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 「ま、僕が君らについて詳しいのは、そういう事情ってこと。さ、これで課題の花は最後かな?」

 「あ、うん。そうだね」

 俺はアデルから受け取った花を瓶に入れて、中身を確認する。うん、十分な量がたまっている。
 今日の課題は、この黄色い花を使って治癒薬を作るのが目的だ。

 「よし、じゃあこれに火をつければいいんだっけ?」

 アデルが瓶の中身に向かって火魔法を放とうとしたので、俺は「あ、ちょっと待って」と止める。

 「ん? どうしたの?」
 「教科書通りだと火をつけるけど……」

 俺は瓶をアデルに預けて、下に置いておいた鞄から巾着を取り出す。

 魔法で出来た巾着は母の形見だ。見た目よりいっぱい収納できて、大変よく使わせてもらってる。

 「えーっと、たしかここら辺に……あっ、あった、あった」

 巾着から乾燥した葉が入った瓶を取り出すと、アデルが「なにそれ?」と言った。俺は周りに先生がいないことを確認してから、ちょっとだけ声を落として話す。

 「これはある魔法薬草を乾燥させたものなんだけど、この葉はすごく湿気を吸ってくれるんだ。見てて」

 そう言って、俺は花の入った瓶に枯れた葉を三枚ほど入れる。するとみるみるうちに花は乾燥し、反対に葉はぷっくりと膨らむ。

 「わぁ……すごい。あっという間にカサカサだ」

 「本来は花を燃やした灰を使うんだけど、本当は乾燥させたほうが効果が高いんだ。それに、魔法で作るとその人の技量で良し悪しが出ちゃうけど、この方法なら品質も安定してるしね」

 俺は湿った葉を取り出し、巾着にしまう。

 「えっ、それって……」

 「でも、この方法は内緒。教科書以外のやり方をすると先生に減点されるから。アデルも減点は嫌でしょ?」

 「あっ、うん……」

 アデルのぽかーんとした顔に、思わず吹き出す。
 優秀なアデルに勝てるものはないと思っていたけれど、魔法薬草に関しては俺のほうが上らしい。
 
 今まで助けてもらってばかりだったから、少しは役に立ててよかった。

                                      
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