をただ見ながら会話していた。すると、後ろから話しかけられる。
「夫婦水入らずのところすまないが、準備ができたから始めろってさ」
「分かった。透。始めよう。そういえば、あの勇者くんはどうした?」
「さあな。透過の魔法をかけてやったら、どこかに行っちまった」
「そうか。あまり無茶をしないと良いが...。雹と愛も準備は出来てるのか?」
「ああ、出来てるよ」
「わかった。じゃあ、後でな恵」
「うん。王のところで合流ね」
そういうと、三人はバラバラの方向に移動し始めた。
☆
王と、水晶を見ている魔法使いがいた。
「現状はかなりの劣勢と見えます」
「生きている近衛は何人だ?」
「今感知できるのは、第一、第二、第三のみです」
「甘く見すぎたか?敵を」
「しかし、主力は国境に残して置かねばなりませんでしたし、まぁ、大丈夫でしょうオスカーがおりますから」
「あ奴さえいれば敵を殲滅してくれるか」
「ええ、できればもう一人『エレメント』のメンバーがいてほしかったですが」
「全く、女など産ませなければ良かった。このような事態を起こしよって」
「お気持ちお察しいたします。国王陛下」
そんな会話をしていると、魔法使いが驚いた様子を見せる。
「バカな!」
「どうした!?」
「陛下。第二が死にました」
「死んだだと!。あ奴は闇魔法の使い手、逃げはしても死にはしないだろう」
「ですが、確かに魔力が消えました」
「くそが!」
王が罵声を飛ばしたその時、王を守るようにして隊列を組んでいる軍隊の戦闘で巨大な音が響いた。
「奇襲だと!?。私の探知をどうやって!?」
「あなたが王様ですか?」
「ッ!?」
魔法使いが驚いたのも束の間今度はほんの数メートル手前に見たことのない少年が立っていた。
すぐさま魔法使いは王の前に出てその身を守ろうとする。
「何者だ?」
王が突如として現れた少年に語り掛ける。
「僕の名前は真道外行。この世界に呼ばれた勇者だよ」
「そうか、貴様が。どうだ...勇者というのなら王に使える気はないか?」
「僕は王でなく女神に仕えている」
「ダンジョンマスターのことか」
「ああ」
「仕方がない。ネルソンお前が相手をしてやれ」
「ご命令のままに」
国王近衛魔導士ネルソンと、もうひとりの勇者である真道外行との戦いが始まる。
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