ただきみ想う【白樫学園記番外編1】(了)

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2.素直が一番

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『順平。素直が一番だよ。思ってること、ちゃんと言わないと伝わらないし、伝え方を間違ってもだめなんだ。だから、なるべく心で思ってることに忠実に、本音で言わなきゃいけないいんだよ? じゃないと、自分でもなにしたいのか分からなくなっちゃうから』
 希に言われた言葉が頭をぐるぐる回って。
 俺はミノを抱いている腕に少し力を込めた。
 好きだ。
 ミノ。
 俺はミノのそばにいたいばっかりに、嫌われないようにしてきただけじゃないのか?
 気持ち、ちゃんと伝えたことない。それでいつか振り向いてもらおうだなんて。
 やっぱ間違ってた。タイミングを見計らってるつもりで、ずっと逃げてた。
「ジュンにこういうふうにしてもらうのって、僕すき」
「ああ」
 タイミングは、今だ。口の中が乾いて、舌が上顎に張り付くような感じがする。
「なんか、ジュンが一番楽。いっそのこと、ジュンのこと好きになれたらなーって。まあ、お互い絶対無理だよねえ」
 そう言ってミノは俺から体を起こすと、笑いながら見上げた。
 その言葉を今までも、何度も聞いた。でも、知ってるか? すげえ殺傷能力あるんだ。
「俺はぜんぜんかまわねえけど」
「ははっ、よく言うよ。もうジュンってば」
 俺の投げやりな言い方にかまいもせず、笑った。ちょうどミノの携帯がテーブルで震えて。
 ミノは俺の腕を解くと飛びつくそうにそれを取って、自分の部屋に入って行った。
 まただ。
 ほんとは、今すぐ叫びたいくらいつらいんだ。ミノは知らないんだろうけど。
 だから、今までもこういう時、作り笑いでしのいで来た。
 でも、もうそれはやめるんだ。
「ミノ」
 俺はもう勢いでミノの部屋のドアをノックして開いた。
「ジュンッヒロがねっ、謝ってくれたよっ、全部自分が悪かったって。ちょっとこれから会ってくるっ。ほんといろいろありがとね、ジュンッ」
 そう言ってミノは俺に飛びつくと、ぎゅっとしがみつくようにしてから、パッと離れて部屋を出て行った。
「無理だ……マジでもうムリ」
 俺はひとり部屋で、そう呟いていた。

 ブーン ブーン
 携帯のバイブ音で目が覚めた。
 自分の部屋でふて寝することに決めてベッドに倒れ込んだ後、ほんとにずいぶん眠っちまったらしい。
 着信は、シュウからだった。



「はい」
『あ、順平? 寝てた? 今夜メシ食堂で食うだろ? ってかいつ発つんだ? 島には』
「ああ…さあ、どうだろ。島、行くのか? 俺」
『いや俺に聞くなよ。行くんだろ? どした。元気ないじゃん』
「ああ……食欲ない」
『今部屋?』
「ああ」
 俺がくぐもった声で返事を返すと、シュウは電話を切った。

 数分後、チャイムが鳴ってドアを開くと、へらへら笑ったシュウがビニール袋を下げて立っていた。
「なんだ」
「なんだじゃないよ。あんな死にそうな声出すからさ、来てやったんだよ、ありがたく思え」
「頼んでない」
 ほんとは、シュウの気持ちが身に染みてありがたかった。けど、俺らのリストにおいおい泣いてすがりつくようなものはない。
 今までも、何度か同じクラスになったことはあったけど、今みたいにつるんでるのは初めてのことだ。
 希がいなかったから、もしかしたら今年もこんなふうに一緒にはいなかったのかもしれない。
「中華テイクアウトしてきたよん。ほら見て、なんか海外のドラマみたいじゃない? 紙パックに入ってんの」
 そう言いながら、シュウはテーブルの上に白い紙パッケージをいくつも出した。
 食欲ないとか言ったけど、俺の体内はとっても正常に働いていて、腹がぐうぐう鳴った。
「ほら、食え」
 シュウはぷっと吹き出すと、俺に箸を押し付けて来た。
「ありがと」
 俺はぶっきらぼうにそう言うと、素直に春巻きにパクついた。
「なんかおまえって、アンバランスだよな」
 その俺に、なんとも失礼な言葉をシュウは投げ付けてきやがる。
「はあ? 喧嘩打ってんの?」
「違うよ。ほらそうやって口悪いし、見た目いかついくせにさ、かなりピュアだし一途だし? 実は繊細だしさー。なんか、ときどき希に匹敵するくらいかわいいぞ。おまえ」
 はあ。
 誉められてんだかけなされてんだか。分かんねえけど、どっちにしても出て来たのはため息だった。
「なんだよ、人がかわいいって褒めてやってんのに、そのため息は」
「うれしくねえんだよ…かわいいとか言われたって」
「そうだよな。おまえはいつでも実のナイトだったもんな。かわいいじゃなくって、かっこいいって言われなきゃ意味ないよな」
 シュウは、分かったようなことを言う。
 なんか、腹立つ。
 なにか言ってやろうと口を開いた時、ドアが開いた。
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