白樫学園記

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1■学園生活スタート☆ぼくたち山田兄弟 SIDE:希(了)

4.寮長 久慈珠希(くじ たまき)

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 4.寮長 久慈珠希(くじ たまき)

 太陽の光の中で、ほとんど濃紺に見えるような黒髪。
 黒ぶち眼鏡の奥の目が、笑っていた。
 よかった……、怒ってない。
 ほっとしたのと同時に、彼が手を延ばして来たから、なにをされるのかと思って、僕は首を縮めた。
「ごめん、おどかして。そんな顔しないで。怒ってないから」
 彼は僕の頭を撫でていた。
「うん……」
 なんだか泣きそうになってた自分が恥ずかしくて目を落とすと、彼の靴が見えた。
 泥にまみれたアディダスのスーパースター。
 ここの薔薇園を管理してる人なのかな?
「君、外部生?」
「うん、そう」
「やっぱり。ここに生徒が来るなんて滅多にないから」
 彼は笑った。笑うと、目と目尻がしわしわになって、顔全部がくしゃくしゃになって。
 なんていうか、この人は顔全部で笑う人なんだな、って思った。その顔がすごく優しくって、僕は緊張を解いた。
「どうして? こんなに綺麗に咲いてるのに、誰も見にこないの?」
「さあ、どうしてだろうね」
 また彼は顔をくしゃってして笑う。
「で? 君は迷子になったのかな? 理事長室に行くはずじゃなかったの?」
「あ、そう……えと、なんで知って」
「僕、久慈珠希。君が入る寮の寮庁だよ。理事長室に行った後僕の所へ来て寮の説明をするはずだったよね。だから知ってるんだ」
「寮長!? あ、そうだったんですか」
「うん。で、君は双児のどっちの子? 希くん? 歩くん?」
「のぞみ、です」
「そう、じゃ、お兄ちゃんだね」
「そうです」
 久慈先輩は、優しい顔で僕を見下ろしている、そうだ! アユ!
 急に思い出して、僕はまた落ち着かなくなった。
「あの、久慈せんぱいッ、アユ、僕の弟見ませんでした? さっきはぐれちゃって。僕と似てて、もっと髪が黒くって、元気で、かっこいい子」
 すると、久慈先輩は、ぷっと吹き出した。どうして笑うんだろう?
「久慈せんぱい?」
「いや、ごめん、君たちって、二卵性?」
「いえ、一卵生です」
「そう。かっこいいって、きっと君たちほとんど同じ顔だよね?」
 先輩はまだ笑いながら、不思議そうに言う。
「うんと、違うんです、ぜんっぜん。アユは僕よりもずっと男らしくってかっこいいんですっ」
 僕がそう言うと、どうしてか先輩はまた笑って僕の頭を撫でた。

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