白樫学園記

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13■艶めく初秋☆夕焼けロマネスク SIDE:希(了)

7.ムーンバックスカフェ

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 次の日、登校するとみんなはカフェのメニューで盛り上がっていた。
「じゃあ、とりあえずアイスにブレンドホット、ラテにエスプレッソに、そういう基本的なコーヒー系は必要ってことで。あとデザートとかも出す?」
 原くんを中心に輪になって、みんな真剣に案を出し合っていた。
 なんか、みんなすごくやる気なんだ。楽しいな。
 僕も、その輪に加わろうと鞄を置くと急いでそこへ向かった。
「おう、おはよ、希」
「順平おはよ。メニュー?」
「そ、原の家って、あのムーンバックスカフェの日本支社の社長だから」
「え、ムーンバックス、ってあのいたる所にある、あれ?」
「そ、あれ。支社っつっても、実質はアメリカからは独立した地位を確立してるしな。まあ、カフェのことは機材うんぬん、全部あいつにまかせりゃいいんだ」
 へ、ええ……。
 今度お店でキャラメルマキアートを飲む時、きっと原くんの顔を思い浮かべるな、僕。
「実際カフェに決まって正解だったよな。あと用意すんのは衣装と内装だけだ」
 順平はにっこり笑う。
 そっかあ。 
 僕がへええ、っと感心していると、ベストの背中をとんとんっとたたかれた。
「希くん、おはよ」
「あ、晴海くん。おはよう」
「ね、ちょっと僕衣装のことで相談があるんだけど。いい?」
「うん、いいよ?」
 僕は晴海くんについて彼の机のそばに立った。
「あのね、僕いろいろ考えてみたんだ」
 そう言いながら大きめのクロッキー帳を取り出す。
「見て、これとか僕けっこういいと思うんだ」
「……はあ」
「絶対これ似合うよ?」
「……はあ」
 僕は、目をきらきらさせて見上げる晴海くんに、惚けた返事しか返せなかった。
 だ、だって……。
「晴海くん、すごく絵、上手だね?」
「うん、だって僕美術部だし」
 晴海君はなんてことないように返事をしたけど。
 だって、晴海くんが拡げているページには、どう見ても髪型も顔も僕って分かるようなイラストの男の子が、ネコ耳をつけて笑っている。
 なんか、お腹まるだしてほわほわしたブルマみたいのと女の子用のビキニみたいなの着けてたりとか、真っ白くてミニスカートのワンピースを着てネコのポーズで笑っている……僕に、とってもよく似た男の子、とか……。


「あ、あの、晴海くん、絵、上手だね、」
「あはは、そんな何回も言わなくても。そう? ありがとー」
 こんなに絵、上手なんだから。せめて、自分をモデルに描いてくれたらいいのに。
 さすがに、おえーっ、気持ち悪いよこんなの、っとか言えないし。
「ね? ね? 僕はコレが一番いいと思うんだ」
 にっこりしながら晴海くんが指差したのは、ほわほわのブルマを着た男の子……。
 晴海くんは同意を求めるように僕を見上げてにこにこしている。
 一生懸命考えて、くれたんだ、よね。
 僕はなんだか、頭がくらくらした……。
「ぼ、僕はこれが好きかなー」
 僕はなんとか、一番露出の少ない、というか全くない、顔だけ丸く穴の空いた着ぐるみ(もちろん顔はぼく似)を指さした。
「ええー? これは地味だよー、僕あんまり好きじゃないなー」
 晴海くんが不満の声を漏らすと、ちょうどチャイムが鳴って、僕はこっそり安堵のため息をもらした。

***
「もう珠希笑いすぎっ、笑いごとじゃないんだよ?? ほんっとに、僕もう困っちゃって」
 放課後の薔薇園で僕の話を聞くと、珠希はくすくす笑いだした。
 登校直後と同じように、晴海くんは休み時間ごとに僕のそばにやって来てはクロッキー帳を見せてくれた。
 そのうちに、クラスのみんなにそれが回って、みんな好き好きにこれがいいとか、こっちの方が好きだ、とか言いだした。
 もちろん、ほとんどがギャルソン担当の生徒達だ。
 結局、猫の格好をする子は、晴海くんみたいに立候補した子以外は、ほぼ背の順で決まったようなものだった。
 でも、僕は170cmで。
 1年生としては、(去年から全く伸びていなかった、ということを除けば)別に小さい方じゃないし、160cm代前半の子だってたくさんいる。
 そう思うと、僕がギャルソンをしたっておかしくないはずなのに。
 僕は一生懸命講議したけど、やっぱり昨日と同じようにあっさりはね除けられてしまった。


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