羅刹伝 雪華

こうた

文字の大きさ
211 / 313
第二十八章-新たな副隊長-

第187話「任命」

しおりを挟む
「それでは、引き受けていただけるということですね?」
 聖羅学院、一年生の教室。
 放課後に、惟月は、真哉と千尋と向かい合っていた。
 優月たちも話を聞いている。
「はい。俺の剣が、この世界を守るため、役立つというのでしたら」
 真哉は、はっきりとうなずいた。
 闇黒剣を会得し、準霊極となった彼は、事前に宣告していた通り副隊長の任を受けることを決めた。
「ただ一点、ご了承いただきたいことが」
「なんでしょう?」
「世界に危機が迫った時、怜唯様にも危険があれば、俺は怜唯様を守ることを最優先とします。それでもよろしければ」
 真哉らしい申し出だ。
 惟月もそれを否定しない。
「問題ありません。半端な者が全力で任に当たるより、あなたが怜唯さんを守る傍ら、騎士としての任務もこなしてくださる方が、結果的に世界のためになるはずです」
 これで草薙真哉が、新たな第一霊隊副隊長に任ぜられた。
「如月を最優先か。どこかの誰かにも見習わせたい一途さだな」
 机に頬杖を突きながら惟月と真哉のやり取りを見ていた涼太が、皮肉を込めて言う。
「わ、わたしも、龍次さんと涼太を守るのが最優先だよ……?」
 守るという割に頼りない口調で言い訳をする優月。
「『最も』は一つしかねえんだよ。日本語分かってるか?」
「同率一位的な……?」
 自分でも言っていて無理があるとは思う。愛情がピッタリ同じなどということは、まずありえない。
「オレも真哉くんがやるならって宣言しちゃったからな。となるとオレは第三か?」
 千尋も約束を違えるつもりはないらしく、所属する隊の確認をする。
「はい。重光しげみつ隊長の補佐役ということですね」
「オレの場合、冗談抜きにバイト感覚でやるかもしれないけど、ホントにいいか? 惟月サマ」
「重光さんは、少々堅苦しくものを考える方ですが、隊全体の雰囲気作りとしては、かえって都合がいいのではないでしょうか」
 千尋は、敬称こそつけているものの、惟月に敬語を使わないようだ。
 惟月と怜唯に徹底して敬意を払う真哉とは対照的といえる。
 この二人が同時に副隊長になるというのだから不思議なものだ。
「俺の上官は惟月様の兄君でいらっしゃる久遠くおん様ですね。霊極第一柱だいいっちゅうに俺ごときの力がどれだけ必要とされるか分かりませんが、気を引き締めて補佐を務めます」
 タイプは真逆で、恋敵でもある真哉と千尋が一度もケンカをしていないのは、どちらも人間の多様性を認めているからだろうか。
 沙菜や英利に対して常にケンカ腰の瑠璃るりなどは、まさしく見習うべき器の大きさだ。
(そういえば、怜唯さんって惟月さんのことが好きなのかな? なんとなくそんな感じがするけど)
 自分への好意には鈍感な優月だが、この手の勘は悪くない。
 怜唯の惟月を見る目は、おそらく恋する乙女のものだ。
(だとしたら、真哉さんも千尋さんも、あきらめてるってことか……)
 勝ち目のない相手がいるのに、勝てない者同士争っても意味がないという風に見えなくもない。あくまで勘に過ぎないが。
 真哉は従者、千尋は幼馴染という形で怜唯との関係性を落ち着かせているのだと想像する。
「なんだ、天堂。俺の顔になにかついてるか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
 余計なことを考えていたら、真哉ににらまれた。
「優月ちゃんだけじゃなくて、ちーちゃんと真哉くんも騎士団に入るんだね。お姉ちゃん弱いから助けてあげてね」
 実の姉にだけ妙に遠慮がないのが穂高。
 穂高は穂高で、惟月に気があるようだったので、このクラスにはいくつかの恋が流れている。
(惟月さんと怜唯さんは大丈夫だとして、他の振られる人たちはどうなるのかな……)
 まさか惟月や怜唯は、優月のように二股をかけたりはしまい。
 穂高と千尋は、本当に幼馴染のようだし、真哉のことが好きな女子もたくさんいそうだ。
 自分の恋の話になると恐縮するハメになる優月だが、他人の恋の行方については、少し楽しみにしているのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~

はぎわら歓
恋愛
 国家占い師である胡晶鈴は、この中華・曹王朝の王となる曹隆明と結ばれる。子を宿した晶鈴は占術の能力を失い都を去ることになった。  国境付近の町で異民族の若い陶工夫婦と知り合う。同じく母になる朱京湖とは、気が合い親友となった。  友人になった夫婦と穏やかな生活を送るはずだったが、事情のある朱京湖と間違えられ、晶鈴は異国へと連れ去られてしまった。京湖と家族の身を案じ、晶鈴はそのまま身代わりとなる。  朱彰浩と京湖は、晶鈴の友人である、陸慶明に助けを求めるべく都へ行く。晶鈴の行方はずっと掴めないままではあるが、朱家は穏やかな生活を営むことができた。  12年たち、晶鈴の娘、星羅は才覚を現し始める。それと同時に、双子のように育った兄・朱京樹、胡晶鈴との恋に破れた医局長・陸慶明とその息子・陸明樹、そして実の娘と知らない王・曹隆明が星羅に魅了されていく。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...