異世界召喚闘争記~俺とビキニと七つの剣王~

うえじ

文字の大きさ
8 / 16
第一章

第一節 始まりはどん底から5

しおりを挟む
 体力の限界、疲労の蓄積、そういった生体機能を無視したような斬撃の嵐。その全ては必殺の威力をかねそなえ、擦っただけでざっくりと持っていかれる勢いを伴っていた。
 一狼はその人間離れした斬撃の応酬にダメージと疲労を徐々に蓄積していく。
(ちっ……、あの加護ってのがエグいな)
 ビキニは奴が複数の加護を持っているといった。とすれば現状の奴の加護は『装備の重量を無視』『身体能力の向上』といったところであろう。あの斬撃は剣そのものの能力でほぼ間違いない。
(まだ加護を隠してる可能性は高いな……だが)
 ここで勝負をかける!と意思を固める。もはやこのまま避け続ける体力も残っていない。このままやられるくらいであれば一か八かに出るのが肝要。盾浜で培ってきた経験がそう告げていた。

 ゾクリ、と。一筋の寒気が走った。相手の空気が変わったのを感じる。
「虫ケラが!一人前に覚悟の真似事でもしてみたか!」
 だが決して油断はしない。未だ反撃の芽すら摘みきっている現状で奴に打開手段はない。
 ……そう、未だにとどめすら刺せないこちらにも、次の一手を要求するまでに奴は拮抗しているのだ。生身の体でだ。
(もはや……もはや、体面を気にかける余地すら不要。その技術に素直に敬意を表し……)
 アスピスは振り上げと同時に一足に10メートルの距離をとる。そして雄々しく声を張り上げ叫んだ。
「よかろう!我が剣才を前に怯まぬその勇姿に免じ、我が必殺をもって屠ってやろうぞ!」
 一狼の殺気に呼応するように、アスピスもまた気迫の昂りをもって応える。
「は!いいじゃねーか!それでこその死合だぜ!」
 ならこっちもとっておきをくれてやる!その言葉をもってずしりと、体幹を地に生やし迎撃の構えに移った。
 胸の内が熱く燃える。脳がチカチカと白熱する。血が煮えたぎる錯覚に僅かな平静。
 だいぶ『のってきた』と、笑みが自ずと沸き上がる。死が眼前にまで近づく状況下においても昂る感情に、悪い癖が出たと思う。
 生殺与奪の恐怖よりも目の前の戦いに強い快感を得てしまう。日頃から喧嘩や争いを嫌い、過去には文字通り『死に損なった』ことすらあったにも関わらずだ。
 やはり自分は盾浜の人間だと痛感する。人と対峙しては勝りたいという気持ちが染み付いて離れない。

 絶対に勝つ。その自負を手に、集中力は極限まで引き上げられる。互いの呼吸が呼応しだし、やがて最後の開戦の合図が鳴りだそうとする瞬間。
「第二王剣が眷族アインツヴァルベよ……蹂躙と征服、破壊と掃討、闘争に終わりを告げるものよ。我が手に千の首級と万の臓腑、四つの丘を染める戦果の加護を」
 地面が炸裂する衝撃が走り、視認できるほどの濃密な魔力がアスピスから放出された。
 まるでダンプカーが最高速度で目の前まで突進してくるような威圧感。逃げることも守ることも意味はなく、ただただ圧倒的な力を前になすすべもなく死を想う時間すら押し潰す絶対的な力。目の前のそれはそういった類いの絶望であり、普段であれば腰がくだけまともに直視することすらできない程の暴力を内包していた。
 だが関係などない。この一撃にすべてを込める。それ以外にこの体に知覚させるものなどなにもないのだから。

 瞬間。 深紅の閃光が迸る。その一撃をもって、終幕となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...