異世界真百鬼夜行物語

楠本リュート

文字の大きさ
2 / 7
第一章

第一話 奴隷少女

しおりを挟む
「ふあぁ~昨日も派手にやったな~」

 こちらの世界に転生してきてから150年が経過した。こちらに来てから30年程は仲間探しの旅をした後、残りの年月は今の山奥生活を満喫していた。特別何かある訳ではないがそれでいて何でもあるこの山奥生活は仲間がいるだけで飽きる事無く、中々に楽しい日々を送っている。
 仲間と言いつつも実際は家族みたいなものなので、言うなれば龍崎組と言ったところだろうか。

 ここで俺はふと気づいてしまう。

 ……あれ?俺、人間らしい生活全然してなくね?、と。
 確かに山奥生活は楽しい。皆で昼寝をした時なんかは最高に気分がいい。
 それに人間は転生前から苦手だ、上手く馴染めない。
 でもこれでいいかと言われたら、正直微妙なところだ。
 この世界の人間の生活にも興味あるし一度体験してみるのも一興かもしれない。

「あー!キョウちゃんもう起きてるー!おはよー!」

 元気な声の主の方を見てみると、そこには一人の少女 (?)が立って……いや、浮いていた。

 彼女はウォル・マナフ。筆頭天使といわれる最上位天使の一人だ。
 キョウヤの召喚術で呼ばれたものの一人で、キョウヤからはマナと呼ばれている。

 先程まで考えていた事を頭の隅に置いといてキョウヤはマナへ返事をする。

「あぁ、マナ。おはよう」

 そう返事をすると嬉しそうな顔をしながら俺の後ろに回り、首に腕を回すようにして抱きついてくる。彼女の顔がすぐ横に来ると目が合い彼女はニコッと笑う。
 彼女はこうするのがお気に入りなのか風呂と寝る時以外はこの状態でいることが殆どだ。

 キョウヤはマナと共にもう用意されているであろう朝食に胸を踊らせながら部屋を出て行くとすぐそこに一人の人間の少女がいた。

「ご主人様、おはようございます」
「ああ、おはよう」

 ……って、うん?待て待ておかしいぞ。何で人間がいる?
 俺の家族には確かに沢山の種族がいる。だが、人間は一人もいなかったはずだ。
 おかしいと思い少女を改めて見直す。
 首輪をつけているってことは奴隷か?
 でも俺には奴隷を購入した記憶はない。というか購入する金もない。
 だけど首輪以外に目立って特徴がある訳でもない。
 わからないなら聞くのが一番か。

「なあマナ、何で人間がいるんだ?」
「あら?キョウちゃん忘れちゃった?」

 俺が忘れているとは思わなかったのか人間少女はショックを受けた表情をしている。
 いや、ほんとゴメン……

「この子は昨日キョウちゃんが拾って来た子だよー」

 !?
 え?拾った?ひ・ろ・っ・た?人間を?俺が?そんな馬鹿な!

 でも昨日か、昨日という事は王都……

 ……おや?おやや?そういやそんな事があったような?



 ***



 午前二時。
 流石の王都も真っ暗闇に包まれていた。

「はは、相変わらず王都は凄いな、他の街と規模が全然違う。闇夜の中に華やかさがある。」

 王都に対して感心していると家族の一人に話しかけられる。

「マスター、そこの路地に入った先で生命反応を感知致しました。怪我をしているかもしれません、いかがなさいますか」
「ふむ、あの細さだと全員は無理だろうから数人で様子を見てこよう。適当についてきてくれ」

 そう言って一人先に路地へ進んでいくと、一番近くにいた三人がついてきた。
 少し進むと例の生命反応とやらであろう影が見えた。
 更に近づいて見えてきたのは首輪をつけた人間の女の子だった。
 ボロボロの服を着て膝を抱えるようにして丸くなっており、所々に傷も見える。

 ふむ、首輪をつけている所からも明らかなように、この子は奴隷なのであろう。
 ということは何処かから逃げ出してきたのか、または捨てられたのか。
 流石にこのまま放置という訳にもいかない。

「やあ、お嬢さん。こんな夜更けにそんな所丸まっていたら風邪ひいちゃうよ」
「ひっ……い、いや……近づか……ない……で……」

 完全に顔が怯えきっているな。恐らく逃げ出してきた口なのだろう。

「大丈夫だ、君に危害を加えるどころか何処かへ突き出す気もない。」

 そう言うと怯えがほんの少し緩和した気がするがそこまで信じているようには見えない。
 今まで培ってけきた恐怖が言葉の一つや二つで拭えるとは思えない。
 けどこのままずっと顔色を伺っていく訳にもいくまい。
 ここは言いたい事だけ言わせて貰おう。

「君の様子を見てある程度状況を察することはできる。そこで聞きたいのだが、行く当てはあるのか?」

 少女は少々困惑の混ざった怯えた顔をしながらで首を振った。

「ふむ、ならば丁度良い。我が百鬼夜行に加わる気はないか?俺と家族になろう」

 少女は困惑していた。突然言われた言葉に対しての理解が追いついていないのだ。
 そんなことを知ってか知らずかキョウヤは手を差し伸べる。
 不意に差し出された手を少女は反射的に取ってしまう。
 少女も自分が手を取ったことに驚いた様子だったが今までずっと気を張っていたのだろう、手を取った瞬間に気失ってしまった。
 気を失った少女を担いで皆の元へ戻り、そのまま家へ帰った。
 それから皆へ少女が新しい家族になる予定だと伝え解散した。



 ***



 思い出した!!
 彼女は昨日の姿とは打って変わって元気そうだ。
 彼女が元気を取り戻すまではそれなりの日数がかかるかと思っていたが、どうやら杞憂に終わったようだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...