余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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フェリアル・エーデルス

360.女神の結末

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「さて、もうこんな時間ですし、もう一度ねんねんころりしてお休みしましょうか」

「僕、しっかり起きてたっ!」

「うんうん。深夜まで起きられるなんて、フェリアル様はもう大人の仲間入りですねっ。流石賢いお兄さんのフェリアル様ですっ」


 ちょっぴり睡魔に襲われる目元をごしごし軽く擦ってキラリンと輝かせる。眠くなんかないよ、ずっとおめめぱっちりだよ。

 ぱちぱちっと睡魔を追い払って立ち上がる。ばたんきゅーライネスはどうしよう、と見下ろして眉を下げた。とっても幸せそうな表情で鼻血を垂らしている……。
 心配の色を宿して見下ろす僕に気が付いたようで、ばたんきゅーライネスはシモンが背負って運んでくれることに。
 具合が悪いならお医者様に……と思ったけれど、どうやらそういう訳ではないらしい。時間が経ったら戻ってくるから大丈夫、とのことだった。
 戻ってくるってどういうことだろう?ライネスはここにいるのにおかしいね。

 その後はてくてくっと大公城を静かに歩いて、無事お部屋までゴール。ライネスをとさっと寝かせて、自室にそそくさ戻る。
 慣れない部屋でちょっぴり怖いので、今日はシモンが傍についていてくれることになった。ありがたい。
 もぞもぞと毛布に包まって寝転がると、シモンがにこっと笑ってよしよし撫でてくれる。
 その温もりを感じた途端耐えていた眠気がどさっと訪れて、ねんねんころりを聞く頃にはこっくりうとうとしてしまった。むぅねむい……。


「ずっと傍に居ますから。安心して眠ってください」

「む……」


 額をなでなで。毛布の上からとんとんとよしよしされると、直ぐに酷い眠気に襲われた。
 やっぱりシモンの声は落ち着く。声なのか、仕草なのか、どっちもかもしれないけれど。
 シモンがずっとと言ったから、絶対にずっと居てくれるという確信がある。朝起きた時に初めに視界に映るのはシモンで、おはようを言うのもきっとシモンだ。
 そう考えると、慣れないベッドの上でもぐっすりと夢の中に落ちることができた。すぴー。




 * * *




「むにゃむにゃ……はっ!」


 体感にして数秒。五秒もなかったかもしれない。
 あれれ?ついさっき目を瞑ったばかりだよね?と困惑しそうなくらいの感覚。目を閉じたことで暗くなるはずの視界、向こう側から何故かとんでもなく明るい光が見えた気がしてぴくっと瞼を震わせた。
 シモンが部屋の明かりを灯したのだろうか。いやいや、僕が眠る時にシモンがそんなことをするとは思えない。例え視界が悪くても何とかして暗い中動くのがシモンだ。
 それじゃあこの明かりは……?そう思いゆっくりと瞼を上げて、ハッとした。


「なぬっ!?」


 お部屋じゃない!慌てて飛び起きて、周りをきょろきょろと真ん丸の瞳で見渡す。もはや眠気は覚めてしまっていた。

 見覚えのない豪華なお部屋。至る所が神秘的と言うか、神々しいと言うか。そういう感じのキラキラなお部屋だ。
 僕は何故かその部屋のソファに寝っ転がっていた。さっきまで大公城の部屋のベッドに眠っていたのに……それにそれに、何よりシモンがいない!これは由々しき事態である……ごくりっ。

 まさか……刺客っ!いやいやよりによって大公城に刺客が侵入するわけないやろーっと一人ボケツッコミ。よくわからない状況に頭が大混乱である。あわあわ。


「しもんー……?」


 とりあえず困ったときのシモン召喚、床ぺちぺち。でも、あれれ、影を叩いてもシモンがこない……しょぼん。
 そういえば最近影の反応が全くないなぁ、なんてふと思い出した。基本的にシモンは常に傍にいるから、影で呼ぶ機会があまりない。だからそんなに気にしていなかったけれど……よく考えたらちょっぴり違和感。
 いや、今は影について考えている場合じゃない。状況把握、状況把握。

 もう一度お部屋の中をきょろきょろ。振り返った瞬間、あまりの驚きに「ひょえッ!!」と体が跳ねた。



「やっほーフェリアル!超絶最強全知全能!ゼウスさまだよーんっ!」



 さっきまで誰も居なかったはずのソファにシレッと腰掛けている中性的な美形の男性。金色の髪をさらりと靡かせてイェーイ!とピースする姿には見覚えがある。

 びっくり仰天、万歳の姿勢で硬直していた体を解いて恐々と後退る。
 おろおろあわあわと大混乱で震える僕を見つめてきょとんと首を傾げる男性……神界の王様、ゼウス様。
 いやいや、きょとんなのはこっちの方でござるよと困惑顔を浮かべると、突然背後からひょいっと誰かに抱き上げられた。


「来たか。フェリアル」

「むっ……!リベラ様!」


 瞳キラキラ。安心安全のリベラ様を視認したことでほっと一息。ゼウス様が不満げにぶーぶーと喚く声が聞こえるけれど、今はリベラ様とのむぎゅーに集中。安堵で体ふにゃー。

 ちょっぴり落ち着いてきた頃にハッと我に返る。
 そういえばどうしてリベラ様とゼウス様がここに?というか、どうして僕はここにいるのだろう。時間の流れは……と色々考え込む中、僕を抱えたままソファに座ったリベラ様に呼び掛けられ思考を中断。
 なにごと?と顔を上げると、そこにはリベラ様の人間離れした綺麗なお顔が。


「突然呼んですまない。一先ず時間については心配するな、細かい説明は後でする。先ずは本題から聞いてくれ」


 相変わらず淡々とした口調だなぁと思いながらこくっと頷く。
 リベラ様の視線の先を追うと、そこには微かに表情を歪めたゼウス様が。彼が直々に訪れるくらいだからきっと重大な事だろうと身構えた後、紡がれた言葉にピクッと硬直した。


「マーテルの処分……永久消滅が執行された」

「……っ」

「此処へは、当人のお前にも伝えなければと思って呼んだんだ」


 永久消滅。その言葉が意味する事は。
 これまでの苦難に満ちた人生の数々が途端に脳内に駆け巡り、咄嗟に一言返すことが出来なかった。

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