白樫学園記

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11■きらめき☆楽園バースデー SIDE:希(了)

19.おねむの希

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 話をしていると、前にも増して順平と実が仲良しになったことが、よく分かった。
 ふたりとも、ほんとにお互いのことが好きなんだな、って気がついて、僕も嬉しくなってしまう。

 給仕をしてくれていたスタッフの人に、順平が英語でもういいって言ってくれて、彼らも出て行った。
 英語が通じたことにも驚いたけど、なによりも順平がすごく流暢な英語を話したことに、驚いた。

「なあ希、俺ら上がるし、久慈先輩運ぶの手伝おうか?」
 順平なら、竜くんみたいに珠希を運べるだろう。
「ありがと、でもいいよ。そのうち起きるだろうし。しばらくこうしてる」
「そっか。じゃ、おやすみ」
「ん、おやすみ」
 順平と実はふたりでなにか言い合ってはきゃっきゃと笑いながら、ドアから出て行った。

 みんながいなくなって静まり返った部屋の中、僕は珠希の寝顔を気のすむまでみつめ続けて、そのうちに目がとろんとしてきた。

***
 目が覚めた時、異変に気付いた。
 あれ? ここ、どこ?
 ごろんと寝返りを打つと、珠希の胸に顔をぶつけた。
「起きた?」
 見上げると、僕の側にひじをついて横になっている珠希と目が合った。
「あれ? ベッド?」
「うん、ごめん、僕眠っちゃったんだよね…不甲斐ない」
 なんだか落ち込んだ様子の珠希の髪に、手をのばす。
「僕も、眠ってた?」
「うん、だから運んで来た」
「ありがと。僕、嬉しかったな。珠希が僕の膝で寝てくれて。あ、それはリンくんと竜くんがそうしたんだけど。でも、嬉しかった」
「希、いい子ぉ。だから大好き」
 そう言って珠希は僕に覆いかぶさると、ぎゅむーっと抱き締めた。
「うぐ、僕も、珠希大好き」
 息苦しいけど、それもまたなんだか心地よくって、僕はくすくす笑いっぱなしだった。
 僕らは大好きって言い合って、キスをしたり、抱き締め合ったりしているうちに、また眠ってしまった。

 時計の針が12時を回って、僕の最高の誕生日は、幕を下ろした。


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