ドSな幼馴染の分かりにくい愛情表現

めるてぃ

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【1話】 二人の関係

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私は唯一苦手な人がいる。

名前は佐川快人。家が近くな事もあり、私達は幼馴染だった。小さい頃は仲が良かった…と思う。

小学生に上がって私と快人の差は、勉強でも運動でも、どんどん広がっていった。そのせいか、いつの間に快人は人気者になり私と過ごす時間は減っていった。

…それだけなら良かった。

その頃から、快人は私の何が気に食わないのか私をイジめてくるようになった。最初はちょっとした嫌がらせだったけど段々エスカレートしていった。一番酷かったのは小6の頃。私は好きな人がいて…その事がバレたのだった。

─────

「な、なんで分かるの…!?」

「お前のそのニヤニヤした面、分かりやすいんだよ」

「見ているだけで吐き気がする」

だったら見なければいいじゃん…!とは言えなかった。
俯きながら黙っていると、盛大な溜め息を漏らされた。

「イライラするし、秘密、バラしちゃおうか?」

「だ、だめ…!」

もしバレたら快人は顔が広いし人望も厚いからすぐに噂が広まっちゃう!そうしたら、好きな人にもバレちゃう…。そんなの、耐えられない。

「いつからお前が俺に命令出来る立場になったわけ?」

本当にイライラしてるみたい。流石にこれ以上怒らせたらどうなるか大体予想はつく。有言実行する快人の事だから。もう、ここは誠心誠意謝るしかない…!

「ごめんなさい…だから、秘密は…」

「そうだな…どうしてもって言うなら俺の言うことを聞くって条件で黙っててやるよ」

「ほ、本当!?」

「ハッ…」

意地悪な笑みを浮かべる。良くない事が起こる時は決まってそう笑う。

「じゃあ、俺の奴隷になれ」

「ど、れい…?」

知識が乏しい私には言葉な意味が分からなかった。

「お前には分かんないか、バカだし。つまり、俺の言う事には従え、だ。期限はない」

「な、そんなの…!」

ずっと言う事聞けって…!?

「守れねぇなら…分かるな?」

「あ…!」

ずい、と圧をかけてくる。私の弱みはこうも簡単に握られてしまったのであった。

─────
あれから私はいいように使われてきた。でもある日、お母さんが言った。

「明日、快人君、転校するんですって。何か聞いた?」

と、何も言わずに転校していったのだ。あいつならそう言う事言いそうなのに。

でもこれで、中学では会わなくてすむ!あの地獄のような日々から開放されたのだ。

だからといって、中学校時代で青春出来た訳ではなかった。
小学校から持ち上がりの子が多く、特に男子に恐怖感を抱いている私には到底付き合いもなかった。


そんな暗黒の小、中学校を過ごしてきた私は、少し遠い、市内の高校に通う事にした。そこは電車で10分で着く場所。知り合いもいないし大丈夫!

入学式を終え、クラスの席へと座る。私の席は窓側だった。こういう時に岬(みさき)で良かったなと思う。
すると隣の人がもう来ていたようだ。男子が隣って分かってたけどやっぱり緊張する。苦手意識を全面に出してしまうから。それもこれもあいつのせいなんだけど…この人に悪気はないんだし、なるべく普通に接しよう。
その人は、私に気付いたのか挨拶をしてくる。

「初めまして、俺は宮原龍、よろしくね」

チラッと横目で見ると、宮原君はとても整った顔立ちだった。
ふわふわとしたミルクティー色の髪と少し垂れた目。

「わ、私は岬咲です、よろしく…!」

龍って凄い名前だなぁ…何だか似合わないような、などと考えていると

「おい」

頭上から声が聞こえてきた。大袈裟と思われるくらいビクンと跳ねる。この声の特徴には覚えがありすぎる。私に暗黒の学校生活を送らせた張本人。でもなんで…
ぐるぐると考えてもまとまらない。

「お前、咲だろ。俺を無視するとか本気?」

「!!」

恐る恐る振り返ると、まさに快人だった。声は少し低くなり、あの頃に比べると身長も高い。鼻筋は通っているしやっぱり顔は綺麗。でも私は嫌い!

