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9■眩い太陽☆焼けつく素肌と人魚の誘惑 SIDE:希(了)
1.天性の才能
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「アユどうしたんだろう、御飯にも降りてこないなんて」
追試をパスしたお祝をしようと思ったけど、アユは結局空也先輩に連れて行かれたまま戻ってこなかった。
食事にも来なかったから、僕は珠希とふたりでごはんを食べている。
「きっと、空也が部屋に運んでもらったんだよ。歩くん頑張ったし、きっと今日はふたり特別に過ごしたいんじゃないかな」
そう言って珠希は微笑む。
そっか。そうかも。
空也先輩あんなに一生懸命アユの為に時間割いてくれてたし、追試はふたりでパスしたようなものだもん。
そう思って納得して、僕はハンバーグをもぐもぐと食べた。
「寂しいの? 歩くん盗られちゃったみたいで」
ふと珠希が僕の口の端をナプキンで拭ってくれる。
「ううん、」
そんなふうに小さな子にするみたいにされたら、子供っぽいこと言えない。
目を上げると、珠希がめがねの奥から優しいほほえみでじっと僕を見ていて……。
「ちょと……寂しい、かな、でも。僕には珠希がいるから。だから平気」
僕は正直な気持ちを伝えて、にっこり笑いかけた。
あの目でみつめられたら、強がりも嘘も言えなくなる。
珠希が突然持っていたフォークをお皿の上に落として、カチャンと音がした。
「珠希?」
「希ぃ、ほんと、それってわざとじゃないの?」
「え? なに? なにが?」
僕が目をぱちくりしていると、珠希は笑いだす。
「だよね、天性の才能なんだよね……末恐ろしいな」
勝手に珠希はひとり納得して、僕の頭をぐりぐりと撫でる。
なんのこと言ってるんだろう? って思ったけど、珠希がなんだか楽しそうだったからまあいいか、と思った。
***
部屋に帰ってから思い出して、僕は鞄の中に入れっぱなしで忘れていた銀色のカードを取り出した。
IDカードだって伯父さん言ってたな。
僕は自分の部屋に元から設置されていたPCを立ち上げた。
ログイン画面が出て来たから、僕は銀色のカードに書いてあるIDを入力した。カードには僕のとアユのIDとパスワードがそれぞれ書いてある。
正しく入力して、ログオンは成功したみたい……で。
ええっと。
伯父さんたしかおこずかいがあるって言ってたよね……。
ええと……んんと、んんと。
僕は、珠希に携帯でヘルプメールを打った。
***
「で、そこを押すの」
「うん」
珠希は、メールを見てすぐに来てくれた。
白樺学園の生徒専用のショッピングモールがあって、通販ができるようになっているらしい。
珠希が教えてくれた通りに進めて行くと、すぐに分かった。
「珠希もここで買い物したりする?」
「うん、ときどき。ほとんどはコレクション見に行った時に取り置いてもらってることが多いかな」
「へえー」
コレクション? ってファッションショーのことだよね……珠希お金持ちっていうか、セレブって感じだね。
「あ、ここ押すと、残金の確認ができるよ」
珠希は僕が座っている椅子の後ろから近付いて画面を指差した。
さっきからなるべく気にしないようにしてたんだけど。
背もたれの低いスツールのすぐ後ろに珠希が立っていて、ときどき背中に温もりを感じるし、珠希が画面に近付くたびに、耳もとで珠希の声がして、どぎまぎしてしまう。
「のぞみ?」
僕から離れた珠希の不思議そうな声が、上から降って来る。
「あ、うん、っここだね」
僕は言われた所をクリックした。
「……へ?」
僕はそれを見て、しばらく思考が停止してしまった……。
ん?
え?
いちじゅうひゃくせんまん
「珠希、これ、誰のお金?」
「誰のって、希の。歩くんのは別のIDが書いてあったし」
「あの、これおかしくない?」
「ん?」
そっか、そうだよね、セレブな珠希にはこれのどこが変なのかわかんないんだよねっ、
……!!!
¥400,000
よんじゅうまんえん!!??
あ、ありえないよ、入学する前までおこずかい月¥3000だったのに!
「たまき、これって」
「40万」
「……だよね」
一瞬、400円かと思った。
「初めて今使うんだったら、この感じだと希のおこずかいは月10万円なんじゃないかな。4ヶ月放置してたわけだし」
月! 十! 万! 円!
