白樫学園記

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13■艶めく初秋☆夕焼けロマネスク SIDE:希(了)

6.希の子猫ちゃん

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「なんてね」
 そう言って珠希は微笑むと、ふっと腕の力を抜く。
 ずうっと離してくれなくったって、僕はいいのにな。

「希のクラスは、なにに決まったの?」
 珠希がテラスハウスでお茶を入れてくれた。
「うんとね、はじめはメイドカフェで女装しろって言われて、そんなのやだから、断ったの」
「あら」
 珠希がすっとんきょうな声をあげる。
「どしたの?」
「いや、希のメイドさんってちょっと興味…いや、すごく見たかったな、と」
「えええっ?」
 珠希が笑いながらそんなことを言うから、僕はおもいっきり体を仰け反らせて驚きを表した。
「そんな驚かないでよ。なんか僕変態みたいだな」
「だって、僕の女装だよ? 絶対うぇーってなるよ」
「いやいや、クラスのみんなは?」
「やだって、僕が言ったから、なんかがっかり…あっ、それはせっかくの案を僕が台無しにしたからで、」
「やっぱり。違うって。絶対希似合うから。かわいいだろうなあ……」
 珠希は微笑みをたたえたまま。しばし無言になる……。
「た、珠希ぃ? 今、何考えてるの?」
「ええ? ふりふりのスカートの下から出た希の脚とか?」
「え、えええ! それは絶対変ッ」
 珠希はくすくす笑いだす。
「ごめんごめん、で? 結局何になったの?」
「それもまた、変なんだけどね。ギャルソン、と、子猫のカフェだって」
 僕がそう言うと、珠希はめがねの奥で目を見開いて固まった。
「ね? 絶対変だよね?? 晴海くんって子が出した案なんだけど。晴海くんはメイドさんもやりたかったみたいだし、で、耳もつけたいんだって……変わって、珠希?」
 喋ってる途中で、まだ固まったままの珠希に気付いて、思わず顔を覗き込んだ。
「どしたの?」
「あ、いや。それは、いい考えだね。で、希はもちろん子猫だよね?」
「うん。そうみたい。いいよね、シュウと順平はギャルソンだって」
「いや、希は絶対子猫がいいと思う。うん」
 珠希がいつになく強く断言して、僕はなんだかおかしくなったけど、いきなり腕が延びてきて、ぎゅっと強く抱き締められた。
「あれ? 珠希」
「希のこねこちゃん想像したら、やばくなった」
 珠希は耳もとで熱く囁く。
「え、えええ?」
 僕がうろたえていると、珠希がくすくす笑いだした。
 耳もとにかかる息がくすぐったい。

「希の子猫ちゃん、楽しみだな」
 そう言って珠希は僕にキスを落とした。ちゅっと軽いキス。
「なんか、勢い付いちゃいそうだから、今日はこれだけにしとく。週末、お泊まりおいでよ?」
 珠希は顔を離すと、にっこり笑ってそう言った。

***
 いつも一番に晩メシ! ってうるさいアユが一向に帰って来ないから、僕は珠希と一緒に食堂に来た。
 きっと空也先輩と一緒だと思ったのに、先輩はひとりで来たし、なんだかいつもより無口だし……。
 喧嘩でも、したのかな?

「ごめん、遅れて」
 少しすると、息を荒げたアユが、元気に入ってきた。
 喧嘩とかした訳じゃなかったんだ。よかった。
「ノン、すげーニュース! マコ兄が学園長してんだぜ」
「え? あのマコ兄が? あゆもう会ったの? 」
 うそ、マコ兄がっ?
 僕は嬉しくなってアユにニッと笑いかけた。だって、マコ兄とは小さい頃からずっと仲良しで、僕らにいろんなことを教えてくれた、まるでほんとのお兄ちゃんみたいな存在だ。
「うん、今度学園長室、ノンと一緒においでってさ」
「うん、一緒に行こう」
 僕は深くうなずいた。
 早く会いたいな。

 アユのクラスはお化け屋敷に決まったみたいで、空也先輩と珠希に、学園の七不思議を聞いてた。
 お化け屋敷、って……アユ、とんでもなく怖がりなのに。
 大丈夫なのかな。


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