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第二十八章-新たな副隊長-
第187話「任命」
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「それでは、引き受けていただけるということですね?」
聖羅学院、一年生の教室。
放課後に、惟月は、真哉と千尋と向かい合っていた。
優月たちも話を聞いている。
「はい。俺の剣が、この世界を守るため、役立つというのでしたら」
真哉は、はっきりとうなずいた。
闇黒剣を会得し、準霊極となった彼は、事前に宣告していた通り副隊長の任を受けることを決めた。
「ただ一点、ご了承いただきたいことが」
「なんでしょう?」
「世界に危機が迫った時、怜唯様にも危険があれば、俺は怜唯様を守ることを最優先とします。それでもよろしければ」
真哉らしい申し出だ。
惟月もそれを否定しない。
「問題ありません。半端な者が全力で任に当たるより、あなたが怜唯さんを守る傍ら、騎士としての任務もこなしてくださる方が、結果的に世界のためになるはずです」
これで草薙真哉が、新たな第一霊隊副隊長に任ぜられた。
「如月を最優先か。どこかの誰かにも見習わせたい一途さだな」
机に頬杖を突きながら惟月と真哉のやり取りを見ていた涼太が、皮肉を込めて言う。
「わ、わたしも、龍次さんと涼太を守るのが最優先だよ……?」
守るという割に頼りない口調で言い訳をする優月。
「『最も』は一つしかねえんだよ。日本語分かってるか?」
「同率一位的な……?」
自分でも言っていて無理があるとは思う。愛情がピッタリ同じなどということは、まずありえない。
「オレも真哉くんがやるならって宣言しちゃったからな。となるとオレは第三か?」
千尋も約束を違えるつもりはないらしく、所属する隊の確認をする。
「はい。重光隊長の補佐役ということですね」
「オレの場合、冗談抜きにバイト感覚でやるかもしれないけど、ホントにいいか? 惟月サマ」
「重光さんは、少々堅苦しくものを考える方ですが、隊全体の雰囲気作りとしては、かえって都合がいいのではないでしょうか」
千尋は、敬称こそつけているものの、惟月に敬語を使わないようだ。
惟月と怜唯に徹底して敬意を払う真哉とは対照的といえる。
この二人が同時に副隊長になるというのだから不思議なものだ。
「俺の上官は惟月様の兄君でいらっしゃる久遠様ですね。霊極第一柱に俺ごときの力がどれだけ必要とされるか分かりませんが、気を引き締めて補佐を務めます」
タイプは真逆で、恋敵でもある真哉と千尋が一度もケンカをしていないのは、どちらも人間の多様性を認めているからだろうか。
沙菜や英利に対して常にケンカ腰の瑠璃などは、まさしく見習うべき器の大きさだ。
(そういえば、怜唯さんって惟月さんのことが好きなのかな? なんとなくそんな感じがするけど)
自分への好意には鈍感な優月だが、この手の勘は悪くない。
怜唯の惟月を見る目は、おそらく恋する乙女のものだ。
(だとしたら、真哉さんも千尋さんも、あきらめてるってことか……)
勝ち目のない相手がいるのに、勝てない者同士争っても意味がないという風に見えなくもない。あくまで勘に過ぎないが。
真哉は従者、千尋は幼馴染という形で怜唯との関係性を落ち着かせているのだと想像する。
「なんだ、天堂。俺の顔になにかついてるか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
余計なことを考えていたら、真哉ににらまれた。
「優月ちゃんだけじゃなくて、ちーちゃんと真哉くんも騎士団に入るんだね。お姉ちゃん弱いから助けてあげてね」
実の姉にだけ妙に遠慮がないのが穂高。
穂高は穂高で、惟月に気があるようだったので、このクラスにはいくつかの恋が流れている。
(惟月さんと怜唯さんは大丈夫だとして、他の振られる人たちはどうなるのかな……)
まさか惟月や怜唯は、優月のように二股をかけたりはしまい。
穂高と千尋は、本当に幼馴染のようだし、真哉のことが好きな女子もたくさんいそうだ。
