345 / 368
15■ゆらめく月夜☆白樺祭 SIDE:希(了)
2.変なあゆ
しおりを挟む
なんだかにやにやしちゃって変になった珠希をやっと説き伏せて、僕は着ぐるみを脱ぐと自分の部屋に戻ってきた。
珠希ったら、まだ脱いじゃだめ、とか言ってなかなかジッパー下ろすの手伝ってくれなかったし。
困ったな、って思ってるはずなのに僕の口元はどうしてかゆるみっぱなしだった。
ドアを開けるとリビングにあゆがいてゲームをしながらお菓子を食べていた。
「あゆ、お菓子食べてないでごはん行こっか、もう珠希も降りるって言ってたし」
ドアの音に気づいてるって思ってたのに、そばに行くとあゆはびっくりしたみたいにびくっとして振り返った。
「えっ、あ、うん。おかえりノン。えっと、そうだった忘れてたけどっ、俺リンたちとご飯食う約束してたんだった」
「え? そうなの?」
「うん、そうだった、あっぶねー、忘れるとこだった。もう行かないとっ、ノン珠希たちによろしく言っといて」
「あ、うん、わかった」
あゆはあわただしくゲームをセーブして電源をぱちぱちと消すと、僕が突っ立ってる前を早足で通り過ぎて出て行った。
「ごはん、行こうか」
あゆが出て行ってから少しすると、珠希が部屋のドアをノックした。
「うん、」
「どうかした?」
「ううん、なんでもないよ」
珠希が心配そうにのぞき込むから、僕は慌てて笑顔を作った。
「…そう? あれ? 歩くんは?」
「あゆは、リンたちと食べるって、今日は」
「そう」
僕は、あゆの態度がなんだかひっかかっていた。なんか、慌ててたし、変じゃなかった?
僕の単なる疑問が、確信に変わるのは、すぐだった。
「あ……希、歩は?」
食堂のVIPに入って来た途端、空也先輩の表情が険しくなった。
「あの、リンたちとご飯食べるって、きっと、クラスのみんなとなにか相談があるんだと思います」
ほんとはそんなこと知らないけど、怒ってるのかと思った空也先輩の顔がどんどん悲しそうになったから、僕は咄嗟に適当なことを言ってしまった。
あゆと空也先輩、なにかあったの?
***
「じゃ、おさき」
「ああ」
空也先輩はさっさと食事を済ませて、部屋を出て行った。
僕はこっそりふうーっとゆっくり息を吐いた。
なんか、部屋の空気がぴいんっと張っているみたいに感じて、落ち着かなかった。珠希はいつも通りだけど。でも。
「大丈夫、誰も希に怒ったりしてないから」
くすくす笑う珠希の声。
「そ、いうふうに思ってないよ、ただ」
「ただ?」
「空也先輩に、言わないでくれる?」
「なにを?…うん、わかった言わない」
「なんか、あゆさっき変だったの。クラスのみんなと相談、なんてほんとは言ってなくて、僕が勝手に考えて…昨日だってなんか空也先輩とあゆおかしかったし。喧嘩、したのかな?」
珠希ならなにか知ってるかと思って、僕は伺うように顔をのぞいた。珠希はにっこり笑う。
「うーん、喧嘩って訳でもないと思うけど。大丈夫だよ。空也は今だってあんなむすっとした顔してても歩くんのことで頭がいっぱいなんだ。それって、どうしてだかわかる?」
珠希は目を細めて優しい顔で僕に聞く。僕はわからなくてふるふると顔を振った。
「それは、歩くんのことが大好きだからだよ」
「そっか……あゆだって、空也先輩のことが、大好きだよ」
「うん、そうだよね。だから、きっと大丈夫だよ。もしも喧嘩したって、きっと仲直りできるよ」
珠希の言葉が、胸に染み込んできて、気持ちを楽にしてくれる。
「おいで希」
「え、どこに? あ、わ」
珠希が僕の腕を引っ張ると、空也先輩があゆにするみたいに、僕を膝の上に乗せた。
ここには他の人は来ないって分かってるけど、やっぱりなんだか恥ずかしくって、顔が真っ赤になるのが分かった。
「デザートはこれにしよー」
珠希が急に冗談ぽく言ったかと思うと、僕の唇とぺろっと舐めた。
「わっ、あわわわわあ、た、たまきっ」
心臓がびくんって跳ねて、僕は恥ずかしくて目をくるくる回した。
「希、ほんっとかわい、」
「や、かわいいとかじゃなくって、」
珠希にくすくす笑われて、恥ずかしくてもう隠れたい。顔が真っ赤っかなの分かるし。なのに、珠希は僕の体に腕を回してぎゅっと力を込めていて、逃げられそうにない。
