白樫学園記

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7■きらめく初夏☆物憂い木漏れ日 SIDE:希(了)

7.ネコとタチ

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 みんなが教室を出ようとしだした頃、僕は切り出した。
「僕教えてほしいことがあるんだけど」
「なに?」
 順平とシュウが僕を覗き込む。
「あのね、ネコってなに? あと、タチっていうのもわかんないんだけど」

「……」
「……」

 あれ? ふたりも知らないのかなあ。
「そっか、だよな、希は初心者だもんね、知らなくて当然だよね」
「ああ、そうだよ。で、それ教えるのはいいんだけど、なんで急に気になったんだ?」
「あの、えっと。実はさっき水沢さんに会って」
「うそッ、校舎内にいたの?」
「うん、そう」
 シュウは昨日僕が話してから水沢さんを見てみたいってずっと言ってるし、順平にも昨日のことを話した。
「でね、水沢さんが言ってたんだ。かわいかったネコの珠希が、今はタチなんでしょ? って。僕そう聞かれたけどわかんなかったから、適当に答えちゃったんだ」
 僕がそう言い終えたしゅんかん、順平は激しく咳き込みだして、シュウは完全に固まってしまった。
 僕、なんか変なこと言ったんだ。
「あ、の大丈夫? 順平」
「ああ、あああ。びびった。希の口からとんでもないことが」
「そうなんだ、久慈さんってネコだったんだ。そっか、そりゃそうだよね」
 ふたりは口々に呟いてはうんうんと納得している。
「だから、僕に分かるように教えてほしいんだって、ねえ」
「あ、ああ……さくっと言うとだな。男どうしで付き合った場合にセックスする時、攻める方がタチ、んで受ける方がネコってことだよ」
「そうなんだ……」

 へえ……エッチする時のことか、そっか……。

 ……。


「あ、おい? 希? 大丈夫? 順平もうちょっとマシな説明ってないのかよ」
「でもこういうこと回りくどく言ってもしょうがないだろ? それでも俺ナリにだな、ほら突っ込むとか言ってねえし」
 ……遠くからふたりが言い合う声が聞こえてくる。それがだんだんとはっきりしてきて、ようやく僕はしばしのショック状態から抜け出すことができた。

「うん、大丈夫。大丈夫だよ、珠希、今はタチだって言ってた、でも僕たちまだそういうことってしてないんだけど……じゃあ、僕がネコっていうのになるのかな?」

「そうだよ、希だったらどう見てもネコだよ、もうすんごいかわいい子ネコちゃん。俺でよかったら、予行演習でもしとく?」
 シュウが目をきらきらさせて僕を覗き込む。え? よ、予行演習って、それって。
「おっまえいいかげんにしろよ」
 順平の強烈なげんこつがシュウに落とされて、シュウは椅子から落ちそうになりながら頭を押さえた。
「いて、おまえ手加減しろよ」
「いーや、今のはお前が悪い」
「冗談だったのに、ごめ、希」
「あ、うん。じゃあ、順平とシュウはどっちなの? ネコ? タチ?」
 僕が素朴な疑問を口にすると、ふたりは目を丸くした。 
 あれ? また間違ったこと言ったかな?
「すごいね、希は順応するのも早いんだね。もうすっかりここの色に染まっちゃってるよ」
 シュウは笑う。
「へ?」
「だって、順平はともかく、俺のこともゲイだって思ってんの?」
「あっ……」
 そういえば、シュウからそういうことって聞いたことなかった。
「そっか僕勘違いしてた、ごめん」
「おまえなに希に謝らせてんだよ、おまえ思いっきり男好きじゃん」
 順平が冷ややかな目でシュウを見た。え? そうなの?
「違うよ、俺はバイセクシャル。女の子だって好きだもん」
「女の子となんかつき合ったことないくせに」
「今は出会う機会がないからで、いずれはそうなるってことだよ」
「じゃああれだ。シュウはバイセクシャル希望のゲイってことで」
「なんかその言い方嫌だ」
 ……ふたりの会話中、また僕はおいてけぼりを食ってしまった。ふたりが話してることの意味が、ちっとも理解出来ない……。
「あ、希? 大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「基本的に俺はタチ。今まではそうだった。でもさ、実際俺、希が久慈先輩を好きなように本気で好きになった奴っていなくってさ。だから、いつかほんとに好きな奴が出来たら、そん時はどうなるかわかんないや」
「うあ、シュウが語ってやがる」
 そう言って順平が茶化したけど、その言い方はすごく優しかった。
「順平は?」
「俺は……」
「希、それは聞いてやるな。だって、こいつ童貞」
「うっさいシュウ、ほっとけよ、俺はお前みたいな快楽主義とは違うんだよ、本気で好きな奴としかしねえんだよっ」
「はいはい、実とするんだよね。かわいそうに、実は他の奴と……」
 2度目のげんこつがまたシュウに落ちた。


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