白樫学園記

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3■球技大会☆双子スター誕生!? SIDE:希(了)

14.A組の星、希!?

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 14.A組の星、希!?

 試合時間の15分前。
 僕は試合が行われる小体育館に向かった。
 嘘のように。だーれもいない。確かに、卓球台が3台並んでるし。間違ってはいない。
 よく見ると、反対側のベンチに、ひとり男の子がジャージを着て座っているのが見えた。
 あ、きっと対戦相手だ。
 そう思って、近付いて行く。
「B組の?」
 僕がそう言うと、茶髪で目つきのするどい彼が、しかめっ面で僕を見上げた。
「ああ……うあ、ユニフォームとか着てんの? ありえね。俺くじで負けてしゃーなく出てるだけだし。適当でいいよ」
 そう言って彼は俯いてしまった。
 ……あの。
 2週間練習してた僕って、一体……。
 少しすると、がやがやと声が聞こえて、クラスのみんなが到着した。
「のーぞみちゃーん、頑張れー」
 観客席から、みんなで僕に向かって叫んでいた。しーんとした体育館に、声が響き渡る。
 なんか……照れるな。
 バスケを筆頭に、ほとんどの種目でクラスは一回戦敗退。
 よっぽど暇だったのか、クラスのほとんどのメンバーが来ていた。
 B組の彼にも、友達が来たみたいだけど、少しだけだ。



 5分前、会場がざわめいて、珠希と空也先輩が来たのが分かった。
 ふたりが僕に向かって手を振るから、相手がすごい顔で僕を見てきた。

 相手の宣言通り。
 僕は気合いを入れすぎていたらしい。
 彼はまったくやる気がないし。
 だから、簡単に試合は終わってしまった。
 なあんか、気が抜けるな。

 そう思って隣の台を見ると、なかなかの真剣勝負が繰り広げられていた。
 後で聞くと、3年の先輩たちで、卓球部の人たちらしい。毎年結局は彼らの部内ライバル対決で、どちらかが優勝している。
 そう聞いて、彼らと試合がしたくなった。勝てるとか思ってないけど、試合らしい試合がしたい。

 すぐにクラスのみんなに囲まれて、髪の毛をわしゃわしゃと撫でられた。
「やるじゃん! うちのスター! 言っとくけど、勝ち残ってんの希だけだから」
「そうそ、だから俺らこれから2日は希応援することだけに駆けるぞー」
 そんな、みんなの声が聞こえて、髪の毛がぐちゃぐちゃになったけど、嬉しかった。
 気がつくと、珠希と空也先輩はいなくなっていた。
「ノン! おめでとー」
 クラスのみんなをかき分けて、アユが抱き着いて来た。
 すると、みんなから変なため息が聞こえてきて、僕とアユは顔を見合わせた。

 僕らは暇だったから、順平やシュウと一緒に、アユや実の試合を応援に行った。
 午後の試合でももちろん、アユは活躍して、F組は圧勝した。

 そして僕も午後にもう一試合こなしたけど、やっぱり相手は一試合目と同じようにやる気がなくって。
 やっぱりあっけなく終わっちゃった。
 でも、明日からは勝ち残った2年生や3年生と試合をするんだから、もうちょっと楽しい試合になるはず。

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