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それからアデルには『春休みが終わるまで少し考えさせて欲しい』と言って、別れを告げた。ヴィリは全てを知っていたのか、帰り際に「アデル様の件で困ったことがあればいつでもご連絡を」と言って、とある住所が書かれたメモをくれた。
春休みが終わるまでの三日間、一度もアデルとは会うことが無かった。でも気持ちはずっとふわふわしたままで、ちっとも嫌な感じはしなかった。
じゃあ、これって……
なんとなく、わかっていたけれど。でも認めてしまうのも怖い。だってそれでアデルに裏切られたら、俺は一生立ち上がれない。
でも……アデルはちゃんと、覚悟を決めてくれた。領事館にまで連れていって、過去にあった話もしてくれた。
「うん……そうだな。俺も、覚悟を決めよう」
春休み最終日、俺はベッドの中でとある決意をした。決意と言う割には、かなり曖昧なものだったけれど、それでも今までの関係よりは、少し前に進めるんじゃないかなと思ったんだ。
「おはようセム! 今日も髪がさらさらだね~」
「う、うん……」
翌朝、アデルは何事もなかったかのように俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。普段の俺ならすぐに振り解くけど、今日は抵抗しなかった。
「……? セム、どうし……」
アデルが戸惑って、手を離す。俺は俯きながら、一度深呼吸をした。
「そ、その、俺、この三日間一生懸命考えて、でもまだアデルのこと、恋愛的に好きとか、ずっと一緒にいたいとかはわからなくて……けどそういう戸惑いは、時間が解決してくれるとは思うんだ……」
必死に考えてきた言葉を、しどろもどろになりながら口にだす。
今までちゃん人を好きになったこともなければ、男の人とそうなったこともない。だからすぐに「はい、好きです」と答えるのは難しかった。
「で、でも、家を出てアデルと過ごすのはいいなって思って……それに触れるのも嫌じゃないっていうか……だから、今までは隠れてしてたけど……」
俺は意を決して、鞄を持っていない方のアデルの袖口を、ちょこっと握った。
「!?」
「う、浮気の噂を広めるのは……さ、賛成だよ……?」
しーんっとした沈黙が、その場を支配する。俺はやったそばから後悔して、今すぐ地面に埋まりたくなった。
か、顔が……顔があっつい……!! で、でも! きっとこれぐらいしないと噂って広まらないと思うし、なんならこれじゃ生ぬるいかもしれないけど……い、今の俺じゃこれが限界だっ!
「……セム、本当に、もう……」
「えっ! ア、アデル!? どうしたの!?」
俺が掴んでない方の手で顔を覆い、アデルは天を仰ぐ。
えっ、本当は嫌だったとか? もしかして俺、何かすごい勘違いしてる!?
「ご、ごめん! 嫌なら」
「嫌なわけないじゃん」
手を離そうとしたら、ぱしっと握られる。そのままアデルは指をするするっと絡ませてきて、一気に全身が熱くなった。
「……あんまりにもセムが可愛いことするから……びっくりしちゃって。本当にセムって、罪な男だよね……他にどんな表情を隠し持ってるのか、全部暴きたくなるんだけど」
アデルがほんのり頬を赤くして、怒ったように言う。
俺は『アデルも照れるんだ……』という新たな発見に、胸がキュンとした。
って、ちょっと待って! きゅんってなに!? これ以上アデルの魅力を増やしてどうするんだ俺!!
「セム……」
「うわっ! ちょ、ちょっと待って! さ、さすがにそれ以上は……!!」
アデルが顔を近づけてくる。まだ早朝で誰もいないとはいえ、ここは人目についちゃう……!
思わずぎゅっと目をつぶると、「これからの学園生活が楽しみだね」と耳元で囁かれた。
「えっ、そ、それってどいういう……」
「いっぱい甘やかすから、覚悟しててねって意味」
いやいや、それはそれで俺の心臓が困るんですけど!!
という叫びは恥ずかしすぎて口に出せなかった。
春休みが終わるまでの三日間、一度もアデルとは会うことが無かった。でも気持ちはずっとふわふわしたままで、ちっとも嫌な感じはしなかった。
じゃあ、これって……
なんとなく、わかっていたけれど。でも認めてしまうのも怖い。だってそれでアデルに裏切られたら、俺は一生立ち上がれない。
でも……アデルはちゃんと、覚悟を決めてくれた。領事館にまで連れていって、過去にあった話もしてくれた。
「うん……そうだな。俺も、覚悟を決めよう」
春休み最終日、俺はベッドの中でとある決意をした。決意と言う割には、かなり曖昧なものだったけれど、それでも今までの関係よりは、少し前に進めるんじゃないかなと思ったんだ。
「おはようセム! 今日も髪がさらさらだね~」
「う、うん……」
翌朝、アデルは何事もなかったかのように俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。普段の俺ならすぐに振り解くけど、今日は抵抗しなかった。
「……? セム、どうし……」
アデルが戸惑って、手を離す。俺は俯きながら、一度深呼吸をした。
「そ、その、俺、この三日間一生懸命考えて、でもまだアデルのこと、恋愛的に好きとか、ずっと一緒にいたいとかはわからなくて……けどそういう戸惑いは、時間が解決してくれるとは思うんだ……」
必死に考えてきた言葉を、しどろもどろになりながら口にだす。
今までちゃん人を好きになったこともなければ、男の人とそうなったこともない。だからすぐに「はい、好きです」と答えるのは難しかった。
「で、でも、家を出てアデルと過ごすのはいいなって思って……それに触れるのも嫌じゃないっていうか……だから、今までは隠れてしてたけど……」
俺は意を決して、鞄を持っていない方のアデルの袖口を、ちょこっと握った。
「!?」
「う、浮気の噂を広めるのは……さ、賛成だよ……?」
しーんっとした沈黙が、その場を支配する。俺はやったそばから後悔して、今すぐ地面に埋まりたくなった。
か、顔が……顔があっつい……!! で、でも! きっとこれぐらいしないと噂って広まらないと思うし、なんならこれじゃ生ぬるいかもしれないけど……い、今の俺じゃこれが限界だっ!
「……セム、本当に、もう……」
「えっ! ア、アデル!? どうしたの!?」
俺が掴んでない方の手で顔を覆い、アデルは天を仰ぐ。
えっ、本当は嫌だったとか? もしかして俺、何かすごい勘違いしてる!?
「ご、ごめん! 嫌なら」
「嫌なわけないじゃん」
手を離そうとしたら、ぱしっと握られる。そのままアデルは指をするするっと絡ませてきて、一気に全身が熱くなった。
「……あんまりにもセムが可愛いことするから……びっくりしちゃって。本当にセムって、罪な男だよね……他にどんな表情を隠し持ってるのか、全部暴きたくなるんだけど」
アデルがほんのり頬を赤くして、怒ったように言う。
俺は『アデルも照れるんだ……』という新たな発見に、胸がキュンとした。
って、ちょっと待って! きゅんってなに!? これ以上アデルの魅力を増やしてどうするんだ俺!!
「セム……」
「うわっ! ちょ、ちょっと待って! さ、さすがにそれ以上は……!!」
アデルが顔を近づけてくる。まだ早朝で誰もいないとはいえ、ここは人目についちゃう……!
思わずぎゅっと目をつぶると、「これからの学園生活が楽しみだね」と耳元で囁かれた。
「えっ、そ、それってどいういう……」
「いっぱい甘やかすから、覚悟しててねって意味」
いやいや、それはそれで俺の心臓が困るんですけど!!
という叫びは恥ずかしすぎて口に出せなかった。
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