こんなふうに唇舐められて普通にしてたあゆって、やっぱりすごいよ。
珠希ったら、まだ脱いじゃだめ、とか言ってなかなかジッパー下ろすの手伝ってくれなかったし。
困ったな、って思ってるはずなのに僕の口元はどうしてかゆるみっぱなしだった。
ドアを開けるとリビングにあゆがいてゲームをしながらお菓子を食べていた。
「あゆ、お菓子食べてないでごはん行こっか、もう珠希も降りるって言ってたし」
ドアの音に気づいてるって思ってたのに、そばに行くとあゆはびっくりしたみたいにびくっとして振り返った。
「えっ、あ、うん。おかえりノン。えっと、そうだった忘れてたけどっ、俺リンたちとご飯食う約束してたんだった」
「え? そうなの?」
「うん、そうだった、あっぶねー、忘れるとこだった。もう行かないとっ、ノン珠希たちによろしく言っといて」
「あ、うん、わかった」
あゆはあわただしくゲームをセーブして電源をぱちぱちと消すと、僕が突っ立ってる前を早足で通り過ぎて出て行った。
「ごはん、行こうか」
あゆが出て行ってから少しすると、珠希が部屋のドアをノックした。
「うん、」
「どうかした?」
「ううん、なんでもないよ」
珠希が心配そうにのぞき込むから、僕は慌てて笑顔を作った。
「…そう? あれ? 歩くんは?」
「あゆは、リンたちと食べるって、今日は」
「そう」
僕は、あゆの態度がなんだかひっかかっていた。なんか、慌ててたし、変じゃなかった?
僕の単なる疑問が、確信に変わるのは、すぐだった。
「あ……希、歩は?」
食堂のVIPに入って来た途端、空也先輩の表情が険しくなった。
「あの、リンたちとご飯食べるって、きっと、クラスのみんなとなにか相談があるんだと思います」
ほんとはそんなこと知らないけど、怒ってるのかと思った空也先輩の顔がどんどん悲しそうになったから、僕は咄嗟に適当なことを言ってしまった。
あゆと空也先輩、なにかあったの?
***
「じゃ、おさき」
「ああ」
空也先輩はさっさと食事を済ませて、部屋を出て行った。
僕はこっそりふうーっとゆっくり息を吐いた。
なんか、部屋の空気がぴいんっと張っているみたいに感じて、落ち着かなかった。珠希はいつも通りだけど。でも。
「大丈夫、誰も希に怒ったりしてないから」
くすくす笑う珠希の声。
「そ、いうふうに思ってないよ、ただ」
「ただ?」
「空也先輩に、言わないでくれる?」
「なにを?…うん、わかった言わない」
「なんか、あゆさっき変だったの。クラスのみんなと相談、なんてほんとは言ってなくて、僕が勝手に考えて…昨日だってなんか空也先輩とあゆおかしかったし。喧嘩、したのかな?」
珠希ならなにか知ってるかと思って、僕は伺うように顔をのぞいた。珠希はにっこり笑う。
「うーん、喧嘩って訳でもないと思うけど。大丈夫だよ。空也は今だってあんなむすっとした顔してても歩くんのことで頭がいっぱいなんだ。それって、どうしてだかわかる?」
珠希は目を細めて優しい顔で僕に聞く。僕はわからなくてふるふると顔を振った。
「それは、歩くんのことが大好きだからだよ」
「そっか……あゆだって、空也先輩のことが、大好きだよ」
「うん、そうだよね。だから、きっと大丈夫だよ。もしも喧嘩したって、きっと仲直りできるよ」
珠希の言葉が、胸に染み込んできて、気持ちを楽にしてくれる。
「おいで希」
「え、どこに? あ、わ」
珠希が僕の腕を引っ張ると、空也先輩があゆにするみたいに、僕を膝の上に乗せた。
ここには他の人は来ないって分かってるけど、やっぱりなんだか恥ずかしくって、顔が真っ赤になるのが分かった。
「デザートはこれにしよー」
珠希が急に冗談ぽく言ったかと思うと、僕の唇とぺろっと舐めた。
「わっ、あわわわわあ、た、たまきっ」
心臓がびくんって跳ねて、僕は恥ずかしくて目をくるくる回した。
「希、ほんっとかわい、」
「や、かわいいとかじゃなくって、」
珠希にくすくす笑われて、恥ずかしくてもう隠れたい。顔が真っ赤っかなの分かるし。なのに、珠希は僕の体に腕を回してぎゅっと力を込めていて、逃げられそうにない。
こんなふうに唇舐められて普通にしてたあゆって、やっぱりすごいよ。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる