婚約者が義弟と不貞を働いていたので、俺も隣国の皇子と浮気します

栄円ろく

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 「聖夜会……? あっ! 聖夜会ね!」

 一瞬、ルーカスの言ったことを理解するのに時間がかかったが、聖夜会と聞いてやっと思い出す。

 聖夜会とは、この国ネーデルラントのお祭りで、冬至の長い夜を楽しく過ごして冬を乗り越えよう……みたいな感じだったはず。

 まぁ、あまり意味は大事じゃない。みんな集まって、騒ぐ名目が欲しいだけだから。

 よって、リスクォール魔法学園でも、冬至の日に舞踏会が行われる。その舞踏会では一緒に踊る相手とともに入場するため、事前に『どこそこで待ち合わせをして、一緒に会場に入りましょう』と手紙を送る習わしがあった。

 「あーえっと、たしかにソフィーに手紙を送るの忘れてたけど……」
 
 ここ一ヶ月、様々な出来事がありすぎて、すっかり忘れていた。
 今のところ中等部・高等部合わせて5回ともソフィーと行っているのに。

 「お前、今年が学園で最後の聖夜会なんだぞ! どれだけソフィーが楽しみにしていたか……!!」

 ルーカスのぶちギレてる顔に、慌てて「ご、ごめん」と頭を下げる。

 でもまだ三週間も先だし……それに一つ気になることがあった。

 「あ、あの……なんでルーカスが知ってるの?」

 一応表向きは、ルーカスとソフィーに接点は無いはず。あっても軽い挨拶ぐらいだろうに。

 試しにちょっとカマをかけてみたら、ルーカスは黙りこくってしまった。

 「……無能なお前なら、忘れてそうだなと思っただけだ」

 いやいや、それは無理があるって! 嘘下手すぎか!

 「そもそも、聖夜会の案内を忘れるような馬鹿が、ソフィーの婚約者なのがおかしい。お前なんか、ソフィーと不釣り合いだ。この無能が!」

 ルーカスはこれ以上突っ込まれたら面倒だと感じたのか、俺に捨て台詞を吐いてから、扉をバーンと閉めて出て行った。

 俺は急に静かになった部屋で、一人息をはく。

 「はぁ……やっと帰った」

 ルーカスは悪いやつじゃないんだけど、一緒にいるといつも自分が悪者にされてる気持ちになって辛いんだよなぁ……

 いや、不倫しているから悪いやつではあるのか?

 「まぁ、どっちにしろ、俺にソフィーは不釣り合いだよ……」

 手紙を忘れているようじゃ全然だめだ。
 だからルーカス、彼女を幸せにしてあげてね。

 そう心でつぶやいて、俺はベッドの上で寝返りをうった。

                                      
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