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【聖者の薔薇園-終幕】
327.めんしゃい
しおりを挟む「もんもん。だー、ぶぅ?」
「えぇ、もう大丈夫ですよフェリアル様。心配してくれてありがとうございます」
両方の鼻に栓をしてにこやかに微笑むシモン。それ、息は出来ているのだろうか……。
シモンが倒れ、むぎゅーっと介抱していた時。偶然通りかかったグリードにあわわっと助けられたのがつい数分前の出来事。
鼻血を封じてすっかり回復したシモンの体をよじ登り、むぎゅっと抱き着いて確認。ふむふむ、確かにもう大丈夫そうだ。よきよき安心安心。
シモンが元気でよかった、よかったとうりうり甘えていると、不意にずっと無言だったグリードが勢いよく地面に伏せた。いわゆる土下座という姿勢だ。
「姫ェ!ほんっとうに申し訳ございませんでしたァ!!」
急になにごと、とがくぶる。シモンに栓を渡した時からしょんぼり落ち込んでいたのは察していたけれど、この行動は予想外。
びっくりしてシモンにぴとっと抱き着くと、すぐに力強い抱擁がぎゅーっと体を包んでほっと息を吐いた。体がなぜか小さいからだろうか、いつもより包まれている感覚が大きい。
だから安心感も段違い。頭のてっぺんにちゅっちゅと楽しそうに口付けを落とすシモンは無視してじーっとしていると、やがてグリードの本当に申し訳なさそうな声が聞こえて恐る恐る振り返った。
「おっ、俺のせいで姫が……姫がばぶになっちゃって……正直超可愛くて最高でしたとか絶対言えないんすけど、ほんとすんませんっした!!」
正直なところを全て言っちゃってるグリードにふむ……と頷く。
軽くされた説明によると、僕はグリードの箱に吸い込まれて赤ちゃんの姿まで巻き戻ってしまったらしい。永続性は無く半日で戻るらしいから、まぁ正直なところ特にやばめなところはない。
それなら別にいいんじゃないかと思い、よいのじゃよいのじゃと寛大に微笑んだ。
それにしても、あの箱が原因で体が小さくなってしまったのなら、その原因の一端であるクマくんは大丈夫だろうか。
自分のせいで僕がちっちゃくなっちゃったと知ったら、優しいクマくんはうわーんクマ!と号泣してしまう可能性が高い。考えれば考えるほどそんな気がしてきて、慌ててグリードに問い掛けた。
「くー、んまっ!だー、ぶぅ?」
「えぇっと……すみません、全然わかんないっす……」
がーんと落ち込みの落雷。しょぼぼん……とシモンの肩に顔を埋めると、ちゅっちゅしていたシモンがスッと顔を上げてグリードに僕の言葉を翻訳して伝えてくれた。
「クマくんは大丈夫なのか?と聞いています。フェリアル様の尊い問い掛けですよ、ちんたらしてないでさっさと答えろ駄犬」
「はいッ!!クマくんは無事でございます!!落ち込んで寝込んでいます!!」
全然大丈夫じゃなそうだけれど……と思ったけれどお口チャック。これ以上何か言ったらグリードがシモンに激おこされてしまう。
とりあえずクマくんには後でとことこ会いに行って、怒ってないのよだいじょぶよとよしよししてあげないと。そしてもふもふに顔を埋めてぬーんと堪能するのだ。
クマくんの件はとりあえず解決。
あとは……と考えて、ふと思い出した。ちっちゃくなる直前の出来事。手紙を書いてグリードに渡したことについて。
「ぐう!て、み!った?」
「アッ、すんません……全然分かんないです……なんて言ってるんすか?」
「ぶぅ……」
全然伝わらないことにしょぼぼん。ちっちゃくなると言葉が通じないデメリットもあるのか。
悲しくてシモンの肩ぺちぺち。ぶぅぶぅと悲しみの声を零していると、有能シモンがまたもやスッと顔を上げて言葉を翻訳してくれた。
「手紙は送ったのか?と聞いています。さっさと答えろ駄犬」
「はいッ!!しっかり送らせていただきました!!陛下への手紙だけ残しています!!」
なぬっとびっくり仰天。どうして陛下宛ての手紙は送ってくれなかったのだろう。
きょとんと首を傾げる僕の傍で、シモンは意外なことに訝し気な顔でグリードを見据えている。陛下への手紙とは何のことか、と尋ねるシモンにふすふすと教えてあげた。
「へー、かっ。めん、しゃい」
「皇帝陛下に謝罪の手紙を書いたということですか?お茶会の最中に倒れてしまったから?」
「う!めんしゃい」
こくこく頷いてごめんなさいを繰り返す。流石シモン、しっかり僕の言葉を理解してくれたみたいだ。
それにしても、本当にどうしてグリードは陛下への手紙だけ残したのか。ぶぅぶぅ声を漏らして不満げにシモンぺちぺちしていると、頭のてっぺんにちゅっちゅを再開されてぴくっと体を震わせた。
シモン、もしやキス魔になってしまったのだろうか。さっきからすっごくちゅっちゅしてくる。
じっとしていると、やがてシモンがふわふわ髪をよしよし撫で始めた。心地良さにふしゅーっと力が抜ける僕をぎゅっと抱き締め、諭すような声音で語りかけてくる。
「フェリアル様は陛下に、めんしゃいなんてしなくて良いんですよ。めんしゃいをしないといけないのは陛下です。馬鹿な陛下が馬鹿なこと仕出かしやがっただけなので、いい子のフェリアル様はなーんにも悪くないんです」
「ぶぅ?めんしゃい、ぶー?」
「えぇそうです。めんしゃい、ぶーです」
「ぶー」
そっかそっか、なるほどなるほど。ともかく僕が陛下にごめんなさいをする必要は無いらしい。
詳しい説明をされていないからまだよく分からないけれど、シモンがそう言うならそうなのだろう。
そう判断してめんしゃいぶーを繰り返しシモンとお話ふむふむ。
へにゃあと表情を緩ませ上機嫌になったシモンを見つめ、気配を消していたグリードがほっと息を吐くのが横目で見えた。
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