婚約者が義弟と不貞を働いていたので、俺も隣国の皇子と浮気します

栄円ろく

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 それからヴィリに部屋を案内してもらって、室内風呂で体を綺麗にした。

 正直、めちゃめちゃ緊張してる。だって、男の人とそういうあれをしたことあるわけじゃないし……

 でもアデルと一緒に過ごすと決めてから、一応覚悟はしてきた。

 経験はなくても前世での知識はあるし、きっと本気で痛がったらアデルも止めてくれるはず……

 だから俺は数時間後に、シャツとパンツというラフな格好で、アデルの部屋の扉をノックした。

 「……アデル? 俺だけど……うわっ!」

 ノックして開けようか迷う前に、中から腕を思い切り引き込まれる。
 本人の姿を確認する前に、顎を掴まれて激しいキスをされた。

 「ふっ、あっ……」

 「セム……期待しないでって言うから、来ないかと思った」

 「あ、いや、それは……んっ」

 それは経験則的な意味で期待しないで、ということだったのだけれど、アデルには別の意味で聞こえていたらしい。

 舌を絡め取られ、口内を舐められ、息が荒くなる。その上後頭部をがっちり掴まれ、頭がぼーっとしてきた。

 酸欠と合わさって力が抜け切ると、アデルに抱き抱えられる。

 「本当に可愛い……」

 うっとりと囁かれ、心臓がどきっとする。「そ、そんなこと……」と否定する前に、ベッドに寝かされてしまった。

 「あっ、んぅ」

 あっという間にシャツを脱がされ、キスをされる。アデルも器用に自分の服を脱ぎながら、お互い素肌を晒しあった。

 「……セムって本当に色白だね」

 「……嫌だ?」

 「まったく。むしろ心配になるぐらい綺麗」

 ちゅっと音を立てて、胸の突起を吸われる。あまり触ったことのない部分だけれど、なぜかアデルに触れられるとぞわぞわする。

 「……んっ」

 思わず鼻にかかった声出て、口元を手の甲で抑えた。するとやんわりとどけられ、唇が重なる。

 その間もアデルは指の腹でくにくにといじり続け、口内の刺激と胸の感覚が混ざり、体の奥が熱を持ち始めた。

 「……気持ちいい?」

 「わ、わかんない……」

 多分気持ちいいのだけれど、素直に認めるのは恥ずかしすぎる。
 潤んだ視界で『察して』と訴えると、アデルは首を傾げた。

 「本当に? 正直・・に答えて」

 「! そ、それはずるい!!」

 「ええー? でもさっきは使っていいって言ったじゃん」

 にこにこと少し意地の悪い笑顔を、俺はむっと睨む。まさかここで使うなんて!

 でも最近は甘々なアデルにすっかり慣れていて忘れてたけど、思えばアデルは元々意地悪だった。

 どっちが素の性格かわからないけれど、多分どっちも本性なのだろう。

 甘くて冷たい。優しいのに、いじわる。

 矛盾しているからこそ、その振り幅に惹かれてしまう。

 ……もうこれって、惚れた弱みだよね?

 「セム、こんなときに考え事? 随分余裕だねぇ?」

 「あっ! まっ、待って、ああっ」

 アデルの手がズボンの中に伸び、ゆるく立ち上がりかけたものを直接握り込まれる。突然の刺激にびっくりしていると、一気に激しく動かされた。

 「あっ、ひぅっ、や、やめっ……」

 やめて、と言いたいのに、溢れる言葉は本能のまま「……やめないでっ」と伝えてしまう。恥ずかしさで泣きそうになっている俺に、アデルはすごく満足げな笑みを向けた。

 「わかった。やめないね……セムは気持ちいいこと好きなの?」

 「す、す、好きじゃ……あぅっ、好き……うん、好き……」
 
 認めてしまうと余計に気持ちよさに拍車がかかって、いつもじゃありえないほど高みへ上り詰めそうになる。

 「セム、いきたい?」

 「んっ、うんっ、い、いきた……ああっ」

 目の奥で火花が散り、背中がのけぞる。びくっと跳ねるがままに、アデルの手の中で精を吐き出した。

 「……アっ、アデル、ご、ごめ……」

 「なんで謝るの? すっごく可愛かったのに」

 涙でぐちゃぐちゃな顔にキスの雨が降る。アデルは可愛い可愛いと言いながらキスをして、俺のズボンを脱がせた。

 そして出した精液をすくって、後孔に指を這わす。あ、やっぱりそこを使うんだ、と脱力したまま、俺は下半身に目を向けると、アデルの不自然に膨らんだパンツに目が行った。

 「ア、アデル……」

 「ここを使うのはいや? やめておく?」

 少し不安げなアデルに、俺は首を振って否定する。

 「ううん……いやじゃないよ。アデルも気持ちよくなって欲しい……」

 俺、初めてだから……期待しないでほしいけど、と添えるとアデルが苦しそうに眉根を寄せた。

 「……やっぱり魔法なんてかけるんじゃなかった。こっちがやられる」

 「あっ、んぅ」

 アデルは荒々しいキスをしながら、ぐにぐにとほぐしていく。お風呂で自分なりに綺麗にしたそこは、意外と早くアデルの指を受け入れた。

 「あっ、うっ……」

 くにっと中で指が折り曲げられ、内臓が触られる感覚がする。どこか探るような手の動きに、短く息を吐いた。

 「大丈夫? 痛くない?」

 「んっ……い、痛くない」

 痛くないけど、異物感がすごい。無意識でアデルの背中にしがみついてしまう。

 ……やっぱり初めてって難しい。ちょっと無理かも……

 少し音を上げかけたとき、急にびくっと電流が走ったような刺激が突き抜けた。

 「あっ!」

 飛び出た声に驚いて、えっ? と自分の性器を見つめる。すると先ほど出したばかりなのに、わずかに立ち上がりかけていた。

 えっ、なにこれ、知らない。やばい。

 怖くなってアデルを見上げたが、アデルは手を止めることなく唇を塞ぐ。

 「んっ、あっ、ああっ」

 キスの合間に声が漏れるのを止められない。それほどまでにアデルが押す部分が気持ちいい。

 ぐんぐんと性器に熱が集まって、ぴんっと張り詰める。腹にぽたっと先走りが溢れて、目の前が真っ白になりかけた。

 と、そのとき。アデルが指を抜き、自身のものを当てる。

 「……セム、入れてもいい?」

 蜜色の瞳にはいつもの余裕がなくて、ごくりと喉がなる。

 俺も、余裕なんてない。早く、早く一緒になりたい。

 「うん……うん。アデル、入れて……あっ」

 硬いそれが入り口を押し広げ、じわじわと侵入してくる。アデルがほぐしてくれたおかげで痛くなかったけれど、未知の感覚に足が震えた。

 アデルもきっと俺の震えに気づいている。けど俺がやめてって言わないから、ゆっくりと、でも確実に、腰を深めていった。

 「セム……全部入ったよ」

 その声に、安心より不安が勝る。このまま動いたら、どうなっちゃうんだろう。今だって気持ちいい部分がずっと押されて、自然と締め付けてしまっているのに。

 「はっ、あっ……ア、アデル……」

 「セム……ごめん、なるべくゆっくり動くから……」

 と言いつつも、アデルは奥にぐっと腰を入れてくる。拍子に気持ちいい箇所が擦れ、また締め付けてしまった。

 「あっ、ごめん、でも、あっぅ」

 「……ごめん、僕も我慢できない」

 「あっ」

 アデルが上から覆い被さってきたと思ったら、腰の抽送を緩やかに始める。でもだんだんと動きが早くなってきて、漏れ出る声も間隔が短くなる。

 あっ、だめ、気持ちいい、何も考えられない。

 飛んでしまいそうな快感の波に流されないよう、思わずアデルの背中に爪を立てた。

 お互いの荒い息に限界を悟り、ひきつれた声が重なる。

 「ア、アデル……っ、い、いくっぅ」

 「セム、僕もっ」

 どくっと弾けて、つま先がシーツを掴む。快楽の絶頂に耐えられず、涙が溢れた。

 少し遅れて中に熱いものが広がる。お互い強い快感を噛み締めるように、抱きしめ合った。

 「セム……好き、大好き。愛してる」
 「うん、うん。俺も……俺も、愛してるよ」

 ふわふわした気持ちのままアデルの体温に包まれる。甘い香りが胸いっぱいに広がり、幸せの匂いにまどろんだ。





 それから数日領事館で過ごしたあと、俺とアデルはネーデルラントを出国した。

 馬車に揺られながら外を見ると、清々しい青空が広がっている。

 「セム、どうしたの? 何かあった?」

 「ううん、幸先のいい空だなって思って」

 隣に座るアデルが、体を寄せて窓の外を覗き込む。

 わざわざこっちから見なくてもいいのに。でも嫌じゃないから、わざわざ言わない。

 「そうだね、きっといいことが起こるよ」

 ふふっと笑うアデルの笑顔は眩しいけれど、少しだけ緊張もしているみたいだった。

 それはそうだろう。ライヒ帝国に行ったら行ったで、問題は山積みだ。

 アデルの後継者問題や、土地の再生。他にももっと出てくるかもしれない。

 でも——

 「俺もそう思うよ。アデルと一緒なら、なおのことね」

 どこにいるかじゃない。誰と一緒にいたいかが大事なんだ。

 少し目を見開いたアデルに微笑んで、俺はそっとキスをしてあげた。










                                      
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