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【5話】 変化
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『来週の土曜、デートしろ』
あんな爆弾発言をされて数日後…
私の日常は少しずつ変わり始めていた。朝、登校してきて、いつもなら読書や今日の予習をしているところが、友達と話す時間になっている。
「おっはよー!!」
ハグでもしてきそうな勢いで突進してくる凛ちゃん。朝から元気だなぁ。
「凛ちゃん!おはよう」
凛ちゃんはこうやって、毎日私に話しかけに来てくれる。きっと、他にも沢山友達がいるだろうに…
心配で、それっぽい事を言ったら
『あぁ、あの子らとはいつでも会えるからいーのいーの!』
と、言われた。こんな明るくて気さくな性格だから、皆に信頼されるんだなぁ。私には入れないような世界でちょっと寂しくなる。
「今日数学あるけど予習した~?」
「うん、やったよ。でも難しかったなぁ」
「分かる!」
きゃっきゃっと女子トーク?していると、宮原君と須藤君が登校してきた。
「皆おはよ!」
宮原君が挨拶をすると女子達から黄色い声があがる。と、その前に須藤君は無言でそそくさとこちらの方へ避難してきた。
「宮原君格好いい~!!」
「今日もふわふわの髪触らせて♡」
「勉強教えて~!」
一瞬にしてクラスの女子達の視線を浴びる宮原君。格好いいだけでなく誰にでも分け隔てなく接せられるのが魅力的。あれはいつもの事なので、学校で宮原君と話す時間があるとするなら、授業中くらいだろう。
何だか私は凄い人達と一緒にいるんじゃ…と、今更ながら実感した。
すると、私達が広げているノートや教科書類に気付いたのか、
「む。2人して予習を終えていないのか?」
と、訪ねてくる。
「まーね。真一、頭いいよね。私達に教えて?」
「仕方ない。どこが分からないのか?」
「よっしゃ、さっすが真一」
「ありがとう、須藤君」
「礼には及ばない」
それから本当に分かりやすく、私達は教えてもらった。
つまづくような箇所も解き方を丁寧に教えてくれた。そういえば教える方が身につくって聞いたことがある。須藤君はきっと沢山の人に教えてるんだろうな。だって、須藤君に聞けば全部分かりそうだもん。
そういえば…昔快人にも勉強を教わった事があったなぁ。
─────
小学5年生の頃。
たまに、快人の両親は家にいない。多分忙しいのだろう。まだ小学生という事もあり、両親が帰宅するまでうちで一緒に過ごす事があった。そんな時、よく勉強を教えてもらっていた。
『わ、分かんない…』
必死に頭を巡らせているんだけど、一向に解答への糸口が見つからない。こういう時、想像力や、客観的思考がない事を思い知らされる。快人は終わったのか、のんびりしてる。先程お母さんが持ってきてくれたお菓子を片手にテレビまで見ている始末。ここはあんたの家か!!と言いたくなるほど自然にくつろいでいた。私も食べたいのに…早く宿題を終わらせなきゃあのペースじゃ私の分も無くなってしまう!そうして焦れば焦るほど考えはまとまらなかった。数分後、何の気まぐれかチラッとこちらを伺うような視線を向けてくる。
『まだ終わってねーの?お前の分もうすぐ無くなるけど』
と、勝ち誇ったような笑みで食べ進める快人。ありえない!人のお菓子をよくも…!しかも私が一番大好きないちごクッキーも無くなりそうだ。
『ひ、酷い!少しくらい残してくれてもいいじゃない!』
そんな私を横目にパクパク食べ進める快人。何を言っても聞かなさそうなので少しでも早く解こうと頭を働かせる。うぅ…だめだ、全く分からない。うるうる涙目になっていると、唐突にプリントに指をさされた。
『これさぁ、公式習ったよね?』
『こ、公式……』
習った。この問題は形の面積を求める問題。でもどのパターンを使わなくちゃいけないのか…その公式自体も出てこない。
『はぁ。そんなのも忘れたわけ?頭どーなってんの?』
ぐさぐさと心に突き刺さる。まさにその通りだった。公式覚えるなんて基本中の基本なのに私はそれが出来ずにいた。
『…ひし形は(対角線×対角線)÷2、台形は(上底+下底)×高さ÷2』
あ、思い出した…複雑だと思ってたけど
それを聞けば全て簡単に解けたんだった。私の理解力の無さに何度も呆れ
られたけど、結局最後までヒントを出してくれた。
『あ、ありがと…!やっと終わったぁ』
『本当、感謝しろよ』
相変わらずの上から目線だけど…引っかかりがちだった問題も解けるようになったのは紛れもなく快人のおかげだから。こればかりは素直に感謝した。
『ふふ』
『何ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪』
いつの間にか頬が緩んでいたのかそんな表情をしていたらしい。でも今日はそんな暴言も気にならないほどハッピーな気分だった。そろそろお菓子を食べられる…と、手を伸ばそうとしたが、カスの1つも残っていなかった。
『あぁ、そうそう。もう全部食べたから』
教えてくれてる時に食べる時間なんてなさそうだったのにいつの間に!?やっぱり意地悪だ…。
─────
「岬?ここ理解したのか?」
気づけば、凛ちゃんと須藤君は私を心配そうに見つめていた。
「あっ、えっと、大体!」
回想に浸ってて全く聞いてなかった…とは申し訳なさすぎて言えない。それにしても、懐かしい記憶だったなぁ…まだ何か、私は大事な記憶を持ってた気がするんだけど…何とも言えないモヤモヤ感が私を支配する。考えすぎても出てこないなら無理して考える必要はないよね!そう、自分を納得させて勉強に励んだ。
