白樫学園記

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3■球技大会☆双子スター誕生!? SIDE:希(了)

13.友情と愛情

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 13.友情と愛情

 パパン パパン カコカコ……。
 床には僕が打った球が転がっている。
 トレーニングルーム。というか卓球ルーム。普段は卓球部の人が使ってるみたいだけど、この期間だけは解放されている。
 クラスの代表って。卓球部の人とかも出るのかな。
 僕は意識を集中して、回転をかけたサーブを反対側のラインぎりぎりの隅に打ち込んだ。
 ひさしぶりにやったけど。けっこう調子いいなー。
 昔使ってたマイラケットまで持ってきちゃったけど。
 でも、こういうサーブとか使っていいのかな。レクレーション的にやるなら、こういうの使わないよね。バスケとかならシュート決まればかっこいいけど。
 スマッシュ打って、みんな引かないかなあ。
 そう思いながら、僕は何種類かの回転サーブを打った。
 どうせなら、卓球部の人が出てるといいな。


***
 夢中になって球を打っていると、時間を忘れていて、もうアユの試合が始まる5分前だった。
 急いで走って体育館に向かった。観客席に上がる。
「おいっ、希こっちこっち」
 ひらひらと振られる手が見えた。
 空也先輩だった。
 そうだ、どうして僕はこれを予測してなかったんだろう。
「あ、空也先輩、た、まき。応援来たんですね」
「ああ。かわいい歩ちゃんがどんくらい活躍するのか見ないとね。て、なんかすごい久しぶりだよな? 希」
「え? そうですか? 僕も練習してたから」
 空也先輩と話してる間も、珠希がこっちを見ているのが分かってて、僕は気付いてないふりをするのに必死だった。
 コートでホイッスルが鳴った。
「あ、始まるみたいだよ」
 珠希が僕に笑いかけた。僕は、なんとか笑顔を返した。空いている席が珠希の隣だけだったので、僕はそこに座ることにした。
 思っていたとおり、アユは大活躍で、気持ちいいくらいに、ゴールにボールがぱすんぱすんと吸い込まれて行った。
 周りからため息とか、かっこいいとか聞こえて来て、僕は兄として誇らしい気持ちになった。
 ちらっと空也先輩を見てみると、なにもいわずにじっとコートを、アユを、ただ見つめていた。
 アユはそれに気付いてか、いや、絶対に気がついてないと思うけど。僕らを見つけると、コートの中から笑顔で手を振った。
 空也先輩が、止めていた息を吐き出したような、なんだか苦しい吐息を漏らしたのが聞こえた。
 珠希をちらっと見ると、どうしてか僕をじっと見ていたから、びっくりした。
 珠希は僕と目が合うと、優しく微笑んだ。
「避けられてるんだと思ってたから。会えて嬉しい」
 珠希は小さな声でそう言った。嬉しい?
 その意外な言葉で、僕の頭の中はうめ尽くされた。
 だけど、少しするとひとつの答えが導き出された。
 僕と珠希は友達だから。ぎくしゃくしたまま会わないなんて、変だし。珠希は僕との友情を大切にしてくれたんだ。
 そう分かっても、僕はどう答えればいいのか分からなかった。
 僕だって嬉しい。すっごく嬉しい。珠希に会えて。
 でも、きっと、同じ言葉だけど意味が違うんだよね。
 僕はただ、笑顔で珠希に頷き返した。



 その後、空也先輩はアユの所へ降りて行った。
「のんちゃんは、これからどうするの?」
「これから、僕らのクラスの試合がすぐあるから、このまま見る」
「そう。じゃ、僕もこのまま」
 そう言って珠希は微笑んだ。
 ふたりで試合を見るんだ。
 そう思ってどきどきしたけれど、試合があんまり面白くって、珠希も僕も、夢中になった。
 面白い、の意味が違うけど。
 A組対B組の試合は、どっちもどっち、って感じだったけど。
 順平はボールをやっと奪い取ったかと思うと、即トラベリングで笛を鳴らされるし、シュウはちょっとドリブルしたと思うとすぐに足がもつれて転ぶし。他のクラスメイトも似たり寄ったり。
 唯一の得点は、順平が苦し紛れにめちゃくちゃに投げたボールが、たままたゴールに入った、その3点だけだった。
 もう、笑いがこらえられなくって、たまんなかった。
 途中で恐い顔で順平がこっちを見上げていた。後できっと怒られるんだろうな、って思いながら。
 でも、珠希と一緒になって、なにも考えずに笑えて。
 すごく幸せなひとときだった。


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