自分の恋の話になると恐縮するハメになる優月だが、他人の恋の行方については、少し楽しみにしているのだった。
聖羅学院、一年生の教室。
放課後に、惟月は、真哉と千尋と向かい合っていた。
優月たちも話を聞いている。
「はい。俺の剣が、この世界を守るため、役立つというのでしたら」
真哉は、はっきりとうなずいた。
闇黒剣を会得し、準霊極となった彼は、事前に宣告していた通り副隊長の任を受けることを決めた。
「ただ一点、ご了承いただきたいことが」
「なんでしょう?」
「世界に危機が迫った時、怜唯様にも危険があれば、俺は怜唯様を守ることを最優先とします。それでもよろしければ」
真哉らしい申し出だ。
惟月もそれを否定しない。
「問題ありません。半端な者が全力で任に当たるより、あなたが怜唯さんを守る傍ら、騎士としての任務もこなしてくださる方が、結果的に世界のためになるはずです」
これで草薙真哉が、新たな第一霊隊副隊長に任ぜられた。
「如月を最優先か。どこかの誰かにも見習わせたい一途さだな」
机に頬杖を突きながら惟月と真哉のやり取りを見ていた涼太が、皮肉を込めて言う。
「わ、わたしも、龍次さんと涼太を守るのが最優先だよ……?」
守るという割に頼りない口調で言い訳をする優月。
「『最も』は一つしかねえんだよ。日本語分かってるか?」
「同率一位的な……?」
自分でも言っていて無理があるとは思う。愛情がピッタリ同じなどということは、まずありえない。
「オレも真哉くんがやるならって宣言しちゃったからな。となるとオレは第三か?」
千尋も約束を違えるつもりはないらしく、所属する隊の確認をする。
「はい。重光隊長の補佐役ということですね」
「オレの場合、冗談抜きにバイト感覚でやるかもしれないけど、ホントにいいか? 惟月サマ」
「重光さんは、少々堅苦しくものを考える方ですが、隊全体の雰囲気作りとしては、かえって都合がいいのではないでしょうか」
千尋は、敬称こそつけているものの、惟月に敬語を使わないようだ。
惟月と怜唯に徹底して敬意を払う真哉とは対照的といえる。
この二人が同時に副隊長になるというのだから不思議なものだ。
「俺の上官は惟月様の兄君でいらっしゃる久遠様ですね。霊極第一柱に俺ごときの力がどれだけ必要とされるか分かりませんが、気を引き締めて補佐を務めます」
タイプは真逆で、恋敵でもある真哉と千尋が一度もケンカをしていないのは、どちらも人間の多様性を認めているからだろうか。
沙菜や英利に対して常にケンカ腰の瑠璃などは、まさしく見習うべき器の大きさだ。
(そういえば、怜唯さんって惟月さんのことが好きなのかな? なんとなくそんな感じがするけど)
自分への好意には鈍感な優月だが、この手の勘は悪くない。
怜唯の惟月を見る目は、おそらく恋する乙女のものだ。
(だとしたら、真哉さんも千尋さんも、あきらめてるってことか……)
勝ち目のない相手がいるのに、勝てない者同士争っても意味がないという風に見えなくもない。あくまで勘に過ぎないが。
真哉は従者、千尋は幼馴染という形で怜唯との関係性を落ち着かせているのだと想像する。
「なんだ、天堂。俺の顔になにかついてるか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
余計なことを考えていたら、真哉ににらまれた。
「優月ちゃんだけじゃなくて、ちーちゃんと真哉くんも騎士団に入るんだね。お姉ちゃん弱いから助けてあげてね」
実の姉にだけ妙に遠慮がないのが穂高。
穂高は穂高で、惟月に気があるようだったので、このクラスにはいくつかの恋が流れている。
(惟月さんと怜唯さんは大丈夫だとして、他の振られる人たちはどうなるのかな……)
まさか惟月や怜唯は、優月のように二股をかけたりはしまい。
穂高と千尋は、本当に幼馴染のようだし、真哉のことが好きな女子もたくさんいそうだ。
自分の恋の話になると恐縮するハメになる優月だが、他人の恋の行方については、少し楽しみにしているのだった。
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