あんな爆弾発言をされて数日後…
私の日常は少しずつ変わり始めていた。朝、登校してきて、いつもなら読書や今日の予習をしているところが、友達と話す時間になっている。
「おっはよー!!」
ハグでもしてきそうな勢いで突進してくる凛ちゃん。朝から元気だなぁ。
「凛ちゃん!おはよう」
凛ちゃんはこうやって、毎日私に話しかけに来てくれる。きっと、他にも沢山友達がいるだろうに…
心配で、それっぽい事を言ったら
『あぁ、あの子らとはいつでも会えるからいーのいーの!』
と、言われた。こんな明るくて気さくな性格だから、皆に信頼されるんだなぁ。私には入れないような世界でちょっと寂しくなる。
「今日数学あるけど予習した~?」
「うん、やったよ。でも難しかったなぁ」
「分かる!」
きゃっきゃっと女子トーク?していると、宮原君と須藤君が登校してきた。
「皆おはよ!」
宮原君が挨拶をすると女子達から黄色い声があがる。と、その前に須藤君は無言でそそくさとこちらの方へ避難してきた。
「宮原君格好いい~!!」
「今日もふわふわの髪触らせて♡」
「勉強教えて~!」
一瞬にしてクラスの女子達の視線を浴びる宮原君。格好いいだけでなく誰にでも分け隔てなく接せられるのが魅力的。あれはいつもの事なので、学校で宮原君と話す時間があるとするなら、授業中くらいだろう。
何だか私は凄い人達と一緒にいるんじゃ…と、今更ながら実感した。
すると、私達が広げているノートや教科書類に気付いたのか、
「む。2人して予習を終えていないのか?」
と、訪ねてくる。
「まーね。真一、頭いいよね。私達に教えて?」
「仕方ない。どこが分からないのか?」
「よっしゃ、さっすが真一」
「ありがとう、須藤君」
「礼には及ばない」
それから本当に分かりやすく、私達は教えてもらった。
つまづくような箇所も解き方を丁寧に教えてくれた。そういえば教える方が身につくって聞いたことがある。須藤君はきっと沢山の人に教えてるんだろうな。だって、須藤君に聞けば全部分かりそうだもん。
そういえば…昔快人にも勉強を教わった事があったなぁ。
─────
小学5年生の頃。
たまに、快人の両親は家にいない。多分忙しいのだろう。まだ小学生という事もあり、両親が帰宅するまでうちで一緒に過ごす事があった。そんな時、よく勉強を教えてもらっていた。
『わ、分かんない…』
必死に頭を巡らせているんだけど、一向に解答への糸口が見つからない。こういう時、想像力や、客観的思考がない事を思い知らされる。快人は終わったのか、のんびりしてる。先程お母さんが持ってきてくれたお菓子を片手にテレビまで見ている始末。ここはあんたの家か!!と言いたくなるほど自然にくつろいでいた。私も食べたいのに…早く宿題を終わらせなきゃあのペースじゃ私の分も無くなってしまう!そうして焦れば焦るほど考えはまとまらなかった。数分後、何の気まぐれかチラッとこちらを伺うような視線を向けてくる。
『まだ終わってねーの?お前の分もうすぐ無くなるけど』
と、勝ち誇ったような笑みで食べ進める快人。ありえない!人のお菓子をよくも…!しかも私が一番大好きないちごクッキーも無くなりそうだ。
『ひ、酷い!少しくらい残してくれてもいいじゃない!』
そんな私を横目にパクパク食べ進める快人。何を言っても聞かなさそうなので少しでも早く解こうと頭を働かせる。うぅ…だめだ、全く分からない。うるうる涙目になっていると、唐突にプリントに指をさされた。
『これさぁ、公式習ったよね?』
『こ、公式……』
習った。この問題は形の面積を求める問題。でもどのパターンを使わなくちゃいけないのか…その公式自体も出てこない。
『はぁ。そんなのも忘れたわけ?頭どーなってんの?』
ぐさぐさと心に突き刺さる。まさにその通りだった。公式覚えるなんて基本中の基本なのに私はそれが出来ずにいた。
『…ひし形は(対角線×対角線)÷2、台形は(上底+下底)×高さ÷2』
あ、思い出した…複雑だと思ってたけど
それを聞けば全て簡単に解けたんだった。私の理解力の無さに何度も呆れ
られたけど、結局最後までヒントを出してくれた。
『あ、ありがと…!やっと終わったぁ』
『本当、感謝しろよ』
相変わらずの上から目線だけど…引っかかりがちだった問題も解けるようになったのは紛れもなく快人のおかげだから。こればかりは素直に感謝した。
『ふふ』
『何ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪』
いつの間にか頬が緩んでいたのかそんな表情をしていたらしい。でも今日はそんな暴言も気にならないほどハッピーな気分だった。そろそろお菓子を食べられる…と、手を伸ばそうとしたが、カスの1つも残っていなかった。
『あぁ、そうそう。もう全部食べたから』
教えてくれてる時に食べる時間なんてなさそうだったのにいつの間に!?やっぱり意地悪だ…。
─────
「岬?ここ理解したのか?」
気づけば、凛ちゃんと須藤君は私を心配そうに見つめていた。
「あっ、えっと、大体!」
回想に浸ってて全く聞いてなかった…とは申し訳なさすぎて言えない。それにしても、懐かしい記憶だったなぁ…まだ何か、私は大事な記憶を持ってた気がするんだけど…何とも言えないモヤモヤ感が私を支配する。考えすぎても出てこないなら無理して考える必要はないよね!そう、自分を納得させて勉強に励んだ。
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