「希? 大丈夫?」
くすくす笑う珠希の声が聞こえる。
「珠希には分かんないんだよっ、このすごさがっ、僕こんなお金見たことないっっていうか普通の高一がもらうような額じゃないしっ、それにぁ、んん」
僕の力説は、突然柔らかな珠希の唇で封じ込められた。
追試をパスしたお祝をしようと思ったけど、アユは結局空也先輩に連れて行かれたまま戻ってこなかった。
食事にも来なかったから、僕は珠希とふたりでごはんを食べている。
「きっと、空也が部屋に運んでもらったんだよ。歩くん頑張ったし、きっと今日はふたり特別に過ごしたいんじゃないかな」
そう言って珠希は微笑む。
そっか。そうかも。
空也先輩あんなに一生懸命アユの為に時間割いてくれてたし、追試はふたりでパスしたようなものだもん。
そう思って納得して、僕はハンバーグをもぐもぐと食べた。
「寂しいの? 歩くん盗られちゃったみたいで」
ふと珠希が僕の口の端をナプキンで拭ってくれる。
「ううん、」
そんなふうに小さな子にするみたいにされたら、子供っぽいこと言えない。
目を上げると、珠希がめがねの奥から優しいほほえみでじっと僕を見ていて……。
「ちょと……寂しい、かな、でも。僕には珠希がいるから。だから平気」
僕は正直な気持ちを伝えて、にっこり笑いかけた。
あの目でみつめられたら、強がりも嘘も言えなくなる。
珠希が突然持っていたフォークをお皿の上に落として、カチャンと音がした。
「珠希?」
「希ぃ、ほんと、それってわざとじゃないの?」
「え? なに? なにが?」
僕が目をぱちくりしていると、珠希は笑いだす。
「だよね、天性の才能なんだよね……末恐ろしいな」
勝手に珠希はひとり納得して、僕の頭をぐりぐりと撫でる。
なんのこと言ってるんだろう? って思ったけど、珠希がなんだか楽しそうだったからまあいいか、と思った。
***
部屋に帰ってから思い出して、僕は鞄の中に入れっぱなしで忘れていた銀色のカードを取り出した。
IDカードだって伯父さん言ってたな。
僕は自分の部屋に元から設置されていたPCを立ち上げた。
ログイン画面が出て来たから、僕は銀色のカードに書いてあるIDを入力した。カードには僕のとアユのIDとパスワードがそれぞれ書いてある。
正しく入力して、ログオンは成功したみたい……で。
ええっと。
伯父さんたしかおこずかいがあるって言ってたよね……。
ええと……んんと、んんと。
僕は、珠希に携帯でヘルプメールを打った。
***
「で、そこを押すの」
「うん」
珠希は、メールを見てすぐに来てくれた。
白樺学園の生徒専用のショッピングモールがあって、通販ができるようになっているらしい。
珠希が教えてくれた通りに進めて行くと、すぐに分かった。
「珠希もここで買い物したりする?」
「うん、ときどき。ほとんどはコレクション見に行った時に取り置いてもらってることが多いかな」
「へえー」
コレクション? ってファッションショーのことだよね……珠希お金持ちっていうか、セレブって感じだね。
「あ、ここ押すと、残金の確認ができるよ」
珠希は僕が座っている椅子の後ろから近付いて画面を指差した。
さっきからなるべく気にしないようにしてたんだけど。
背もたれの低いスツールのすぐ後ろに珠希が立っていて、ときどき背中に温もりを感じるし、珠希が画面に近付くたびに、耳もとで珠希の声がして、どぎまぎしてしまう。
「のぞみ?」
僕から離れた珠希の不思議そうな声が、上から降って来る。
「あ、うん、っここだね」
僕は言われた所をクリックした。
「……へ?」
僕はそれを見て、しばらく思考が停止してしまった……。
ん?
え?
いちじゅうひゃくせんまん
「珠希、これ、誰のお金?」
「誰のって、希の。歩くんのは別のIDが書いてあったし」
「あの、これおかしくない?」
「ん?」
そっか、そうだよね、セレブな珠希にはこれのどこが変なのかわかんないんだよねっ、
……!!!
¥400,000
よんじゅうまんえん!!??
あ、ありえないよ、入学する前までおこずかい月¥3000だったのに!
「たまき、これって」
「40万」
「……だよね」
一瞬、400円かと思った。
「初めて今使うんだったら、この感じだと希のおこずかいは月10万円なんじゃないかな。4ヶ月放置してたわけだし」
月! 十! 万! 円!
「希? 大丈夫?」
くすくす笑う珠希の声が聞こえる。
「珠希には分かんないんだよっ、このすごさがっ、僕こんなお金見たことないっっていうか普通の高一がもらうような額じゃないしっ、それにぁ、んん」
僕の力説は、突然柔らかな珠希の唇で封じ込められた。
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