9 / 11
【9話】 崩れる
しおりを挟む
気が付くと、私は保健室のベッドの上にいた。誰かが運んでくれたかな。頭はさっきよりマシになったのか起き上がれるくらいになった。すると、隣には快人が座って窓の外を眺めていた。
あぁ、快人が運んで来てくれたんだ。
「かい…」
お礼を言おうと声をかけようとしたが、ただならぬ雰囲気を纏っているのを感じた。窓の外に誰がいるのかは見えなかったけど鋭い眼光で睨んでいて、何とも形容し難い表情だった。私に向けられているわけじゃないのにとても怖くて、泣いてしまった。
「うぅ…っ」
それに気が付いたのか、振り向く快人。
「お前…なんでまた泣いてんだよ?」
「こわ…かったから…、何で怒ってるの…?」
ひっく、としゃくりあげる。本当最近泣いてばっかりだなぁ。意味も分からず泣いてる私に呆れてるよ。
「お前にじゃねぇ。とりあえずさっさと泣き止め」
「っ」
頬に手を添えて、親指で流れる涙を拭い取ってくれる。男性らしく硬い手なんだけど…包み込んでくれてるみたいで優しい。
「体調は」
「大丈夫、さっきより全然マシだよ。ごめんね、私のせいで…」
迷惑ばっかりかけてる。でもこんな激しい頭痛今までなかったのに…、熱中症になっちゃったのかな?
「違う!お前のせいじゃ…」
ハッと、言いかけて言葉を飲み込んだ。
どうしたのかな、快人らしくない。
「…とにかく、お前女子共の言う事は無視しろ」
「ど、どうして?」
本当にどうしちゃったの?普段なら体が限界になるまで働かせるような事言うのに。
「命令」
言い様のない圧力を感じて私はコクンと頷いてしまった。そうやって流されるからいけないのに。
もしかして私が倒れたのって手伝いしてたからって思ってる?
「あ、クラスの女子達のせいじゃないよ?考え事してて…」
快人の…って、そんなの言ったら私がずっと快人の事考えてたって言ってるようなものじゃない…!
「な、何でもない!」
「隠すな」
あ……嘘ついてるってバレてる。いつも快人にはお見通しなんだよね。でも、言ったら変に思われる。本当に言ってもいいの…?
私が言うのを躊躇っていると、
「お前はさ…幼稚園の頃の事、覚えてる?」
「え?えっと、だいぶ前だから覚えてないとこもあると思うけど……?」
急になんで、幼稚園の頃の話に?
「じゃあいい」
そういう快人の表情は悲しそうに見えた。やっぱりさっきからおかしい。何か、我慢してるのかも…?聞いてみる?でも私も隠してる事あるし、聞いたところではぐらかされそう。散々嫌な事されたのに、なんだかんだ気にかけてしまう。それはたまに優しさを見せてくれるから…─?
「…ねぇ」
と、聞いてみようとした直後、ガラガラッとドアが開いた。
入ってきたのは宮原君だった。急いできたのか、それとも暑さなのか、汗が滲んでいる。
「岬さん…倒れたって聞いたけど…大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、わざわざありがとう」
「あぁ、佐川君がいたんだね、じゃあ心配なさそうだ」
そう言う宮原君の声色は少し怒気が含まれていた。
快人は珍しく黙ってはいるものの、背後から物凄い無言の圧力を感じた。
そう告げると、宮原君は静かに出ていった。
「じゃあ俺も行くから…」
ガタン、と椅子を引き帰ろうとする。なんか、このまま行かせるのはよくない気がして引き止める。
「ちょ、ちょっと待って!」
「何」
「なんか…悩んでる事ない!?」
い、言えた…!!これなら話してくれるかも、と期待するが予想とは大きく外れ、
「─……お前の事以外にねぇよ」
ボソッと呟いたその声は私には聞こえなくて、首を傾げる。
「そんな事より自分の体気遣えよ。また倒れたら…迷惑」
「ごめん…」
私だってどうしてこんな頭痛が起きたのか分からない。否定も肯定も出来ず、謝る事しか出来ない。いつの間にか快人は保健室からいなくなっていた。
そして私はその日、激しい頭痛と高熱に見舞われた。
あぁ、快人が運んで来てくれたんだ。
「かい…」
お礼を言おうと声をかけようとしたが、ただならぬ雰囲気を纏っているのを感じた。窓の外に誰がいるのかは見えなかったけど鋭い眼光で睨んでいて、何とも形容し難い表情だった。私に向けられているわけじゃないのにとても怖くて、泣いてしまった。
「うぅ…っ」
それに気が付いたのか、振り向く快人。
「お前…なんでまた泣いてんだよ?」
「こわ…かったから…、何で怒ってるの…?」
ひっく、としゃくりあげる。本当最近泣いてばっかりだなぁ。意味も分からず泣いてる私に呆れてるよ。
「お前にじゃねぇ。とりあえずさっさと泣き止め」
「っ」
頬に手を添えて、親指で流れる涙を拭い取ってくれる。男性らしく硬い手なんだけど…包み込んでくれてるみたいで優しい。
「体調は」
「大丈夫、さっきより全然マシだよ。ごめんね、私のせいで…」
迷惑ばっかりかけてる。でもこんな激しい頭痛今までなかったのに…、熱中症になっちゃったのかな?
