白樫学園記

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13■艶めく初秋☆夕焼けロマネスク SIDE:希(了)

12.次のステップ★

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 そう言って珠希は僕をお姫様だっこする。
「え? 歩ける、珠希」
「いいから、おとなしくしてて。きっと歩きづらいよ?」
 笑う珠希の視線に気づいて、僕は思わず赤くなった。今更なんだけど。
 だって僕のまだ治まってないし。

 帰りには管理人さんはもういなくて、玄関は非常灯だけになっていた。珠希がドアにカードキーをさして、暗証番号を入力すると、重厚なドアの鍵がカチリと音をたてて開いた。
「それってやっぱり、寮長だから持ってる鍵なの?」
「うん、そうだよ。空也も持ってる」
 そっか、ほんと、忘れそうになるけど、ふたりともすごい人だよね。
 珠希の胸に体を預けて真っ暗な廊下を進んでいると、だんだんと気持ちが穏やかになってきて、僕の体もおとなしくなってきた。
***
「さあ、着いた」
 珠希がにっこり笑って、僕をベッドに降ろす頃には、もう僕はいつも通りだった。
「さ、いっぱい声出していいよ」
 怪しい微笑みでそう言う、珠希に見つめられるまでは。
 まるでさっきまで普通に話していた珠希は別人なのかと思うくらいに、珠希の瞳はもうめらめらと燃えていて、僕を簡単に組みしいて仰向けにした。
 穏やかだった心臓が、一気にかけ足を始める。
 もう珠希は僕がどんな声をあげても手を止めはしない。僕も、そう望んでいた。
 珠希にキスをされると、それが体のどこであろうと、びくんと跳ねて、つま先がぴんと伸びる。
 僕はいつのまにか裸になっていて、珠希もいつのまにかシャツを脱ぎ捨てていた。
 珠希の胸が、僕の胸に触れる。たったそれだけでも、息を飲んでしまう。全身が粟立って、ぴりぴりする。
***
「希、ちょっと先に進んでも、いい?」
 珠希の手の中で果てて、くったりとベッドに横たわって息を整えていた。
 珠希が汗でおでこに張り付いた僕の前髪をかきあげて、覗き込んだ。
 先? って、先、だよね。
 どきどきする。
「う、ん。わかった」
「大丈夫そう?」
「うんっ」
 もちろん、初めてだし、大丈夫かどうかなんて、わかんない。でも、きっと、大丈夫。珠希となら。
 珠希は優しい顔で微笑むと、キスしてくれる。それから、僕の中心をまた手で包み込む。
「あ、まだ…ん、」
 果てたはずなのに、まだそこは熱を秘めていて、軽く握り込まれるだけで、体がびくんと跳ねた。
「大丈夫、痛くしないから」
「ん、」
 珠希は僕の両膝を立てるように促す。
「足、開いて」
 珠希はキスをしながら、中心を擦っているのとは反対の腕でそっと僕の膝を開く。
 大した力も込められていないのに、もう僕の体はふにゃふにゃで、珠希の言いなりになる。
「希、いいこ」
 珠希は僕のまぶたにキスを落とす。
 気持ちよくしてもらってるのに、いい子だなんて……。すぐそばにいた珠希が、僕を覗き込むような体制で体を起こした。
 その時初めて気づいた、自分がどんなに恥ずかしい格好してるのか、って。
「や、珠希、はずかし」
「大丈夫。恥ずかしくないよ」
「ぼ、くははずかしい…んっ」
 足を閉じようとしたけど、珠希の体が間に入っていて無理だし、珠希は微笑みながら足を押さえている。
 僕は全身にカッと血が上るのを感じた。
 だって、絶対見えてる。自分でも見たことないのに、珠希に見られてる。
「いい子だから、僕にまかせて」
 それでも、次のステップに進んでいいって言ったのは僕だし、そんなに優しい顔で言われたら、大丈夫なのかなって思ってしまう。
 ううん、やっぱりそれでも恥ずかしいよ。
 そんなことを考えている間にも珠希の手は休むことなく上下していて、僕はまたすぐに果ててしまいそうだった。
 霞む頭でなんとか考えられたのは、そこまでだった。珠希が昂りから手を離してほっとしたのもつかの間。
「ひゃ、ぁん、んっ」
 珠希が僕の昂りから滴り落ちた雫を、窄まりに塗り付けた。それだけで体がぞわっとして、今まで味わったことのないような感覚がこみ上げた。珠希はその入り口を、ほぐすように指先で触っている。
「あっ、ん、あ、」
 それだけで、僕はまた味わったことのない変な感覚に包まれる。
 うっすらと目を開いて僕の脚の間に座っている珠希を見てみた。
 珠希は、僕の脚の間を……見てる。
「た、まきあんま見ないで、やだ、」
「どうして?」
 僕だけがはあはあと息を荒げているのに、珠希がいつも通りののんびりとした口調だから、よけいに恥ずかしくなってしまう。
 その間にも、珠希の指が少しずつ僕の中に入ってくるのを感じていた。それは僕の中をほぐすようにゆっくりと動きながら侵入してくる。
「んっ、ああん、変、なかんじ」
「もうちょっとだから、我慢して」
「ん、んん」



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