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仕事を見つけること
3
しおりを挟む数分後、2人は並んでキッチンに立つ。
時雨は濡れた髪を、首にかけた軽くタオルでガシガシと拭く。
…なんでこの人、あんなに髪がツヤツヤなのかしら。
「花子お待たせ、やろう。」
「かしこまりました。」
時雨はエプロンを2つ取り出すと、1つ花子に手渡した。
「蓮音様。」
「どうしたの、太郎?」
太郎は真剣そうな表情で問いかけてくる。
「慣れない事が続いております、平気ですか?」
「ええ。」
そう返事をすると、太郎は目線を逸らした。
「…蓮音様程の高貴な方にこのような所で過ごさせるなど、」
「太郎。」
「ですが!」
「仕方ないのよ。」
これは神様の悪戯。
きっといつかは醒める、悪い夢なのだから。
あちこち痛み、傷ついた体を見る。
そうでも思わないと、心が折れそうだった。
「お昼できましたよー!」
蓮音の楽しそうな声がして、私と太郎はキッチンに急いだ。
ーー
「…これは。」
「祖国の料理なんだって?」
時雨はそう言って、私達の前に皿を置く。
今までは私達3人と時雨だったが、今日は花子が時雨側に座った。
「なんか、マカロニみたいな食べ物だね。」
「ピェンっていいます。」
「アホみたいな名前。」
時雨は花子にお礼を言うと、頂きますと言って手を合わせた。
私は目の前のそれを見つめる。
…白いスープの中に浮かぶ、懐かしい見た目。
ここに来てたった3日なのに、こんなにも懐かしい。
慣れ親しんだその味は、心から私たちを温めてくれた。
ーー
午後になると秦さんが帰って来た。
「時雨、広瀬さんいらっしゃる。」
「分かった。」
時雨はパタパタと着替えて戻ってきた。
「そう言えば花子、紅茶淹れられるんだっけ。」
「は、はい!」
花子は突然呼ばれて姿勢を正す。
時雨はニコッと笑うと、茶葉やポットの場所を教える。
「申し訳ないんだけど、2人来客があるから。」
「承知いたしました。」
花子は見慣れた綺麗な礼をして見せた。
「さすが、プロは違うね。」
「お言葉、恐れ入りますわ。」
間もなく本堂の方のインターホンが鳴って、時雨がはーいと返事をする。
「頼んだよ。」
時雨はパタパタと本堂へ出ていった。
ーー
花子はお茶の葉が入った缶を開けると、軽く香りを嗅いだ。
「文句なくいい茶葉ですね…。」
「へぇ、時雨って貴族なのかしら。」
「わかりませんね。」
花子はうーんと唸りながら、お茶を淹れ始めた。
慣れない道具ながらも、サクサクと用意を進める。
間もなく、少し酸味のあるお茶が入った。
それを花子はお盆に乗せる。
「さて、お出しして参りますね。」
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