「違う!お前のせいじゃ…」
ハッと、言いかけて言葉を飲み込んだ。
どうしたのかな、快人らしくない。
「…とにかく、お前女子共の言う事は無視しろ」
「ど、どうして?」
本当にどうしちゃったの?普段なら体が限界になるまで働かせるような事言うのに。
「命令」
言い様のない圧力を感じて私はコクンと頷いてしまった。そうやって流されるからいけないのに。
もしかして私が倒れたのって手伝いしてたからって思ってる?
「あ、クラスの女子達のせいじゃないよ?考え事してて…」
快人の…って、そんなの言ったら私がずっと快人の事考えてたって言ってるようなものじゃない…!
「な、何でもない!」
「隠すな」
あ……嘘ついてるってバレてる。いつも快人にはお見通しなんだよね。でも、言ったら変に思われる。本当に言ってもいいの…?
私が言うのを躊躇っていると、
「お前はさ…幼稚園の頃の事、覚えてる?」
「え?えっと、だいぶ前だから覚えてないとこもあると思うけど……?」
急になんで、幼稚園の頃の話に?
「じゃあいい」
そういう快人の表情は悲しそうに見えた。やっぱりさっきからおかしい。何か、我慢してるのかも…?聞いてみる?でも私も隠してる事あるし、聞いたところではぐらかされそう。散々嫌な事されたのに、なんだかんだ気にかけてしまう。それはたまに優しさを見せてくれるから…─?
「…ねぇ」
と、聞いてみようとした直後、ガラガラッとドアが開いた。
入ってきたのは宮原君だった。急いできたのか、それとも暑さなのか、汗が滲んでいる。
「岬さん…倒れたって聞いたけど…大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、わざわざありがとう」
「あぁ、佐川君がいたんだね、じゃあ心配なさそうだ」
そう言う宮原君の声色は少し怒気が含まれていた。
快人は珍しく黙ってはいるものの、背後から物凄い無言の圧力を感じた。
そう告げると、宮原君は静かに出ていった。
「じゃあ俺も行くから…」
ガタン、と椅子を引き帰ろうとする。なんか、このまま行かせるのはよくない気がして引き止める。
「ちょ、ちょっと待って!」
「何」
「なんか…悩んでる事ない!?」
い、言えた…!!これなら話してくれるかも、と期待するが予想とは大きく外れ、
「─……お前の事以外にねぇよ」
ボソッと呟いたその声は私には聞こえなくて、首を傾げる。
「そんな事より自分の体気遣えよ。また倒れたら…迷惑」
「ごめん…」
私だってどうしてこんな頭痛が起きたのか分からない。否定も肯定も出来ず、謝る事しか出来ない。いつの間にか快人は保健室からいなくなっていた。
そして私はその日、激しい頭痛と高熱に見舞われた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
田舎に帰ったら従妹が驚くほど積極的になってた話
神谷 愛
恋愛
久しぶりに帰った田舎には暫くあっていない従妹がいるはずだった。数年ぶりに帰るとそこにいたのは驚くほど可愛く、そして積極的に成長した従妹の姿だった。昔の従妹では考えられないほどの色気で迫ってくる従妹との数日の話。
二話毎六話完結。だいたい10時か22時更新、たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる