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7■きらめく初夏☆物憂い木漏れ日 SIDE:希(了)
6.知ったかぶり
しおりを挟む午後の授業で、化学の移動教室から戻る途中、僕は忘れ物をしたことに気がついた。
「先行ってて、まだ時間あるから取ってくる」
順平とシュウにそう言って、僕は教室に戻った。
やっぱり、実験用テーブルの下の荷物置き用の棚に、教科書を忘れてた。
もう、ドジでいやんなるよぉ。
「希くん」
教室に戻る途中で、後ろから声をかけられて、僕はびっくりして振り返った。
この声は……。
「水沢さんっ、どうしたんですか?」
「ちょっと理事長室に挨拶に」
「そうなんですか」
「久しぶりだからね。そういえば聞いたんだけど、希くんて理事長の甥だったんだ?」
「あ、はい」
僕は誰かいないか気になって周りを見回した。大丈夫みたい。
なんだか、方向が同じみたいで、僕らは一緒に歩いて行くことになってしまった。
「理事長が放課後来てほしいって言ってたよ?」
「あ、そうですか、ありがとうございます」
ふっと頭の上から笑い声が聞こえて来た。
「そんなびくびくしなくても、何もしないって」
僕が驚いて見上げると、水沢さんは笑ってそう言った。
?……見透かされてる。
だって、なんとなく恐くて。
「ほんとかわいいよね。なんか分かるかも。あんなにかわいかったネコの珠希が、今やタチなんでしょ? 正直驚いたけど」
僕は水沢さんがなにを言ってるのかさっぱり分からなかった。
「あ、もしかして分かんない?」
水沢さんがくすっと笑ったから、なんだかすごく馬鹿にされた気がして。なぜかくやしさが込み上げてきたから、僕は笑顔を返した。
「そんなことないです」
「そう……」
「あ、じゃあ僕こっちなんで、さよなら」
ぺこっと頭を下げて、僕は曲り角を曲がった。
ほんとは、そんな所で曲がるはずじゃなかったんだけど。
知らないことを知らないって言うよりも、知ったかぶりするほうがよっぽど恥ずかしいことだって。
昔っから父さんに言われてたのに。
僕はおもいっきり見栄を張ってしまった。
後で順平たちに教えてもらお。
曲がるはずじゃないところで曲がったせいで、僕は軽く迷ってしまった。
やっと教室に着いた頃には、帰る前のショートホームルームが始まってしまっていた。
「遅くなってすみません」
先生が来てたから、僕は謝りながら席に付いた。
「遅いから心配したぞ」
順平が振り返って言う。
「うん、ちょっと迷っちゃった」
「ええ? なんで今さら化学室からの道なんて迷うんだよ」
あきれた声で順平がそう言うのと同時に、隣でシュウがぶっと吹き出すのが聞こえた。
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