「俺の事覚えてるよね?」

ツー…と、私の顎を人差し指でなぞる。
声が聞こえてないのか、宮原君はキョトンとした顔で見ている。

「覚えてる…」

「ふーん」

心なしか、視線が宮原君の方に向いてる気がするけど…気のせい?とにかくあっちに行って~!!


放課後、私は憂鬱になりながら家に帰った。またこっちに来るなんて聞いてないよ…!本当に嫌な思い出しかない。ブス、バカは日常茶飯事だけど、仲間外しだったり特に弱みを握られるのが嫌だった。高校でもなんて…

「ただいま~…」

『「おかえり」』

いつものようにお母さんとお父さんが出迎えてくれる、はずだった。なのに、どうして

「どうして快人がいるの…!?」

私に気付くなり、何か含みのある笑みを見せる快人。

「あ、そうよ。快人君、また近くに住む事になったの」

「一人暮らしみたいだから、今から手伝いとかしてきな」

「むっ、無理…!」

頭が追いつかない。近くにって…しかも一人暮らし?そんなの出来るんなら手伝いなんていらないじゃない!

「だって…この…むっ!?」

私の口を手で塞ぐ快人。苦しい…

「ありがとうございます。ではお願いしようかな。ね?」

両親やクラスメイトの前では相変わらずの猫被り。仕方なく、私は手伝いに行く事になった。

「なんで、帰ってきたの…?」

しかも同じ学校で。それ以上はなんだか怖くて聞けなかった。

「なんで…ね。お前面倒くせーな。理由とかいる?」

「え?その…」

俯く事しか出来ない。本当、とっさに言い返せないのは悪い癖だ。昔から引っ込み思案な性格なせいだと思う。

「………だって、気になったから…」

「気になる?へぇ、お前が?ビクビク震えてるくせに」

怖い。それは仕方ない。だって今ですら見る事も怖いんだもん。何を言われるか、されるか身構える。

「…荷物持って。早く来い」

ドサッと落として私に荷物を持たせる快人。重っ…どれだけ入ってるの!?快人が持っているのは軽い荷物なのかそそくさと家の中に入って行く。とても広く、入ってすぐリビングルームに繋がっていた。

「うわ、広い…お邪魔します。」

確かに私の家の近くだったけどこんなに広い家があったんだ。

「お前さ、このあと予定ある?」

「な、ない…けど?」

「じゃあ来い」

「うん…」

どうしたんだろう、急に。言われるがまま外に出たけど…
私を待たずにズンズン先へ行く快人。置いて行かれないように必死で着いていく。段々道を外れて暗い並木道に入ってきた。でも待って、ここって…

「…嫌だ」

「何が」

聞こえたのか振り返る快人。何って…知ってるくせに!!

「ここ、虫が…」

私は大の虫嫌いなのだ。それを知られて幼い頃よくイジられていた。バッタが顔に張り付いた時には失神してしまったくらい。それを知ってて連れてくるなんて…やっぱり悪魔だ。

「それくらい我慢しろよ」

「い…」

「次嫌とか言ったらこの先の海に放り込むから」

ゴクリ…本当にしそうだ。私は大人しく、なるべく前だけを見て進んだ。
ようやく道を抜けた私は目の前の景色に心を奪われた。

「綺麗…」

「だろ?お前には似合わねーよこんな景色」

ボーッと眺めていられるほど、光っていて夕焼けに反射されていて、綺麗な海。並木道を抜けた事がなかったから分からなかったけどまさかこんな場所があったなんて…でも、初めて見たわけじゃないような…思い出そうとするが、頭が働かずやめた。

「でも、なんでここに…?」

「思い出があるから。それだけ」

思い出…?少し悲しそうなのは気のせいかな。


「ただいま~」

「おかえり♪快人君とはどうだった?」

多分幼馴染だからなにか積もる話でもあった?と聞いてるんだろう。

「う、うん、まぁまぁ…」

あのあと私は罵詈雑言を浴びせられた。さっきの雰囲気はどこへやら、

『お前ってつくづく思うけどブスだよな』

『制服も身長と合ってねーしチビだな』

等々、言われてる事はたいした事ないかもしれないけど…身長はコンプレックスなのだ。
中学から全く伸びずに155止まり。快人は170くらい。
ちなみに両親に快人にこんな事言われる、と訴えても全く信用してもらえない。何故なら快人は私以外には優等生で優しいのだから。
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