白樫学園記

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13■艶めく初秋☆夕焼けロマネスク SIDE:希(了)

8.衣装決定?

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「はあ、心配だな。絶対恥ずかしいかっこに決まりそうなんだもん。僕の意見なんて通らないし」
 僕がふっと息を吐き出すと、珠希はやっと笑うのをやめて、いつも空也先輩があゆにするみたいに、僕を膝の上に乗せた。
「珠希?」
 僕は不思議に思って珠希を見た。今は僕が上から見下ろす形になっている。
「笑ってごめん。でも、昨日も言ったけどね、きっと希ならどんな猫ちゃんになっても、変じゃないな、ってか、見たいよ」
「え、えええ? 珠希、やっぱその発言は変だよ」
 今度は僕がくすくす笑いをする番だ。
「いいよ、希には分からなくって。そこがまたいいんだから」
 僕は意味がわからなくて首をかしげた。
「のぞみ」
 珠希の手のひらが首の後ろに添えられる。その手に導かれるように、僕を見上げる珠希に顔を寄せた。
「ん…なんか新鮮……」
「ん……」
 息継ぎの途中に言った珠希の言葉に、僕はただ短くしか答えることができなかった。
 珠希の舌が僕の口の中を動き回る。それは、ただ僕の舌を征するだけじゃない。脳ミソまで溶かしてしまう、そんなとろけるキス。
「も、だめだ。希、部屋帰らない?」
 珠希が、めがねの奥に隠れた熱っぽい目で言う。
「ん、帰る」
 僕も同じことを考えていた。
 僕は寮までの道がこんなにも遠く感じたことってなかった。
 珠希がいつもよりもずいぶん僕の手を強く握って歩く。
 歩幅もいつもよりも広いし、歩くのも速い。
 僕はほとんど小走りになってその後を付いて行った。
 だけど僕も同じ気持ちだったから。
 早く、珠希に触れたい。



 いつのまにか真っ赤な夕焼け空が広がっていて、半歩前を歩く珠希のシャツがみかん色に染まっている。
 寮の入り口をめがけて数段ある階段を上がっている途中だった。
「あっ、希くんっ」
 背中に声をかけられて、珠希と僕は立ち止まった。
「あ、晴海くん」
 晴海くんが大きなスケッチブックを抱えて走ってくるのが見えた。
「こんにちは、久慈先輩」
「どうも」
「先輩すみません、ちょっといいですか? 白樺祭のことで」
「……うん、うんいいよ」
 見上げると、珠希は困ったような顔で微笑んでいた。
 分かってる、珠希の気持ちは。未だに強くぎゅっと握られた手から伝わってくる。
 僕だって気持ちは同じだよ。
「あのね、部活の時に色つけてみたんだ」
「え?」
「ほら、今朝見せたラフ、みんながいいって言ってくれたのに、色をつけたんだ。見てくれる?」
「うん、」
 晴海くんはもうすでに僕の目の前にずいっとスケッチブックを差し出していて、だから月曜に学校で見るよ、なんて絶対に言えないし。
 それに、これはもちろん僕にだって関わる重要なことだから。
 放っておいたらどんな衣装に決まっちゃうかわかんないもん。
 珠希の手を放したくなかったけど、大きなスケッチブックを開いて見るには、どうしても離さなきゃいけなかった。
「う…」
 それを開いて、僕は思わずうめき声をあげた。
「ね? 色つけたら可愛いよね?」
 晴海くんは目をきらきらさせて僕を覗き見る。
「晴海くんなら、きっと似合うよ、うん」
 だって。やっぱり晴海くんが今朝言ってた、ふわふわブルマとビキニトップスの男の子がにっこり笑っている……もちろん僕に似た。
「これ…希?」
 思わず珠希が呟いたのも頷ける。
「似てますか? やっぱりモデルがいたほうが描きやすいんで」
 晴海くんは嬉しそうににこにこ笑ってる。

 めくって行っても、やっぱり僕が着たいような(ブルマとかスカートとかぴっちりしたショートパンツとかじゃないの)はなくて。
 ため息を必死でこらえていた。
「あっ」
 最後のページをめくると。
「ほら、希くんが好きって言ってたから。一応描いてみた。でもこれは絶対地味すぎるって思うんだけど」
「これがいいッ、絶対僕これにするっ」
「え? あ、そんなにこれがいいの?」
「うんッ、絶対コレ!」
 僕は絶対に譲らないぞ、っていう気持ちをこめて宣言した。


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