白樫学園記

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2■学園生活スタート☆ぼくたち山田兄弟 SIDE:歩(了)

6.白樫館へようこそ

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 6.白樫館へようこそ

「山田希くんに歩くんだね?」
「はい」
「部屋はそっちの通路まっすぐいって突き当たりね。鍵はカードキーだから。荷物はもう届いてるよ。何かあったらいつでもおいで」
「ありがとうございます」
 初老の優しそうな管理人さんが二人分のカードを手渡してくれた。

「同じ部屋でよかったね」
「うん!また三年間よろしくな、ノン」

「ここだね、僕達の部屋」
 カードキーをスキャンして、ドアを開けると寮なんて言葉は不似合いな、どこかホテルの一室のようだった。
「すっげぇ!なんか家より豪華じゃん!」
 オレはバタバタと駈け込んで各部屋の扉を順番に開けていった。
「洗面台がガラスだー!蛇口が金だ!バスタブが猫足!」
「すごいねー」
「ベッド、それぞれの部屋にあるのにでかくね?セミダブル?」
「ほんとだ。なんでだろう。一人で寝るには無駄だよね」
「風呂も無駄にでかいしなぁ」
「なんでだろうねぇ」
「なんでだろうなぁ」

「そういやさ、寮長の部屋に行かなきゃいけないんだよね」
 それぞれ部屋を決めて、制服を置いて真中の部屋に戻ってきたとき、ノンが言った。
「あー、そうだっけ。オレ腹減っちゃったよぉ。さっさと行って飯行こう~」
「あはは。あゆってば腹へった、ばっかりだね」
「だってさぁ今日めっちゃ走ったんだもん」
「そう言えば今日何があったの?」
「えー?なんかフィナンシェがいっぱいあって、おいしすぎてお菓子の悪魔がキ…」
 急にさっきの場面が頭の中によみがえった。
「き?」
「んー、なんでもない。とにかく、金髪の悪魔には近づいちゃダメだぞ!ノンはかわいいんだから」
「金髪の悪魔ぁ?よくわかんないけど。もう、僕かわいくないってば」
「かわいいのよーん。さぁさっさと行こう」
 オレはノンの肩に手を置いて、二人できゃあきゃあ言いながら電車ごっこをするように誤魔化して、ふざけて部屋を出た。


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