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3■球技大会☆双子スター誕生!? SIDE:希(了)
15.勇気のあるひと
しおりを挟む15.勇気のあるひと
球技大会2日目。
昨日の試合で、練習なんてするほどじゃないのかなって思ったけど、自然と足がトレーニングルームに向かっていた。
クラスのみんなも、あんなに応援してくれてるし。
メキ、ペキ、
微かな音がして、振り返ると、知らない子が立ってた。
「おまえ、目障り」
小柄で、ぱっと見女の子かと見間違うような子。が、僕を氷みたいな目で睨んでいた。
「あ、の、台使う? なら僕はこれで」
すごく嫌な予感がして、ここをすぐに出ていかなきゃ、と感じた。
彼は突然床に置いてあったカゴを蹴飛ばした。大きなかごに山盛りになっていたピン球が床全体に小さな音をたてて広がって行く。
「なんで、」
「なんでこんなことするんだと思う?」
その子は少しずつ僕との距離を縮めて来る。メキ、メキ、といくつかのピン球が悲鳴をあげた。
嫌がらせは、この子がやったんだ。直感でそう感じた。
「警告したよね。久慈様に近付くな、って」
「もう会ってないよ」
「はあ? 昨日バスケのコートで並んで応援してただろッ」
突然彼が声を荒げて、僕はびくついた。
「お前なんか久慈様に相応しくないんだよっ、近付くな!」
好きなんだ。この人も。珠希のことが。そう思うと、なんだか完全に憎めないような気がした。
「分かったのかよ?? もう会うなよ! 今ここで会わないって誓えよ!」
そう言いながら彼が詰め寄って来て、僕の肩を掴んだ。肩に食い込む指の感覚。
恐い。
僕はずっと考えてた。もし嫌がらせをしている本人に会ったら言おうって。僕は珠希のことが好きだけど、僕がつり合わないことはちゃんと分かってる、って。僕じゃだめだって分かってるんだ、って。
ほんとにそう思ってた。
だから、この2週間珠希を避け続けた。なのに、どうしてか口を開けなかった。
「黙ってないで言えよ! ほら!」
彼は僕の肩を揺さぶる。僕のほうが背が高いけど、怒りに満ちた彼の力は強くて、その手を振り切れそうにない。
「嫌だ……」
僕は、2週間ずっと考えていたのとはぜんぜん逆のことを言っていた。
この2週間すごくつらかった。それに、昨日一緒に笑って本当に楽しかった。幸せだった。
我慢なんて。できないよ。
ただの友達でもいい。
珠希のそばにいたい。
「今なんて?」
『僕は、自分が一緒にいたい人間は自分で選ぶ。誰になんと言われようとね』珠希の言葉が、僕の背中を押してくれていた。
「いやだっ、珠希本人に近寄るなって言われない限り、僕は一緒にいる!」
そう言い切った瞬間、思いっきり突き飛ばされた。
僕は不様に後ろ向けに倒れた。
「痛ッ」
運悪く、鋭く尖った卓球台の角に腕をぶつけた。
「お前なに言ってんの? 調子乗ってんじゃねえよ。いいな、忠告したから。言っとくけど、俺だけじゃないから。同じ考えの奴」
そう言って、ぞくっとするとうな視線を僕に投げ付けると、彼はピン球を蹴散らしながら出て行った。
僕はぺしゃんこになった玉をポケットに入れながら、床に散らばった玉を元のカゴに戻した。
泣かない。
泣くもんか。
左の二の腕の内側をおもいっきりぶつけたから、擦りむいてる。これは擦りむいたっていうんだろうか。なんか、すごいことになってる。
物凄く痛いから、相当だとは思ったけど……どうしよ、恐い。なんか、えぐれてるっていうか。
痛すぎて痛いのかどうかよくわからないくらいで。頭が冴えて、妙に冷静になっていた。
それに、僕、あの人に負けなかった。あの場だけ頷くのは簡単だったけど、そうしなかった。
そう思ったら、なんだかすごく自分が勇気のある人間になれたような気がした。
痛いけど、なんか気持ちいいな。
僕は残りの玉を片付けると、ユニフォームを汚さないようタオルで傷を押さえて、保健室に向かった。
「うわ、これは痛いねー。昨日から怪我した子がよく来るけど、今のとこ一等賞だね、しみるよー」
「イギッ」
思わず声が漏れるくらい痛かった。
先生はそう言いながら薬を塗って、ガーゼと包帯をしてくれた。
「明日、また薬塗るから、包帯取り替えに来てね。傷口は濡らさないように」
お礼を言って保健室を後にした。幸い、左腕だから卓球に支障はないし、包帯はユニフォームに隠れて見えないから、みんなに心配をかけることもない。
よかった。
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