ドSな幼馴染の分かりにくい愛情表現

めるてぃ

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【4話】 条件

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「…お邪魔します」

「あ、やっと来た!ほらおいで!ご飯を作ってくれたのよ!」

「あぁ。なんか申し訳ないけどな」

「いえいえ。昔からお世話になっておりますので」

お父さんもいるなんて珍しい…。そんな和やかな雰囲気が漂っているけれど、私だけそんな気分にはなれなかった。
きっとこの世の終わりのような顔をしている事だろう。すると、グーとお腹がなった。久々に動いたからか、今日はとてもお腹が空いていたようだ。

「わぁ、オムライスだわ!料理も上手なのね!」

「それ程でもないですよ。これくらい誰でも作れます」

にこやかな表情のまま、私に視線を向ける。何もわざわざこっち見なくても…!!私だってそれくらい作れますー!調理実習でしかやった事ないけど…
でも本当に良い匂い…料理人みたいだな…何でも出来て、そこは本当に羨ましい。

「そんな事より、咲は今日帰りが遅かったね」

「あぁ、"友達と"遊びに行ったのよね!」

「…へぇ」

突如、空気がピリッとした。
お、お母さんのばかぁ~!!なんでもかんでもポンポン言わないで!お母さんとお父さんは、今の快人の雰囲気には気付かないのか、私すらもお構いなしに、私の話題で盛り上がっている。ご飯が喉を通らない。この感じからして、きっと怒ってるよね…

「咲」

「ひっ…」

「後でじっくり話そっか」

目の奥が笑ってない…!私は有無を言わさない口調で圧された。誰か助けて…!

─────
「で、お前俺の許可なくどこ行ってたわけ?」

ぐ…と口をつぐむ。なんで遊ぶ事すら許されないの?快人に迷惑はかけてないし、気にさわるような事もしていないはずだ。こんな風に言われるのも今に始まった事じゃないけれど…。

「動物園にしか行ってないよ…!」

「男もいたんだろ?誤魔化せると思うなよ」

「ふ、2人だけだよ…あと、凛ちゃん」

答える度にますます不機嫌になる快人。何がいけないんだろう。皆、良い人なのに。

「俺言ったけど?“人と関わんな”って」

覚えてる。あの、小4くらいから、唐突に言い始めたのだ。隣の子と話すの禁止、遊ぶの禁止、私は次第に一人で遊ぶ事の方が多くなっていった。
それもそのはず。関わり合いがないのだから。
クラス内で昼休みにオリエンテーションがあった事もあった。小学生だから大体はドッジボールで遊ぶ事が多かった。たまたま、快人と同じチームになると、
『お前みたいに運動出来ねー奴が居たら足手まとい』
と、初めから外野扱いされていた。
そんなこんなで、快人からの私への扱いは殆どそんな感じだった。
唯一話せたりする時間は集団宿泊や、修学旅行の時だけ。でも、いざその時が来ても今まで人と話すなんて経験が殆ど無かった私がまともに話せるはずもなく、ただただ気まずいだけの時間だった。
でも、凛ちゃんや須藤君、そして宮原君は口数の少ない私に沢山話しかけてくれた。私はそんな雰囲気に救われたのだ。

「でも!初めて友達になれそうな子が出来たの…」

もっと強く言われる事を承知で、私はありったけの声を振り絞って申し出た。
少しの沈黙が流れた後、盛大に溜息をつかれ

「…じゃあそいつとの関わりは許す」

「本当!?」

思ってもみない返答に思わず声が弾む。

「無条件で許すわけねぇだろ」

淡々とした声色でそう言う。やっぱり…あの快人が簡単に承諾してくれる訳がなかった。まさか、またあんな事されるんじゃ…と、脳内フラッシュバグを起こし、身震いする。
何かを考えた後、悪巧みを考えていそうな表情で、

「来週の土曜、デートしろ」

そう、突拍子のない事を告げた。

「…で?デート!?」

な、何言って…え!?デートって…いわゆる恋人同士がするものじゃなかった!?しかも私が…快人と!?一人混乱していると、

「そ、お前に拒否権とかねぇから」

と恐ろしい事を満面の笑みで言ってくる。ありえない…そんなの数分前の私ならお断りしていたけれど、私には“友達”という弱みがある。ここでNOなんて言おうものならたちまちぼっちへと逆戻りする事だろう。

「わ、分かった…」

「ちなみに言っとくけど今みたいなダッセー服着てきたら…分かってるな?」

そう、釘を刺して出ていった。
それにしてもだ、ださい…!?これでもちゃんと外出用の服なのに…!どうして私が快人なんかの為に着飾らなきゃいけないの…!
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